イチロー大記録 重圧はね返し後に続こう

毎日新聞 2009年09月10日

イチロー選手 挑戦に終わりはない

シアトル・マリナーズのイチロー(鈴木一朗)選手が大リーグ通算2000安打を達成した。大台到達まで9シーズンは史上最速で、出場1402試合は史上2番目のスピード記録だ。イチロー選手は9年連続200安打以上の大リーグ新記録にもあと5本と迫っており、こちらは近日中に達成してくれるだろう。

8年前の4月2日。本拠地セーフコ・フィールドでのアスレチックスとの開幕戦第4打席、中前に記念すべき大リーグ初安打を放った。以来9シーズン。新人王とMVPのダブル受賞、シーズン262安打の大リーグ記録更新など数々の偉大な業績を打ち立ててきた。イチロー選手の攻・走・守にわたる活躍に、日本中が元気と勇気をもらい、幸せな気分に浸ることができた。

ただ今回は、これまでの右肩上がりのイチロー選手の快挙と違い、一抹の不安を感じさせながらの記録達成でもあった。

春先から暗雲の予兆はあった。日本が連覇を達成した3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、イチロー選手は不振に苦しんだ。最後の最後に決勝打を放ち、「イチローらしさ」を示したものの、出血性胃かいようのため大リーグの開幕から8試合を棒に振った。WBCで背負った重圧の大きさを思い知らされる事態だった。

戦列復帰後は自己ベストの27試合連続安打をマークするなど、開幕での出遅れを取り戻し、いつものイチロー選手に戻ったように見えた。だが、2000安打とシーズン200安打の達成にめどが立った8月下旬、再び暗雲が襲う。左ふくらはぎの治療のため8試合を欠場した。

イチロー選手は10月で36歳になる。体のケアには人一倍気を使い、体調維持に努めてきたイチロー選手だが、やはり「年齢の壁」が立ちはだかってきたのだろうか。これまで病気や故障で長期離脱することがなかったイチロー選手だけに、ファンの目には不安に映る。

オリックスに在籍していた1994年、登録名を「鈴木」から「イチロー」に改め、シーズン210安打の日本プロ野球記録を樹立した。当時のイチロー選手の季節が「春」だとすれば、現在は「実りの秋」を迎えたころだろう。収穫に感謝する一方で、冬の訪れが近いことをだれもが予感してしまう季節でもある。

だが、これまでもわれわれの予想をはるかに超えた次元で不可能を可能にしてきたイチロー選手だ。過去の名選手が苦戦した年齢から来る衰えに対しても、円熟した技で克服してほしい。イチロー選手が真価を発揮するのは、前人未到の未知の領域に突入してからだと信じたい。

産経新聞 2009年09月09日

イチロー大記録 重圧はね返し後に続こう

米大リーグ、マリナーズのイチロー選手(35)が日本選手では初めて大リーグ通算2千安打を達成し、さらに9年連続200安打という前人未到の大リーグ新記録まであと一歩に迫った。

2千安打は大リーグでは259人目となる記録だが、デビュー後9年での到達という史上最速ぶりが光る。現役ではヤンキースのデレク・ジーター選手の12年がこれまでの記録だった。イチロー選手の驚異的なスピード達成は不断の努力の結実である。ファンとともに、心から祝福したい。

イチロー選手が目前にとらえた連続シーズンの200安打記録は、ウィリー・キーラーが1894年から1901年にかけて成し遂げた8年連続を1世紀ぶりにしのぐ快挙だ。野球の本場での金字塔となろう。

今シーズンのイチロー選手は3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)後に胃潰瘍(かいよう)にかかって開幕から8試合、8月下旬からは左ふくらはぎの故障で8試合欠場していた。逆境をはね返しての活躍が、昨年の金融ショック以来沈みがちだった日本列島に元気を与えている。功績大だ。

米国のファンをひきつけるイチロー選手の魅力は、84年ぶりの大リーグ記録更新となった年間最多安打262本(04年)など数々の記録が物語る通り、その抜群の運動能力と野球センスに裏打ちされた打法、走力、そして華麗な守備力である。

とくに「特技」といえる内野安打は「狙って打っている」といい、全安打の2割以上を占める。詰まった当たりの内野安打をこれほどおもしろくした選手はいない。「レーザービーム」の呼び名がついた強肩、正確無比の返球やフェンス際の魔術的捕球も「イチロー」の名を定着させた。

日本人の特質を生かした繊細な野球技術を大リーグに持ち込んだ。日米野球の壁を取り払う役割を果たしているともいえよう。

2千安打を達成した試合後の記者会見で、イチロー選手は重圧を感じなかったかという質問に「そういう自分は過去のものと思っている」と答えた。

野球だけでなく、ゴルフ、サッカーなど多くの競技で、生活拠点を移して米国など世界の舞台で活躍する日本選手が多くなった。イチロー選手のように従来の殻を破る「スポーツ日本人」が増えることを期待したい。

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