政倫審出席へ 小沢氏はきちんと真実を語れ

毎日新聞 2010年05月14日

終盤国会 「政倫審で幕」とはいかぬ

行き詰まっていた国会が、にわかにざわめき出した。民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体の政治資金規正法違反事件をめぐり、小沢氏は衆院政治倫理審査会で説明する方針を固めた。

「政治とカネ」の問題の解明を拒み続け、国会の停滞を招いた責任は与党にある。野党の反対を押し切り国家公務員法改正案の衆院通過に踏み切ったが、政倫審を「みそぎ」の場としつつ、他の案件の審議日程を強引に進めようという狙いであれば身勝手に過ぎる。開かれた形での疑惑解明が筋である。

国会の会期は6月16日までで、閉幕後に参院選が控える。にもかかわらず野党側が求める「政治とカネ」や沖縄基地問題をテーマとする集中審議に与党は応じず、国家戦略局を法制化する政治主導確立法案など、重要案件の処理が滞っていた。

そんな中、これまで東京地検特捜部の2月の不起訴処分を理由に国会で説明は不要としていた小沢氏がやっと、政倫審への出席に応じる意向を伝えたという。小沢氏をめぐっては検察審査会が「起訴相当」と議決し、特捜部が再聴取を要請するなど、改めて説明責任が問われている。参院選や国会運営の影響を考えた判断だろう。遅きに失したとはいえ国会での説明は当然だ。

しかし、解明の場が政倫審、というのは不十分だ。証人喚問と異なり発言が偽証罪にも問われず非公開が原則の政倫審は、これまでも疑惑封じの「駆け込み寺」として活用されてきた。証人喚問が筋であり、政倫審とするなら最低限、公開の場とすべきだ。鳩山由紀夫首相の政治資金問題も含めた予算委集中審議など、重層的な解明が欠かせない。

気がかりなのは小沢氏の出席方針と歩調を合わせたように、与党が国会で強硬姿勢を強めた点だ。中央省庁の幹部人事を一元管理し、内閣人事局を設置する国家公務員法改正案が衆院を通過した。この問題では自民党と、みんなの党が人事局の機能を政府案以上に強め、幹部人事もより弾力化する対案を示している。法案修正の余地がないか、真剣に検討すべき課題だろう。国会日程が窮屈だからといって、数を頼みに押し通すようでは、国民の目にはおごりとしか映るまい。

強硬路線を取り始めた与党に野党は対決姿勢を強めている。だが、自民党も今国会でいったん審議拒否戦術に踏み切り、不発に終わったような失敗を繰り返してはならない。

内閣不信任決議案の提出問題もあるが、駆け引きばかり目立つようでは失格だ。財政再建など、参院選を意識した論戦の土俵作りに努めるべきである。

読売新聞 2010年05月16日

小沢氏再聴取 検察は改めて真相解明めざせ

民主党の小沢幹事長が15日、東京地検特捜部の事情聴取を受けた。先の検察審査会の「起訴相当」議決を受けた再捜査の一環である。

この日の聴取で特捜部は、改めて政治資金収支報告書虚偽記入への、小沢氏本人の関与の認識などを(ただ)したようだ。小沢氏はこれまで同様、否定したとみられる。

小沢氏に対する特捜部の聴取はこれが3度目だ。1月に最初の聴取要請を受けた際には、多忙などを理由に半月以上も応じなかったのに比べると、驚くほどの対応の早さである。

3日前には、衆院政治倫理審査会に出席して事実関係を説明する意向を表明している。

小沢氏は2月に不起訴(嫌疑不十分)となって以降、「不正をしていないことが明らかになった」として国会での説明は不要との立場を繰り返してきた。

事情聴取と国会の両方で自身の潔白を主張することで、「説明責任を果たせ」との批判をかわす好機ととらえたのかもしれない。

検察が早晩、再び「不起訴」の結論を出す。政倫審で説明をし、「これで責任は果たした」と主張する。そうすれば、検察審の2度目の議決も「起訴すべき」には至るまい――。そんな小沢氏の“幕引き戦術”が透けて見える。

検察当局には、今回の聴取の重要性を強く認識してもらいたい。「起訴相当」議決の際にも検察内部には「新たな証拠が得られない限り、不起訴の結論は変わらないだろう」という声があった。

すでに結論ありきの形式的聴取に終わらせるなら、それは検察の事実解明責任の放棄であろう。一般市民の意を()む検察審の軽視にもつながる。

小沢氏には、依然として重い政治責任がある。

今回の事件では、小沢氏の元秘書ら3人が刑事訴追されている。事件の舞台となったのは、ほかならぬ小沢氏の資金管理団体「陸山会」だ。秘書に対する監督責任をどう受け止めているのか。

「秘書の犯罪は議員の責任」とは、鳩山首相がかつて自民党の政治家を指弾する時に口にした言葉だ。世間の感覚も同じだろう。

秘書だけに責任を負わせる「トカゲのシッポ切り」の対応が、国民の政治不信を増幅させたことは否定できない。各種世論調査でも、小沢氏は幹事長を辞任すべきだとの声が圧倒的に多い。

再度「不起訴」なら検察審の第2幕が開く。小沢氏の追及は終わらない。

産経新聞 2010年05月16日

小沢氏3度目聴取 厳正な刑事処分を求める

民主党の小沢一郎幹事長が、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部から3回目の事情聴取を受けた。

小沢氏は聴取後のコメントで丁寧に説明したと述べたものの、巨額の虚偽記載への関与などについては改めて否定したようだ。だが、それでは「起訴相当」を議決し、小沢氏のこれまでの供述を「不合理、不自然」と指摘した検察審査会の不信を解くことにはならない。

政権与党の幹事長として再三、聴取を受けている政治的かつ道義的責任を真摯(しんし)に受け止める姿勢がうかがえないのも残念だ。小沢氏は衆院政治倫理審査会に出席する意向を示しているが、同じような説明で潔白を主張しても、国民の理解は得られまい。

特捜部は、前回までと同様の聴取で再捜査を形式的なものに終わらせてはならない。規正法違反の罪で起訴された元秘書、石川知裕衆院議員らの再聴取など捜査を尽くし、小沢氏の刑事責任の有無を厳正に判断すべきだ。

検察審査会は、元秘書らが収支報告書の提出前に小沢氏の了承を得たと供述している点を重視し、議決の中で「元秘書らとの共犯関係の成立が強く推認される」と小沢氏の刑事責任を指摘した。

一方、小沢氏は「秘書を信頼し、任せていたので虚偽記載は知らなかった」との主張を崩していないが、信をおけるだろうか。秘書の独断というにはあまりにも無理があるからだ。

土地購入資金の出所を隠すための銀行融資など複雑な資金操作が行われた。虚偽記載額は収支報告書3年分にまたがり、20億円を超える。秘書任せにすること自体、政治資金の透明性を強調してきた小沢氏の言動と矛盾する。

さらに事件の核心は「水谷建設」などゼネコンからの裏献金が購入資金の一部に含まれていた疑惑の解明だ。「不正なカネは一切受け取っていない」とする小沢氏の主張を調べ上げるべきだ。

聴取に基づき、特捜部は今月中にも起訴か不起訴かの刑事処分を決めるとみられる。再び不起訴でも審査会が2回目の「起訴議決」をすれば強制起訴される。

だが、国民の多くの見方は「潔白」ではなく、「起訴相当」議決もそれをにじませている。特捜部の判断が検察審査会制度の意味合いを決めることになる。

読売新聞 2010年05月14日

政倫審出席へ 小沢氏はきちんと真実を語れ

検察当局の不起訴処分を根拠に国会での説明は不要とする主張は、もう通用しないと判断し、方針転換したのだろう。

民主党の小沢幹事長が自らの資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件に関して、衆院政治倫理審査会に出席し、事実関係を説明する意向を表明した。

小沢氏は本来、もっと早く、自発的に国会で説明すべきだった。内閣や民主党の支持率の低下を受け、夏の参院選への影響などを考慮し、やむを得ず政倫審に出席することにしたようだ。

小沢氏は事件にどこまで関与していたのか。政倫審で、きちんと真実を語ってもらいたい。

この事件では、東京地検が2月に石川知裕衆院議員ら小沢氏の元秘書3人を起訴した。2004年10月の東京都世田谷区の土地購入を同年分の政治資金収支報告書に記載せず、05年分報告書に虚偽記載したなどと認定したものだ。

小沢氏は「嫌疑不十分」として不起訴になった。だが、検察審査会は4月下旬、石川議員らとの間に共謀が成立するとして、「起訴相当」と議決した。

東京地検は再捜査を開始し、小沢氏に3度目の事情聴取を要請した。小沢氏は応じる意向だ。地検は、検察審査会の議決を重く受け止め、捜査を尽くすべきだ。

石川議員の供述によると、石川議員は、小沢氏が土地購入に用意した簿外資金4億円を表に出すと「騒がれる恐れがある」と判断し、土地の所有権移転登記の時期をずらし、銀行融資を受けるよう小沢氏に報告、了承されたという。

銀行融資の利子を負担してまで隠蔽(いんぺい)工作をするのは、尋常ではない。検察審査会の指摘通り、小沢氏と石川議員の関係を考えれば、工作が石川議員個人の判断ではなく、小沢氏が十分承知していたと考えるのが自然だろう。

小沢氏は、この事件の核心を明確に説明する責任がある。

この土地購入では、資金の一部がゼネコンから提供されたのではないかという疑惑がある。

小沢氏の資金が一時、家族名義となっていた際、適切な手続きをとっていたのか。小沢氏個人と陸山会の資金が混然となっていたのではないか。小沢氏は、これらの疑問にも答える必要がある。

1985年の政倫審の創設には小沢氏が衆院議院運営委員長として関与した経緯がある。政倫審を、単に国会で説明したという実績作りの場とせず、中身のあるものにするよう努めてほしい。

産経新聞 2010年05月15日

小沢幹事長 なぜ証人喚問に応じない

自らの資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、国会招致を拒み続けてきた民主党の小沢一郎幹事長が、一転して衆院政治倫理審査会(政倫審)に出席する意向を表明した。

検察審査会が「起訴相当」を議決し、東京地検特捜部が改めて小沢氏の事情聴取を要請するなど事態が進展したために、説明責任を果たす姿勢を示し、改めて潔白を主張するねらいだろう。

だが、特捜部の不起訴処分を根拠に疑惑や違法性がないと改めて主張するのは通用しない。20億円を超える虚偽記載は「元秘書らの判断で自分は関知していない」などの説明には多くの疑問が残る。国民が求めるのはそれらの疑問に答えることにほかならない。

非公開が原則で、偽証罪に問われることもない政倫審での弁明は強制力に欠け、不十分である。過去をみても政治家のみそぎの場に使われてきた例が多い。真相解明には証人喚問が不可欠だ。政倫審による幕引きは許されない。

政倫審への出席について、小沢氏は「選挙民、国民にしっかりと話をすることで理解と支持を獲得できる」と語った。

党幹部に対して「いつでも(政倫審に)出る」と伝え、「政倫審はおれがつくった」とも語っているという。確かに、政倫審は小沢氏が衆院議院運営委員長だった昭和60年に両院に設置された。だが、同時に作られた政治倫理綱領は「疑惑をもたれた場合にはみずから真摯(しんし)な態度をもって疑惑を解明」することを定めている。

元秘書の石川知裕衆院議員らの逮捕以来、小沢氏は説明責任を果たさないまま幹事長にとどまり、開き直りと批判されてきた。そうした姿勢が、自ら作ったルールをいかにむなしいものにしてきたかを小沢氏は考えてほしい。

「政治とカネ」をめぐる国民の厳しい批判に対し、小沢氏と鳩山由紀夫首相の不誠実な対応が政権や民主党への信頼を損なってきたのは明白だ。参院選を控え、小沢氏としても政倫審出席に方針転換せざるを得なかったのだろう。

政府・与党内には小沢氏の対応を歓迎する声が出ているが、疑惑の徹底解明よりも世論の逆風をかわすことしか考えていないのでは情けない。

政倫審を公開する議論も必要だが、まずは疑惑解明が最優先だ。自民党など野党は証人喚問実現を引き続き要求すべきである。

産経新聞 2010年05月13日

小沢氏再聴取へ 今度こそ疑惑解明求める

民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部が小沢氏に再聴取を要請した。

東京第5検察審査会が4月27日、「起訴相当」とした議決から約2週間を経た時期での聴取要請は、特捜部が審査会の全員一致の議決を重く受け止めた表れだろう。検察当局は今度こそ疑惑の全容を解明し、政治不信をぬぐってもらいたい。

小沢氏は特捜部の不起訴処分を受けて「潔白が証明された」と主張している。再聴取の要請に応じるのは当たり前だ。問題は政権与党の幹事長が3度目の聴取を受けるという異常事態にある。

これまでの特捜部の捜査では、20億円を超える虚偽記載については立件しながら小沢氏の関与が証明できなかった。陸山会の会計実務を担当していた元秘書の衆院議員、石川知裕被告と元公設第1秘書の大久保隆規被告を起訴したものの、小沢氏は嫌疑不十分で不起訴となった。

これに対し、検察審査会は土地購入をめぐる資金操作など客観的な証拠もふまえ、「元秘書らとの共犯関係の成立が強く推認される」としたほか、「絶対権力者である小沢氏に無断で資金の流れの隠蔽(いんぺい)工作などをする必要も理由もない」と指摘した。誰もが持つ率直な疑問だろう。

過去2回の聴取での小沢氏の供述も、審査会から「不合理、不自然で信用できない」と指弾された。厳しい指摘は、多くの国民が抱く小沢氏の政治資金への不信感に共通するものだ。

陸山会をめぐる事件は、土地購入原資にゼネコンからの裏金が使われたとされる疑惑など未解明な点が多い。特捜部は再捜査で、こうした疑問を払拭(ふっしょく)してもらいたい。小沢氏が従来の説明を繰り返すことは、もう通らない。

政治資金規正法違反は政治家のカネの透明性を損ない、国民を欺く重大な犯罪だ。だが、小沢氏を「起訴相当」とした検察審査会の議決をめぐり、民主党を中心とした議員連盟が審査会制度の見直しを求める動きすらある。国民を無視するような行動は、政治不信を増大させるばかりだ。

「政治とカネ」の問題をめぐる集中審議を、民主党は拒否している。小沢氏は衆院政治倫理審査会に出席する意向のようだ。それより偽証罪が問われる証人喚問で国会の自浄作用を示すべきだ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/338/