W杯日本代表 「4強」へ果敢に挑戦を

毎日新聞 2010年05月11日

W杯日本代表 「4強」へ果敢に挑戦を

来月11日、南アフリカで開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)の日本代表23選手が岡田武史監督から発表された。98年フランス大会の三浦知良選手や02年日韓大会の中村俊輔選手の落選のような衝撃的な驚きはなく、アジア予選突破に貢献した主力選手が顔をそろえ、ほぼ順当な選考だったといえるのだろう。

「日本が勝つため、いろんな状況を想定して必要な23人を選んだ」と岡田監督。12日に追加発表される7選手を含め、ベストな体調で本番を迎えてもらいたい。

南ア大会1次リーグE組の日本はカメルーン、オランダ、デンマークと対戦する。いずれも国際サッカー連盟のランキングは日本より上位の強豪で、引き分けの勝ち点1を奪うことすら容易ではない。岡田監督は07年12月の監督就任時から「世界4強」を目標に掲げている。選手たちにはぜひ、監督の「公約実現」に全力を傾けてほしいものだ。

12年前のフランス大会で悲願のW杯初出場を果たして以来、日本は今回で4大会連続出場となる。日韓大会で2勝を挙げ、決勝トーナメント進出を果たしたものの、海外で行われた2度のW杯では5敗1分けと、まだ1勝もしていない。

ジーコ監督が指揮を執った4年前のドイツ大会後、代表監督に就任したイビチャ・オシム氏は「日本サッカーの日本化」を掲げ、日本サッカーの再建に乗りだした。外国人選手より体格で劣った分を、持ち前の敏しょう性と「走りながら考える」オシム流サッカーで補うというのがオシム氏の言う「日本化」だった。

そのオシム氏は07年11月に病に倒れ、任期途中で退任した。日本サッカーをどう変えてくれるのか、W杯で結果をみることができなかったのは残念だが、フランス大会を経験している岡田監督が後を受け継いだ。

前回も加茂周監督の解任に伴う緊急登板だったが、監督経験ゼロで引き受けた当時と違い、今回は札幌のJ1昇格、横浜F・マリノスのJ1連覇など、監督として十分な実績を積み上げたうえでの代表監督就任だ。選手発表の会見で岡田監督が「日本人らしいサッカー」でベストを尽くすと語ったのはオシム氏の精神を受け継いでのことだろう。日本のW杯初出場から12年間の成長のあともぜひとも見せてもらいたい。

思えば日本がW杯に出場する前と後では、国民のサッカーへの関心は格段に変化した。W杯出場だけで満足してもらえる段階はとうに卒業した。「世界4強」がいかに困難な目標であるかもファンは十分に理解している。それでもなお、困難な目標に全力で挑む日本代表イレブンの雄姿を熱い心で見守りたい。

産経新聞 2010年05月12日

W杯日本代表 組織力でベスト4めざせ

開幕まであと1カ月に迫ったサッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に出場登録する23人の日本代表選手が決まった。

日本はW杯には4大会連続の出場だ。日韓共同開催の2002年大会では2勝1分けで決勝トーナメント(ベスト16)に進む健闘を見せたが、前回06年ドイツ大会では1勝もできなかった。今回は岡田武史監督が掲げる「ベスト4」を目指し、存分に戦ってほしい。

代表メンバーには中村俊輔、岡崎慎司、本田圭佑の3選手ら国内外で活躍する主力が含まれている。順当な選考だが、3人のGK(ゴールキーパー)の中に34歳と最年長の川口能活選手を入れた点に注目したい。

川口選手は昨年1月以来、代表メンバーには選ばれず、昨年9月に右脛骨(けいこつ)を骨折してからは公式戦にすら出場していない。にもかかわらず岡田監督が選んだ理由は、4大会連続となる川口選手のW杯経験と「選手から一目置かれる」リーダーシップだという。

個々の体格や身体能力で恵まれているとはいえない日本代表チームの活路は、外国チームに負けない運動量とすばやい切り替えの動き、そして何より組織としてのまとまりだ。チームの精神的支柱の役割を重視した決断が、得点能力を欠きがちな日本代表チームを鼓舞すると期待したい。

中世イングランドで行われた村落対抗のボール蹴(け)り合戦がルーツともいわれるサッカーは世界各地に伝わり、固有の競技文化を形成した。それゆえW杯には各国(地域)の健全なナショナリズムがぶつかりあう力比べともいえる醍醐味(だいごみ)がある。

国際サッカー連盟(FIFA)の最新世界ランキングによれば、1位ブラジルからスペイン、ポルトガルと続き、米国はといえば14位、中国は85位だ。オリンピックと違って、経済・軍事大国は必ずしもサッカー大国ではない。

現在45位の日本が1次リーグで対戦する相手はカメルーン(19位)、オランダ(4位)、デンマーク(35位)で、ベスト4は容易ではない。だが、番狂わせがしばしば起きるのもW杯である。

金融危機以来の景気停滞が続く日本の国民にとって、W杯における日の丸勢の活躍は何より元気を与えてくれる。2022年大会を照準にしたW杯日本誘致にもつながれば、なおさらだ。

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