世界の安全保障を脅かす核拡散をいかにして阻止していくのか。
3日から28日までニューヨークで開かれる核拡散防止条約(NPT)の運用状況を検討する会議は、その具体策を講じる重要な機会だ。
NPTは、核兵器の拡散防止を図る国際的な取り決めである。
核兵器保有国を、1967年以前に核実験をした米露英仏中の5か国に限定し、全加盟国に不拡散を義務づけることで新たな核兵器国の出現を抑止するのが目的だ。日本など約190か国が加盟し、発効から40年を迎えた。
だが、このNPT体制は大きく揺らいでいる。
北朝鮮はNPTからの脱退を宣言し、核実験を2度も強行した。「原子力の平和利用」を隠れみのにした核兵器開発、という危険な先例を作った。
イランも国際原子力機関(IAEA)の査察をかいくぐり、ウラン濃縮を行う違反を犯した。国連安全保障理事会の再三の決議を無視して濃縮活動を続け、北朝鮮と同じ道をたどろうとしている。
世界の闇市場で核関連物質が取引され、核爆弾の製造技術が広まった。ならず者国家やテロ組織の核武装の危険は高まっている。
世界の安全にとって、グローバルな不拡散体制の要であるNPTの立て直しが不可欠だ。今回の会議で各国は、実質的なNPT強化策で合意を目指すべきである。
それには、核兵器国と非核国が協力する必要がある。核兵器国は核軍縮の義務履行を加速化すべきだ。非核国はIAEAの査察を通じて核開発していないことを立証しなければならない。
双方が真摯に取り組んでこそ不拡散の国際連携は強化できるが、現状は楽観できない。
最大の攪乱要因はイランだ。大統領自らが会議に出席し、全会一致が原則の「最終合意文書」の採択を阻む構えだ。
日本や欧米諸国は、NPT脱退通告の乱用防止策や、IAEAの査察権限を強化する追加議定書の普遍化を求める方針だ。だが、それを先進国による介入とみて警戒する途上国は少なくない。
中東諸国には、欧米諸国はイラン問題を重視しても、NPT未加盟のイスラエルの核問題に向き合わない、との強い不満がある。
各国の相互不信が募れば不拡散のタガは緩む。決裂に終わった前回会議の再現となっては、北朝鮮やイランのような違反国家の跋扈を招くだけだ。不拡散強化へ大きな流れを作り出す必要がある。
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