殺人など、罰則に死刑の適用もある凶悪犯罪の公訴時効を廃止する改正刑事訴訟法が4月27日成立、即日施行された。
審議入りから1か月足らずでの成立であり、成立即施行というのも異例である。直後に時効を迎える事件があったことを考慮した、妥当な対応だった。
刑訴法は2004年にも改正され、殺人などの時効が15年から25年に延長された。今度は事件から何年が経過しようと犯罪者を逮捕し、処罰できる。犯した罪は一生消えるものではないとする、刑事司法制度の大転換だ。
しかも、前回は施行前の事件は従来のまま15年とされたが、今回は、時効成立前の過去の事件にも適用される。憲法違反との指摘もあったが、逃亡中の犯人を利する必要などまったくない。
「処罰感情は薄れない」と、時効制度の理不尽さを訴えてきた犯罪被害者の遺族らの心情を考えても、当然の判断だった。
改正を促した背景として、人々の、治安への関心と厳正処罰を望む意識の高まり、という時代状況の変化も見逃せない。
時効が迫っていた事件に、東京都八王子市のスーパーで、アルバイト店員の女子高校生2人とパートの女性従業員の計3人が拳銃で射殺された事件がある。
この7月30日で発生から15年となる。至近距離から頭部を撃ち抜く残忍な手口だったが、捜査は行き詰まったままだ。
警察には、こうした難事件の解決に一歩でも近づく捜査を期待したい。時効廃止を機に、国民の側も、情報提供などで捜査に積極的に協力していきたいものだ。
時効廃止には、時の経過とともに冤罪の危険性が高まるという反論があった。確かに記憶が薄れ、目撃者の供述などが、あいまいなものになってくる恐れはある。
捜査本部を設置する重大な事件は、年間平均で約130件起きている。解決率は8割強だが、その9割以上は3年以内に解決しているというデータもある。
冤罪の防止や早期解決を目指すうえで、いっそう重みを増すのが警察の初動捜査だ。
警察庁が先月、証拠の収集の徹底など、初動捜査を強化するよう全国の警察本部に通達を出したのも、こうした認識からだ。今後はますます、容疑者などのDNA型データベースの拡充、防犯カメラの整備も必要になるだろう。
時効廃止の精神を生かすためには、一つ一つの事件を確実に解決していくことこそ大切である。
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