日銀が成長戦略 何をしようというのか

毎日新聞 2010年05月01日

日銀が成長戦略 何をしようというのか

トンネルの先にやっと光が見えてきたようだ。日銀が景気と物価の先行きを予想する「展望リポート」の中で、2年以内に物価が上昇に転じそうだと見通したのである。

景気についても、回復傾向が強まるとの見方だ。エコポイントのような政策の後押しなしでも、雇用・賃金の改善を通して、消費が回復していきそうだと見ている。

ところが日銀は、そうした明るい展望とは裏腹に、新たな企業支援策の導入を検討するのだそうだ。

具体的な中身はこれから詰めるというが、「技術革新を促進するような研究開発、科学技術振興、環境エネルギー事業など」(白川方明総裁)への支援を想定しているらしい。日本が人口減少下で経済成長を続けていくには、少ない労働人口でもより多くを稼げるようにしなければいけない。その生産性向上を担える事業にもっと資金が向かうよう、日銀が金融面から手助けするという。

成長戦略作りを急ぐ政府に協力して汗をかくという姿勢表明なのだろうが、なぜそうした機能を中央銀行である日銀が担わねばならないのかよくわからない。

成長が見込めそうな分野の特定は民間に委ね、日銀はあくまで民間金融機関が資金を投入したくなるような状況作りに徹するそうだ。それでも、日銀は支援の対象を選択しなければならない。ノウハウを持たない中央銀行がどうやって効果的に実施するのだろう。

日銀は、物価が近く上昇に転じるというシナリオを狂わせかねない心配事の一つに、企業や消費者が日銀の予想通りに物価上昇を見込んでくれない事態となることを挙げた。経済活動の主役がデフレの長期化を予想し続ければ、賃金は上がらず、結果として本当にデフレが長期化してしまうからである。

だが皮肉なことに、日銀があの手この手の追加支援策を考えれば考えるほど、企業や消費者は、「まだ景気は大丈夫じゃない」と悲観論から抜けきれなくなるだろう。

支援漬けの経済にしてしまったことが、企業の活力を弱め、企業や産業の新陳代謝を遅らせてしまったという反省も必要ではないか。本当に景気の自律回復が見通せるようになったというのなら、新たな支援ではなく、事実上のゼロ金利から脱する準備こそ始めるべきだ。

先進国でゼロ金利や超低金利が長期化すれば、中国など新興国の景気過熱や資産バブルを招き、せっかく順調に回復している世界経済を不安定にしてしまう。

新しい支援策が、金利正常化をさらに遅らせてしまうことになりはしないか心配だ。

読売新聞 2010年05月02日

日銀リポート デフレ脱却には時間がかかる

しつこいデフレはいつ終わるのか。日銀が、経済成長や物価の先行きを示す「展望リポート」で一つの答えを示した。

消費者物価の見通しについて、2010年度はこれまでと同じ「前年度比0・5%下落」としたが、11年度は「0・2%の下落」から、「0・1%の上昇」へと修正した。実現すれば3年ぶりの物価上昇となる。

だが、これをもってデフレの出口が見えてきたと考えるのは早計だろう。政府・日銀は決して楽観せず、デフレ脱却に向けた政策の手を緩めてはならない。

展望リポートは、物価が11年度中に「プラスの領域に入る可能性が展望できる」とした。

国内総生産(GDP)の実質成長率も、10年度が1・8%、11年度も2・0%と、堅調なプラス成長を見込んでいる。

だが、現在の経済・物価の情勢からみて、日銀の見立ては少々、甘くないだろうか。

日本経済は、30兆円も需要が足りず、物価が下がりやすい状態が続いている。デフレに慣れた消費者の財布のひもはすっかり固くなり、小売業界やメーカーの安売り競争は依然として激しい。

3月の消費者物価は、下落率が1・2%と前月と同じだった。物価の回復は、このところ足踏み状態が続いている。

3月は、薄型テレビが36%、エアコンも21%下落して、物価全体を押し下げた。政府の購入支援で販売が好調な省エネ家電でさえ、割安感がないと売れない状況が、デフレのしぶとさを示す。

一方で、ガソリン価格は16%上がり、物価全体の下落率を0・3ポイント圧縮させた。

4月もガソリン価格の上昇は続き、これから電気・ガスなど公共料金の値上げも予定されている。鉄鋼や化学繊維などの原材料も高くなってきた。

国際市況の上昇を背景に、エネルギーや資源関連の品目で価格上昇が広がってきたことも、日銀が物価見通しを上方修正した一因と見られている。

だが、光熱費や原材料が先導する物価高は、景気にマイナスとなる。厳しい販売競争の中で、企業は思うように販売価格を上げられず、利益が薄くなるからだ。

こうした「悪いデフレ脱却」では困る。需要の増加による「良いデフレ脱却」が望ましい。

デフレの克服は道半ばである。日銀は積極的な金融緩和を続け、必要に応じて追加策もためらうべきではない。

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