毎日新聞 2010年05月02日
論調観測 ギリシャ支援 「連帯」で揺れる欧州
財政危機下のギリシャを震源とした金融市場の動揺が収まらない。ユーロ加盟国と国際通貨基金(IMF)が緊急融資を実施する運びとなったが、市場では、「次のギリシャ」を探す動きが始まっている。
ギリシャが過去の債務危機と違うのは、通貨を共有する国家集団の中で起きているという点だ。危機を放置すれば、同じ通貨を使う地域全体に信用不安が伝染する怖さがあるが、不安を止めるために救済しようとすれば自国の納税者が反対する。
今回は、この難問に揺れる欧州の論調を取り上げてみたい。
ギリシャ支援への批判が特に目立つのは、最大の負担(欧州分の3割弱)を迫られるドイツだ。大衆紙「ビルト」は、ギリシャを「何十年も浪費を続け、実態をごまかしユーロに加盟した」と非難。そのギリシャにだまされたうえ多額の支援をさせられるとして、独政府に「おめでとう」と皮肉を放った。
同紙や、中立系「フランクフルター・アルゲマイネ」など複数の主要紙が「ギリシャのユーロ離脱はやむなし」との主張を公然と展開している。
支援に及び腰のドイツ政府に厳しい目を向けたのはフランス各紙だ。「ルモンド」は、「(信用不安の)悪循環を絶つ唯一の方法は欧州の連帯だが、ドイツが足を引っ張る」と非難した。
一方、イタリアの左派系「レプブリカ」はギリシャ問題を「トロイの木馬」に例えた。欧州がギリシャ救済をためらい、不協和音に明け暮れている間に、救済という木馬に隠れて米国(の影響が大きいIMF)がやってきた、との分析である。
そのIMFだが、救済と引き換えに厳しい歳出削減や増税などの改革を迫ることになる。ギリシャ国民の不満はさらに高まりそうだが、IMFの関与を「脅威ではなく好機ととらえよ」と呼びかけた論説があった。
ギリシャの新聞「カティメリニ」だ。「ギリシャ政府は自ら健全な財政基盤を築かねばならない。野党は人気取り目当てで足を引っ張ってはいけない」。見出しは「ギリシャの政治家が試されている」だった。
市場の目は今のところ欧州にくぎ付けだが、欧州外にいつ転じるか分からない。毎日は「(日本も)待ったなしの姿勢で取り組む必要がある」と政府に迅速な財政再建の計画作成を求めた。米「ロサンゼルス・タイムズ」も「市場ににらまれてからでは手遅れ」と米政府に警告している。政治家が試されているのは、欧州だけではないのだ。【論説委員・福本容子】
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