郵政事業がさらに便利で、経済活性化にも役立つものとなるよう、改革を進めてほしい。
政府は30日、郵政改革法案を閣議決定した。
日本郵政グループは来年10月、現在の5社から、郵便事業を行う親会社の下に、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の2社が入る3社体制に再編成される。
「民営化で郵便配達の人に貯金を頼めなくなった」など、苦情の多いサービスの縦割りも改められる。日本郵政は今回の改革を、利用者本位の体質に生まれ変わる好機としなければならない。
日本郵政の柱となるべき郵便事業は経営環境が厳しい。電子メールの普及で、はがきなど郵便の利用は減り続けており、09年度決算は、赤字が見込まれている。
改革案が、貯金の預入限度額を2000万円に倍増し、融資などの新規業務への参入を認可から届け出に緩和したのも、金融事業の収益力をさらに強化し、郵便事業の全国一律サービスを支える狙いだろう。
金融業界は、ゆうちょ銀などには「暗黙の政府保証」があり、さらなる肥大化や民業圧迫を招きかねないと警戒する。政府が郵政グループに全額出資する現状では、こうした指摘もうなずける。
このため、政府が新規業務を認める際には、政府保有株の売却を始めるか、売却スケジュールを示すなどして「官業脱却」の道筋をつけるべきだ。
民業圧迫を防ぐための郵政改革推進委員会の役割も重要だ。
郵政に集まった資金のうち、貯金の8割、保険の7割が低金利の国債で運用されている実態も変えていく必要があろう。
郵政マネーを、新興国の鉄道建設など、外需獲得を狙う日本企業に対する融資や、地方活性化に役立つ投資に回すアイデアもある。これまで、国債購入に充てられていた巨額資金を、効果的に活用する意義は大きいのではないか。
とはいえ、ゆうちょ銀は融資経験に乏しい。まず、ノウハウの蓄積と人材育成が先決だろう。政府系金融機関などとの共同事業から始めてはどうか。
中小零細企業向けの融資や、住宅ローン、教育ローンなど個人向け業務は、中小金融機関と競合する。協調融資や商品の相互供給など、共存共栄の工夫がほしい。
亀井郵政改革相は、約20万人の非正規雇用の半数を正規雇用にするよう求めているが、人数ありきでは困る。意欲と能力の高い人を厳選すべきである。
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