先進国への仲間入りを目指し、伸張する国力と存在感を世界にアピールしたいのだろう。
上海万博が5月1日に正式に開幕する。中国では初めての国際博覧会だ。
先の北京五輪に続く国家的イベントである。万博史上、最多の189か国・地域と57の国際組織が参加した。孤立化を深める北朝鮮が初参加し、中台融和を象徴する「台湾館」も登場する。
半年間に及ぶ会期中の入場者は、過去最多だった大阪万博(1970年)の実績6400万人を超える7000万人を狙う。
過去30年余りの改革・開放政策の成果を誇る中国の意気込みがうかがえる規模だ。
万博の開催を国際社会から尊敬される「責任大国」への一歩にしてほしい。
テーマは「より良い都市、より良い生活」である。参加国が、独自の文化や歴史を披露する一方で、環境に配慮した都市づくり、住みよい生活に役立つ最先端のエコ技術などを競い合う。
華やかな会場の周辺では、会期中に懸念されるテロを防止するため、多数の警察官らが配置され、厳戒体制が取られている。
胡錦濤指導部は上海万博を通じて、国威発揚を図り、「愛国・愛党」キャンペーンをさらに推進して、政権への求心力を高める思惑があろう。
中国の存在感が強まる中で、欧米諸国では「中国傲慢論」が起きている。こうした批判を少しでも和らげ、中国のイメージアップにつなげたい意図もあるだろう。
ただ、運営面では心配がないわけではない。上海市民を数十万人規模で招待して行われた内覧会では、一部の入場者が列を乱してわれ先に押しかけ、負傷者も出る混乱が生じた。
会期中は、多数の外国人客も訪れる。中国人のマナー向上を図るとともに、入場者の安全を最優先で確保してもらいたい。
開幕直前には、万博PR曲が、日本人歌手の作品と酷似している盗作疑惑が浮上した。
大会公式マスコット「海宝」のニセ物は摘発されたが、違法販売は続いているようだ。著作権など知的財産権を尊重する意識の向上を図る機会とすべきだ。
日本は日本館や日本産業館、大阪館で、最新鋭の環境技術やロボットなどを展示する。万博開催のノウハウでは中国に協力した。
出展する日本企業は先端技術や食文化などを世界にアピールし、新たな商機につなげてほしい。
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