独法仕分け 公務員制度と一体改革を

読売新聞 2010年04月30日

独法見直し 仕分けの効果と限界が見えた

独立行政法人の事業の縮減などでは一定の成果があったが、切り込み不足も目立った。事業仕分けという手法の限界とも言えよう。

104独法のうち、47法人の151事業を対象とする4日間の事業仕分けが終了した。

都市再生機構(UR)の賃貸住宅事業については、高齢者・低所得者向け住宅は自治体や国に移管する一方、高級住宅は民間に売却し、全体の事業規模を縮減するよう求めた。

鉄道建設・運輸施設整備支援機構が抱える約1兆3500億円もの利益剰余金は、国庫に返納すべきだと判定した。

こうした事業の縮減や剰余金の返納は、独法や所管府省に任せていてはなかなか実現しない。外部の第三者の視点で、無駄を省き、見直しを図ることが大切だ。

一方で、廃止と判定されたのは国立大学財務・経営センターによる大学付属病院整備費の融資事業など、一部にとどまった。政府の財政支出を大幅に削減する効果は望めそうにない。

忘れてならないのは、民主党が昨年の衆院選の政権公約で、独法の「全廃を含めた抜本的見直し」を掲げていたことだ。今回の作業の実態から、大きくかけ離れている。いかに政権公約がいいかげんだったかを物語るものだ。

そもそも、予算が数千億円から数百万円の事業まで、規模の大小を問わず、1テーマについて一律で、しかもわずか1時間足らずの議論で、その存廃の結論を出すという手法自体に無理がある。

URや住宅金融支援機構など大型の独法の見直しは本来、その法人だけに十分な時間をかけ、多角的に議論してもおかしくない。

無駄な事業はやめる。民間や自治体に任せられる事業は任せる。その方向性は間違っていない。だが、「政権交代」を錦の御旗に、あらゆる反論に聞く耳を持たず、仕分け人の判定が絶対正しいという姿勢では理解を得られない。

重要なのは、今回の作業を最終結論とするのでなく、今後も、政府の行政刷新会議がきちんと事後点検する仕組みを整え、継続して独法改革に取り組むことだ。

例えば、URの賃貸住宅事業を民間や自治体に移管するのなら、11兆円にも上る債務をどう処理するのかという問題と一体で結論を出すことが必要だろう。

所管府省任せにすれば、官僚が巻き返し、今回の判定結果を骨抜きにする恐れがある。そうした事態は避けるべきだ。

産経新聞 2010年04月30日

独法仕分け 公務員制度と一体改革を

政府の行政刷新会議による独立行政法人(独法)を対象にした「事業仕分け」第2弾の前半日程が終わった。

対象の47法人151事業のうち、36事業を廃止と判定した。鉄道建設・運輸施設整備支援機構の1兆3500億円をはじめ、剰余金の国庫返納も求めた。

この中でファミリー企業との癒着ぶりや、お手盛りの高額な給与実態が明らかになった。配偶者を秘書に起用するといった「なれあい体質」も発覚した。独法は天下り官僚の受け皿となってきたが、所管官庁とのもたれ合いで国民の目が届きにくかった。事業仕分けによって、病巣の一端にメスが入った意義は大きい。

だが、事業の無駄の洗い出しだけでは不十分だ。業務規模を縮小する以上、職員数を含め組織をスリム化させるのは当然である。統廃合などで組織を衣替えしても、天下りが続くのでは同じだ。補助金などカネの流れだけでなく、人事面にも切り込まなければ非効率な運営体質は改善しない。

鳩山由紀夫政権は「天下りの根絶」を掲げながら、いまだに公務員制度改革の全体像を示せない。行政刷新会議は今回の結果を踏まえ、6月にも独法改革案をまとめる考えだが、これではうまくいかないだろう。公務員制度改革と同時に進める必要がある。

はっきりしない仕分けもある。昨年の第1弾では目先の歳出削減効果を優先して中長期の国家戦略を見失ったことが批判を招いた。今回も“場当たり”の印象だ。

例えば厚生労働省からの出向が多い医薬品医療機器総合機構は、独立性に疑問符が付きながら、審査業務などが「規模拡充」となった。第1弾で国民の反発が強かった科学技術分野では、個別の研究内容に踏み込まなかった。

日本万国博覧会記念機構は19年の独法整理合理化計画で廃止が決まっていたものだ。そもそも対象に含める必要があったのか。

これでは「政治ショー」と言われても仕方があるまい。結果をどう改革案に生かすか、対象としなかった独法をどう扱うかなど「整理基準」を明らかにすべきだ。

重複事業などを大胆に見直すのは当然だが、必要な事業がより効果を上げるように組織の在り方を考えることこそ改革の意味であろう。鳩山政権は、独法をどんな組織に再生させるのか。早急に青写真を示さなければならない。

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