世界の景気は持ち直してきたが、ギリシャ危機などの不安材料も抱えながら、どう成長戦略を描いていくか――。
日米欧や中国などが参加し、ワシントンで開かれた世界20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が、共同声明を採択し、閉幕した。
共同声明は、「世界経済の回復は予想以上だ。しかし、回復が確実になるまで必要に応じ、景気下支えを続けるべきだ」と、景気対策継続の重要性を強調した。
まだ安定感を欠く世界経済を考えれば、妥当な判断だろう。
国際通貨基金(IMF)は、今年の世界経済を4・2%成長と予想する。ただし、日欧は1%台と低く、米国が約3%、中国、インドが約9~10%とバラバラだ。
金融危機と世界不況克服のため、各国は、財政出動や超金融緩和などの対策を総動員した。
声明は、それらの政策を元に戻す「出口戦略」の必要性も指摘したが、拙速な政策変更は、景気失速を招きかねまい。
まだ低成長が続く日欧は、特に慎重な舵取りが肝要だ。
G20のさなか、財政危機に陥ったギリシャがついに、欧州連合(EU)とIMFに正式に資金支援を仰いだことが象徴的だ。
EUとIMFが連携し、迅速にギリシャを救済しなければ、世界の市場を混乱させたり、欧州域内のポルトガルなど他国にも波及したりする恐れがある。
険しい道だが、ギリシャはさらなる歳出削減などで、早急に財政を再建することが求められる。
大型の財政出動を続けた結果、日本はギリシャ以上に財政悪化が深刻だ。菅財務相が「他山の石としなければならない。成長と財政再建の二兎を追う戦略が必要だ」と述べたのは当然のことだ。
日本は当面、デフレ克服に向けた景気対策を続けるべきだ。景気回復が確実になれば、財政再建に舵を切ってよかろう。
声明は、中国・人民元の切り上げには言及しなかった。反面、中国に内需拡大を促したのは、世界経済の牽引役としての中国に対する高い期待感の表れだろう。
金融規制強化策として、金融機関が破綻した際にかかるコストを金融界から徴収する案を議論した。しかし、日米欧で思惑が食い違い、結論は先送りされた。
一定の規制強化は必要だが、過度な規制は実体経済に打撃を与えかねない。拙速を避けながら、どう協調を実現するかが、6月のG20首脳会議などの課題である。
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