自民党総裁選 強い指導者選びに全力を

読売新聞 2009年09月09日

自民議員総会 首相指名選挙が苦肉の策とは

自民党は、衆院選大敗後初めて開いた両院議員総会で、16日の首相指名選挙では、若林正俊両院議員総会長名を書くことを満場一致で決めた。

だが、首相指名選挙への対応をめぐり党内に広がっていた混乱をひとまず収拾したに過ぎない。

解党的出直しを言うなら、党が置かれている現状を厳しく見つめ、具体的な再建策の検討を急がねばならない。

執行部は当初、現総裁の麻生首相名の投票で臨む方針だった。しかし、党内から強い反発が出て、「白紙投票で臨む」案が浮上したが、これにも、「国会議員としての責務を放棄する行為だ」と異論が相次いだ。

結局、党大会に代わる最高議決機関である両院議員総会のトップへの投票で落ち着いた。

国会議員は本来、首相指名選挙では所属政党の党首に投票するものである。もってのほかの白紙投票は避けられたが、党首でもない両院議員総会長の名を書くのも、所属議員の結束を優先させた苦肉の策でしかない。

こうした事態に追い込まれたのは、衆院選投開票からすでに10日近くたつのに、麻生首相の後継総裁も決められないまま、迷走したからだ。

総裁選は、18日告示―28日投開票の日程で実施し、一般党員票に基づく地方票を300とすることが決まった。

地方票が国会議員票(200)を上回るのは、総裁選史上、初めてだ。民主党に比べて依然、強固な地方組織を、総裁選を通じて活性化させ、党再建の活力を引き出そうとする狙いだろう。

しかし、すでに自民党の各都道府県連では、選挙惨敗による動揺が広がっている。

国会議員が1人もいなくなった滋賀県では、自民党の県議会会派が分裂した。会派を離脱した若手県議たちは、民主党と協調路線を取る方針を示している。

総会では、当選回数別代表による新体制移行チームを設け、具体的な再建策の検討に着手することになった。しかし、選挙に敗北するたびに実施してきた旧来の手法で、党再生の道を見いだすことができるのか。

読売新聞が選挙直後に実施した世論調査によれば、自民党が再び政権復帰できると答えた人は66%に上っている。

有権者のこうした期待に応えるためにも、自民党は強い危機感を持って、新総裁選びに取り組むことが大事だ。

産経新聞 2009年09月09日

自民党総裁選 強い指導者選びに全力を

麻生太郎首相が、16日に行われる特別国会の首相指名選挙を前に自民党総裁を辞任する考えを表明した。首相指名選挙では党両院議員総会長の若林正俊参院議員に投票することが決まった。麻生氏の名前を書くのか、白票を投じるのかでゴタゴタした党内の混乱は収束した。

後継総裁選びを首相指名選挙後に先延ばしすれば、こうした混乱が起こることは予測できたはずだ。首相が衆院選敗北直後に、新総裁を16日までに選出するよう要請していたら、違った展開になっていただろう。時間を無為に費やし、結束力のなさを露呈したことは残念だ。

自民党は、存亡の危機に立たされているといえる。いま大切なことは、新総裁の下で一刻も早く再生の道を歩み出すことだ。かくなる上は、強い指導者を選ぶことに全力を挙げてもらいたい。総裁選は18日に告示されるが、保守政党の危機でもある。有為な人材が立候補することを強く求めたい。

新総裁に期待されるのは、政権奪還に向けた明確なビジョンとシナリオを示すことである。衆院選では「国民の目線」を意識し過ぎて、結局は民主党との間でばらまき的な政策を競ったとの印象がぬぐえない。

8日の両院議員総会では、「立党の精神に立ち返り保守とは何かを再構築すべきだ」などの意見も出されたが、党をどう再建するのか具体的な意見がほとんど聞かれなかったのはどうしたことか。地方などの意見に耳を傾け敗因を分析することも大事だが、総裁選では立党の精神である憲法改正などの議論をもっと深め、保守政党としての自民党らしさをいかに取り戻すかを語ってもらいたい。

組織体質の見直しも急がれる。派閥主導で総裁を選んできた手法自体に、多くの有権者は愛想を尽かしてきた。いつまでも派閥幹部やベテランが影響力を誇示したのでは、古い体質からの脱却は望めまい。

当選回数などにかかわらず能力ある人材が存分に活躍できるよう、思い切って若返りするのも一つの打開策であろう。

民主党の政策には、外交や安全保障政策をはじめ、危うい点が少なくない。野党第一党としての自民党に期待される役割は大きい。来夏の参院選までにどう党勢を立て直すのか。総裁選は自民党の覚悟と決意を示す場である。

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