高速料金混迷 右往左往にうんざりだ

朝日新聞 2010年04月23日

高速料金迷走 ご都合主義で、小手先で

またか、である。

6月に導入予定の高速道路の新料金について、政府・民主党が決めた「見直し」方針が一夜にして覆った。当面は見直さないことにするという。

鳩山政権の政策決定の迷走には、いい加減うんざりさせられる。米軍普天間飛行場の移設問題しかり、郵政民営化の見直ししかり。

新料金は、高速料金割引の財源として高速道路会社に投入された税金約2.5兆円のうち、約1.4兆円を道路整備に回すために決められた。

曜日にかかわらず、普通車2千円など、車種に応じて上限を定める。しかし、「休日上限1千円」など、現行の割引制度が廃止されるため、近距離を走る車にとっては実質値上げとなる。

民主党がマニフェストで約束したのは高速道路の無料化だ。小沢一郎幹事長らから「無料化のはずが値上げとは」と反発の声があがった。

鳩山内閣の支持率が30%を切るなど、民主党にとって夏の参院選は、ただでさえ強い逆風が予想される。

これ以上、有権者の不興を買いたくないということだろう。鳩山由紀夫首相と小沢氏が出席する政府・民主党首脳会議で、小沢氏が再考を求め、いったんは見直しが決まった。

小沢氏の「鶴の一声」で政府方針が変わる。どこかで見た光景だ。

昨年末、財源不足で予算編成に苦しむ政府に対し、小沢氏が暫定税率廃止の見送りなどを求め、予算の骨格が決まった。あの時と同じではないか。

民主党政権の金看板「政策決定の一元化」はこれで完全に崩れた――。そんな批判への配慮もあったのだろう。結局、前原誠司国土交通相が鳩山首相らと会談し、現時点で料金は見直さないものの、国会論議を踏まえた将来の修正に含みを残すことで一元化の建前を辛うじて守った。

政府が一度決めたことでも、国会での議論を踏まえて柔軟に修正するということは、新しい政治のありようとしてあっていい。

しかし、今回のケースは、政府・与党間の事前の意思疎通の悪さや、選挙対策のご都合主義ばかりが目につく。

そもそも、割引財源を道路整備に回すよう政府に求めたのは、他ならぬ民主党だ。参院選に向けた地方対策の思惑があったに違いない。

本来、この発想自体がおかしい。「コンクリートから人へ」という政権の理念にも反する。料金体系の整理で財源が余れば、国庫に戻すのが筋だ。

今後、料金見直しがあるにしても、道路整備に当て込んだ財源の一部を戻し、割引範囲を少しでも拡大するという程度に終わるだろう。これも選挙目当ての小手先の修正というほかない。

鳩山政権の統治能力に、また一つ疑問符が加わった。

毎日新聞 2010年04月25日

論調観測 高速料金混迷 政権へのあきらめ投影

高速道路の料金制度の見直し問題は、再見直しを求める小沢一郎民主党幹事長と、否定する前原誠司国土交通相との対決の構図が鮮明となってきた。

値下げの財源を道路建設に回せと指示され、その通りにしたら、今度は、値上げになるから改めろと言う。小沢幹事長の要求は「二律背反だ」と、前原国交相は批判する。

限られた財源の中で、無料化と建設の両立は不可能だ。小沢幹事長の「ちゃぶ台返し」に憤るのは当然だろう。

一方で、国交省が建設に回す資金は、東京外環道など都市部が主体で、それに対する反発も背景にあると指摘されている。

ただ、無料化を掲げながら、実際には値上げというのでは、夏の参院選は戦えないという声は強い。選挙に不利なことはしないという基本線からすると、小沢幹事長が再見直しを求めたのは当然ということになる。

いずれにしても、民主党内の小沢対反小沢の構図が、高速料金問題を介して熱を帯びてきたわけで、この駆け引きの行方が注目されるところだ。

もちろん、この鳩山政権の迷走について、各紙社説は厳しく批判している。

冒頭部分を抜粋してみる。読売は「政府・民主党の政策決定が、またしても混乱している」、産経は「鳩山政権のたががはずれ、統治能力に重大な疑問符がつけられている」と、通常の表現で始まっている。

しかし、朝日は「またか、である」、毎日は「鳩山劇場の迷走劇に新たな一幕が加わった」、日経は「『高速道路料金を見直す』との決定を見直すという方針を見直す」--というような具合だ。

受け流したり、皮肉交じりの表現から感じられるのは、迷走が続く鳩山政権に対し、まともに注文をつけても仕方がないという雰囲気だ。

文中には、「いい加減うんざりさせられる」(朝日)、「またかというより、うんざりというのが、正直なところだ」(毎日)、「もはや政権の体をなしていない」(日経)という文句がさしはさまれており、そうした雰囲気を補強している。

政権交代をめぐって論調は分かれていた。どちらかというと、是としてきた方の社説に情緒的な表現が目立つのは、鳩山政権に対するあきらめが投影されているからではないだろうか。

ただ、国民の視線は、すでに、あきらめからしらけに変わっているかもしれない。その危機感が政権から伝わってこない。【論説副委員長・児玉平生】

産経新聞 2010年04月24日

高速料金迷走 政権の“たが”を締め直せ

鳩山政権のたががはずれ、統治能力に重大な疑問符がつけられている。先日発表したばかりの高速道路料金の割引制度の見直し案を、民主党の小沢一郎幹事長の要請で事実上、再検討することになったことだ。

事前に政府・与党内で調整が行われていれば、こんな混乱は起こらなかったはずだ。利用者不在の迷走劇と言わざるを得ない。

新料金制度は、小沢氏側が昨年末の予算要望で割引財源の一部を道路建設にも回せるようにと求めたのが発端だ。それが結果的には近距離利用など一部で実質値上げになることから、「国民の理解が得られない」(小沢氏)として再び見直すよう求めた。国会での法案審議が始まってから与党が注文をつけるのは極めて異例だ。ゴリ押しとの批判は免れまい。

与党の、その場限りの都合で、クルクルと政策が変わったのでは、国民は何を信じてよいのか分からなくなる。民主党内からは「値上げでは参院選は戦えない」との声も出ているが、むしろ有権者の反感を買うのではないか。

鳩山由紀夫首相の優柔不断な態度も混乱に拍車をかけた。いったん小沢氏の要請を受け入れながら、前原誠司国土交通相の強い反発を受けると、前言を翻して国会審議の過程で修正に応じるとした。トップの資質を疑われる。

「政策決定の内閣一元化」が有名無実となっている実態がより鮮明にもなった。昨年末、小沢氏のツルの一声で暫定税率の維持が決まった際には、政府・与党内の十分な議論を踏まえずに重要な政権公約(マニフェスト)が変更された。だれが責任をとるのか不明確では政権運営に支障をきたす。

鳩山政権は、米軍普天間飛行場の移設や郵政民営化の見直しをめぐっても迷走を続けている。政府・与党だけでなく、閣内もバラバラだ。緊急事態が起こったときに迅速な対応ができるのか懸念される。「政治主導」を掲げ官僚を遠ざけてきたが、ここまで混迷続きでは、政治主導の意味を見直さざるを得まい。

今回の混乱は、民主党の高速道路政策が定まらないことに起因している。無料化と新規路線の建設継続という2つの政策を同時に実現しようということには無理がある。限られた財源の中で、どうやって両立を図ろうというのか。政府は「無料化」そのものを断念すべき時期にきている。

毎日新聞 2010年04月24日

高速料金混迷 右往左往にうんざりだ

鳩山劇場の迷走劇に新たな一幕が加わった。高速道路の料金制度の再見直し問題だ。

国土交通省が策定した料金制度に与党内から異論が噴出した。そこで、政府・民主党は首脳会議を開き、再度見直すことを決めた。もちろん、鳩山由紀夫首相も出席してのことだった。

ところが、その後、鳩山首相と会談した前原誠司国交相は、再見直しを否定し、鳩山首相もこれを認める発言をしている。

高速道路料金の上限を休日に限らず平日も含めて普通車で2000円とするのが国交省の見直しの柱だ。6月に実施予定で、走行距離が長いほど料金は割安になる。しかし、現在の各種割引がなくなるため、普通車の場合で70キロに達しない場合は実質的に値上げとなってしまう。

無料化を掲げているのに、実際には利用者の大半は負担が増すため、トラック業界などが猛反発している。こんな矛盾した見直しが行われれば、夏の参院選に不利に働きかねない。首脳会議で見直しを決めた背景には、そうした事情があった。

ただし、利用者の多くが実質的に値上げとなるのは、料金割引のための財源を道路建設に回すことにしたからだ。

昨年末の小沢一郎民主党幹事長の求めに応じた措置だったはずだが、小沢氏は今回、「無料化どころか値上げだ。説明がつかない」と強調する。はしごをはずされた格好の前原氏としては、納得がいかないに違いない。

ただ、全面対立は得策ではないと判断しているようで、現時点での見直しを否定しつつも、国会の審議を通じる形で、何らかの対応をとる余地も残している。

財源が限られた中で、無料化と道路建設が両立するわけがないのは、最初からわかっていることだ。にもかかわらず、無料化と道路建設の間を右往左往している。

しかも、政策は内閣主導といいながら、小沢幹事長が突然、提起したのが、右往左往の震源だ。鳩山首相はというと、再見直しと、その否定の間で揺れ、存在感が乏しい。

無料化、道路建設、渋滞解消、他の交通機関への影響--。考慮すべき要素は多々ある。そのすべてを満足させる解はない。その中で妥協点を見つけ、国民生活が少しでもいい方向に進むようにと、方策を探るのが政治の役割のはずだ。

にもかかわらず、政権交代後、こうした状況が繰り返されている。またかというより、うんざりというのが、正直なところだ。突き放した視線が投げかけられていることを、騒動の当事者は自覚すべきだ。

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