中国ヘリ異常接近 危険な挑発行為非難する

朝日新聞 2010年04月24日

中国海軍 疑念をあおってどうする

中国海軍の艦載ヘリコプターが警戒監視中の海上自衛隊の護衛艦に繰り返し異常接近した。

衝突の危険があったにもかかわらず、中国側は意に介していない。むしろ日本の対応を瀬踏みしているかのような態度で、受け入れがたい。こんなことが続けば、日本国民の中国への脅威感や疑心暗鬼が深まり、日中関係全体を損なうことになりかねない。

日本政府の姿勢にも問題がある。鳩山由紀夫首相は日中首脳会談でヘリ接近問題を取り上げなかった。これでは問題にしないという誤ったシグナルを送ったことになる。極めて遺憾だ。

活動範囲を急速に拡大させている中国海軍に、どう対処すべきか。

今回、駆逐艦2隻、潜水艦2隻など計10隻で編成された東海艦隊の連合艦隊が東シナ海で艦載ヘリの飛行訓練をした後、10日夜、沖縄本島と宮古島の間の公海を太平洋上に抜けた。艦艇数がこれまでより多いだけでなく、潜水艦は異例の浮上航行をした。明らかな示威行為であろう。

8日には艦載ヘリが海自の護衛艦に水平距離で約90メートルまで接近。日本側の事実関係確認の申し入れにもかかわらず、21日にも同様のことが起きた。

しかし、中国政府は「日本側の警戒監視活動に対する必要な防衛措置だ」と反論した。また、国営新華社通信系の国際先駆導報は「海洋国家日本は中国海軍の動向に敏感で、神経質でもある」と論評。「日本は中国の軍艦が頻繁に外に出ることに慣れるべきだ」と逆に日本をいさめるかのようだ。

今回の遠洋訓練について、中国の解放軍報は「総合防衛能力を高める、まれに見る規模、複雑な環境での訓練」と位置づける。メディアを利用し既成事実を積み重ねる「世論戦」、相手の士気を低下させる「心理戦」、法律を駆使して国際的支持を得る「法律戦」の「3戦」の訓練をするとも報じた。

一連の事態は中国海軍の想定の範囲内で、訓練には日本の反応を試す狙いもあったと見るのが自然だ。であればなおさら、日本側の申し入れを無視した対応は認めるわけにはいくまい。まさに日本の対中外交力が問われる。

日中は戦略的互恵関係の構築を共通目標にしている。防衛面では対話や交流の強化を通じ、地域の安定に向けて尽力することを約束。偶発的な衝突事故を避けるために、相互の連絡メカニズムの整備を目指している。

しかし、鳩山政権は、日中政府間での危機管理や軍事問題をめぐる協議に十分力を注いでいない。

太平洋をはじめ外洋での活動を広げる中国海軍は、世界の反発を招かないふるまいをするべきである。

日本政府も日米安保を基軸としつつ、中国に信頼醸成づくりを迫らなければならない。

産経新聞 2010年04月23日

中国ヘリ異常接近 危険な挑発行為非難する

沖縄南方で活動中の中国海軍艦艇の艦載ヘリコプターが海上自衛隊の護衛艦に異常接近し、外務省は「危険な行為」として中国側に抗議した。

中国艦載ヘリによる異常接近は8日に次いで2度目で、意図的な示威行動の疑いもある。言語道断の危険な挑発行為として強く非難する。

それにもまして日本の対応も問題だ。外務省の抗議は最低限当然だが、最初の接近への対処は4日も遅れ、鳩山由紀夫首相は日中首脳会談でこの問題を回避した。結果的に2度も接近を許したのは極めて遺憾である。中国艦艇の活動海域は沖ノ鳥島にも近く、鳩山政権は日本の主権と海洋権益を守る毅然(きぜん)たる態度を示すべきだ。

中国艦艇はミサイル駆逐艦やキロ級潜水艦などからなる。東シナ海での訓練を経て10日夜、沖縄本島西南西の公海をこれ見よがしに南下し、日本の領土である沖ノ鳥島の周辺で活動を続けている。

最初の接近は8日、東シナ海で警戒中の護衛艦「すずなみ」に艦載ヘリが90メートルまで接近した。また、2度目は21日午後、沖縄南方の公海上で護衛艦「あさゆき」から90メートルに接近した上に周囲を2周するなどしており、明らかに初回よりも挑発的といえる。

外務省は最初の接近で当日夜に防衛省から連絡を受けたものの、「抗議すべきか慎重に検討」(岡田克也外相)していたため、中国側に事実確認を求めたのは4日後の12日になってからだった。

しかもワシントンで翌日(現地時間12日)行われた日中首脳会談は、首脳レベルで胡錦濤国家主席に抗議と注意を喚起すべき機会だったにもかかわらず、鳩山首相はこの問題に触れなかった。

岡田氏によれば「首相と周辺で総合判断した結果、首脳会談の議題にしなかった」というが、この説明には疑義を呈さざるを得ない。異常接近は「安全航行上、極めて危険」(防衛省)であるだけでなく不測の事態を誘発しかねない重大なリスクを伴うからだ。

中国海軍は近年、沖縄や尖閣諸島を含む海域で活動を強化している。国際法に違反した原潜の日本領海潜没航行や米空母への異常接近、駆逐艦隊の津軽海峡通過などの例をみても、日米による警戒と監視を怠れば日本の海洋権益への脅威はさらに増すだろう。

鳩山首相と岡田外相は根底から認識を改め、国益を守ることが国家の責務と肝に銘じるべきだ。

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