首相元秘書有罪 「母からの金」使途説明を

朝日新聞 2010年04月23日

元秘書有罪 首相の「決着」はまだ先だ

鳩山由紀夫首相の政治資金問題に、司法の裁きが下った。

首相個人や母から提供された巨額の資金を個人献金などに偽装していたとして、首相の金庫番だった元公設第1秘書が有罪判決を受けた。ずさんな資金管理であり、当然の結論だろう。

収支報告書への虚偽記載は5年間で約4億円にのぼる。資金の出どころは親族らであり、元秘書側は「癒着や政治腐敗を招くおそれはない」と主張したが、カネの流れを透明化して国民の監視下に置くという政治資金規正法の趣旨に反していることは言うまでもない。

とりわけ問題とされたのは、「母からの子ども手当」と揶揄(やゆ)された毎月1500万円の資金提供だ。一切知らなかったという首相の言が仮に本当だとしても監督不行き届きは明白である。

しかも首相は新人議員のころから政治資金の透明化を訴えていた。自らの資金管理を長年、秘書任せで何も知らなかったでは通らないのではないか。

首相は先週、支持者らに「来週すべてが決着しますから、それ以降はご心配はいりません」と語ったが、およそ間違った認識だ。首相には、これからやるべきことがたくさんある。

まずは使い道を明らかにしていない残りの資金を何に使ったのか、それを明らかにすることだ。

首相は、元秘書の裁判が終わり、東京地検に押収されていた資料が返還されれば、弁護士に分析させ、結果を公にすると約束してきた。

それなのに、先の党首討論では「資料を提出する必要はない」と発言を後退させた。

何も私的な使い道まで示せと言っているわけではない。政治や選挙活動にかかわる支出について開示を求めているのだ。疑念を払拭(ふっしょく)するために、一日も早く実情を報告すべきである。

企業・団体献金の禁止に向けた与野党協議はいまだ開かれていない。今国会中に実現するには、野党が条件として求めている元秘書らの証人喚問などに応じる必要がある。「国会でお決めになること」といった言い訳はもう聞きたくない。

野党時代、政権与党の政治とカネの問題を厳しく追及してきた民主党が、いざ当事者となった時にどう振る舞うのかを国民は注視していた。

ところが元秘書に責任をかぶせて自らはけじめをつけず、証人喚問からも逃げる。過去の多くの自民党政治家と変わらぬ姿が不信を深めた。政権交代への失望を招いた首相の責任は重い。

首相は「政治を変えてほしいという国民の期待に応えることで責任を果たす」として辞任論を否定してきた。政策面での相次ぐ迷走を見るにつけ、その言葉もむなしく響く。

元秘書の判決は幕引きではない。

毎日新聞 2010年04月23日

首相元秘書有罪 「母からの金」使途説明を

鳩山由紀夫首相の資金管理団体をめぐる偽装献金事件で、東京地裁が首相の元公設第1秘書に執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

現職首相の金庫番だった元秘書の有罪であり、重い司法判断だ。

元秘書が「友愛政経懇話会」と「北海道友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書に計4億円あまりの虚偽記載や不記載をした政治資金規正法違反が判決の認定内容である。

元秘書には、首相の母親から02年以降で12億4500万円もの資金が渡されていた。首相は本当にそれを知らなかったのか。首相側は巨額の資金を何に使ったのか。審理は1回で結審してしまい、こうした疑問が解明されることはなかった。

元秘書は全面的に起訴内容を認め、情状証人も立てなかった。早期の幕引きを図ったのは明らかだ。一方、東京地検も、実母からの提供資金の使途などを公判で積極的に立証する姿勢を見せなかった。

判決は「国民の間に政治に対する不信感が醸成されかねない」と事件に警鐘は鳴らしたものの、それ以上の言及はなく通り一遍の印象はぬぐえない。

実母らからの資金提供を隠すのが動機の一つだったことに判決も言及した。ならば地検が実母の事情聴取をせず上申書で済ませたのは適切だったのか。甘い対応だったと改めて指摘せざるを得ない。

小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体に絡む捜査では、国会開会直前の強制捜査など、その手法に検察批判も起きた。事件によって処理や手続きに温度差があると国民が疑問を感じれば、検察への信頼は揺らぐ。

実母同様に上申書だけの捜査にとどめた首相の不起訴処分は果たして適切だったのか。近く検察審査会が結論を出す見通しだ。検察の姿勢もまた問われる。注目したい。

首相は、自らの不起訴処分を受けた昨年12月の会見で、実母からの資金提供について、政治活動や個人活動に使われたと明らかにした。

使途の詳しい調査について問われると「それが国民の胸の中にあるなら、調査の必要があるかもしれない」と述べ、3月の参院予算委員会でも「裁判が終わったら、できる限り使途を説明したい」と答弁した。

だが、21日の党首討論で首相は、使途などの資料の国会提出について「基本的には必要ないのではないか」と消極姿勢に転じてしまった。

世間の常識を超えた額の資金を長年申告しなかった行為が、納税者である国民の不信感を増幅させたのだ。政治活動はもちろんだが、個人活動に使われた分も含め一定の説明責任は今もあるはずだ。首相に再考を求めたい。

読売新聞 2010年04月23日

首相元秘書有罪 「説明する」も嘘だったのか

これまで捜査中や公判中であることを理由に、巨額資金の使途の説明から逃げて来た鳩山首相である。速やかに説明責任を果たすべき時だ。

首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の偽装献金事件で、政治資金規正法違反に問われた首相の元公設第1秘書・勝場啓二被告に対し、東京地裁は禁固2年、執行猶予3年の判決を言い渡した。

政治資金収支報告書に、故人を含め実際は献金していない人の名前を使うなどして総額4億円の(うそ)を書いた――。資金の出どころを偽装して、国民の監視から覆い隠した刑事責任は重大である。それを漫然と見過ごしていた首相の責任も極めて大きい。

元秘書の裁判は終結しても、首相本人の責任論まで一件落着とはいくまい。

鳩山首相は、母親から12億5000万円もの資金提供を受けていた。「知らなかった」と強弁し、昨年末に約6億円の贈与税を納付して幕引きを図ろうとした。

国民からは「発覚しなければ納税もしなかったろう。税金を払うのがばかばかしくなる」という声が上がった。当然の反応だ。

このうちの7億円余の使途も明らかになっていない。首相は「秘書に任せていた。わからない」を繰り返した。それでも、世論の批判や野党の追及に、12月には「検察の解明が終わった段階で、知りうる事実をすべて国民の皆さんに説明したい」と述べた。

先月には「裁判が終わった暁には(検察に)書類の返還を求め、皆様方に見ていただきたい」と具体的な説明方法にも言及した。

しかし一昨日の党首討論では一転、「資料を出す必要はない」と答弁を翻した。これには驚きを通り越して、怒りを覚えた国民も多かったのではないか。

前言はすべて嘘だったのか。首相はただちに調査を開始して、巨額資金の使途を可能な限り国民の前で明らかにすべきだ。

首相の責任逃れの姿勢は、民主党に対する国民のイメージを大きく損ねている。

4億円の土地購入事件に関しての小沢幹事長や、北海道教職員組合から違法な選挙資金を受けていた小林千代美衆院議員も説明責任を果たしていない。

首相と小沢氏に関しては、検察の不起訴処分の当否について、近く検察審査会で議決が出る見通しだ。結果によっては、検察は再捜査を迫られる。国民の追及の目も厳しさを増すだろう。

産経新聞 2010年04月23日

元秘書判決 許されぬ首相の逃げ切り

鳩山由紀夫首相は臭いものにふたをしようとしている。

首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」をめぐる偽装献金事件で元公設秘書の勝場啓二被告が禁固2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。

事件は、勝場被告が架空名義などを用いて個人献金や政治資金パーティー収入を約4億円分水増しし、収支報告書に虚偽記入した。

判決は、実態とかけ離れた収支報告により「国民の信頼は著しく損なわれた」と指摘した。これに対し、首相は「政治を変えてほしいとの期待に応え、責任を果たしたい」とコメントした。「政治とカネ」の問題をめぐる政治的・道義的責任に加え、国政の最高責任者として厳しい倫理性を求められる立場にあることを、いまもってわかっていない発言である。

判決は資金管理団体が収入の相当部分を首相自身と母親からの提供資金に頼っていたことを挙げた。12億6千万円に上る提供資金はどこへ流れたのか。使途の全容解明が不可欠である。

首相が不誠実な対応を示したのは21日の党首討論だ。公判終了後に関係資料を提出するとしてきたこれまでの国会答弁を翻し「基本的には必要ない」と述べた。勝場被告に、証人喚問に応じるよう促すことも拒否した。

首相は資料提出を拒む理由を、検察捜査を経て決着した事件だからとした。納得できる説明ではない。自らの不起訴処分をもって潔白を主張し、説明責任も果たさないのは、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件での小沢一郎民主党幹事長と同じ論法ではないか。

首相が母親からの資金を全く知らなかったと主張してきたことが、この事件の前提となっている。内容を知らないのに「プライベートな部分」の公表を嫌がるのはなぜか。不透明な資金の流れが残っている懸念があるなら、自ら明らかにすべきである。

首相の不起訴処分の当否については、検察審査会が審査しており、その結果も注目される。

首相は野党時代に「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべきだ」と発言したが、自分には当てはまらないという身勝手な理屈を唱えた。巨額な贈与税の脱税行為も後払いで許された形となり、納税者は不公平感を覚えた。いかに自分が国民の信を失う原因を作ってきたかを知る必要がある。

kurea28歳 - 2010/04/25 15:55
はじめまして、こうやって社説を並べて見る事ができるのは、ネットの強みですね。政治資金の話で協議会をつくるとか、新しい提案のようなものを民主党はしているが、協議会をやって、企業献金や団体献金を禁止するという話を、今ある法律をきちんと守っていない人が言うのはおかしい。少なくとも、「今ある法律をまずは守ってください」という話からスタートしなければならない。朝日新聞社さんの社説が心に残りました。『元秘書の判決は幕引きではない。』まさにその通りに思います。
貴方たちの各マスコミ社のネガキャンに負けず経済対策を行ってきた麻生政権が懐かしく思います。
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