仕分け第2弾 せめてこれはしっかりと

朝日新聞 2010年04月21日

仕分け第2弾 せめてこれはしっかりと

政権交代による政治の変化を、国民に最も印象づけたと言っても過言ではない「事業仕分け」。その第2弾が近く始まる。

今回、切り込むのは、天下りや税金の無駄遣いの温床とされる独立行政法人(独法)と政府系の公益法人だ。

政府の行政刷新会議はきのう、都市再生機構や大学入試センター、理化学研究所など10府省所管の47法人の151事業を対象にすることを決めた。

不要な事業は廃止し、民間に任せられるものは任せる。その結果、いらなくなった法人は廃止し、民営化する。個別事業の仕分け結果を、組織や制度の大胆な見直しにつなげてほしい。

独法という仕組みは、中央省庁を再編した橋本行革で導入が決まった。行政をスリム化するとともに、民間の経営手法を取り入れて、事業の効率化や透明化を図るのが狙いだった。

経営トップには民間人の起用も想定されたが、実態は官僚の天下りの受け皿となった。毎年3兆円の国費が投入されながら、無駄な事業が温存され、省庁の縦割りをそのまま持ち込んだような事業の重複も目立つ。

自民党政権時代にも改革は試みられたが、大きな前進はなかった。天下り先や権限を失いたくない省庁と族議員がタッグを組んで抵抗したからだ。

民主党はマニフェストで、独法は「全廃を含めた抜本的見直し」、天下り公益法人は「原則廃止」を約束した。しがらみの少なさを強みに、大胆な改革を進めてほしい。

独法の中には、関連する公益法人に随意契約で仕事を流し、天下りの受け皿にしている事例もある。入り組んで見えにくいファミリー全体の構図をあぶりださなければいけない。仕分け人の眼力が問われる。

民主党は天下りの根絶を掲げながら、日本郵政の社長に元大蔵事務次官の斎藤次郎氏を起用した。マニフェストにうたった国家公務員の総人件費の2割削減にも手をつけていない。

独法改革は公務員制度改革の入り口でもある。公務員労組の支援を受ける民主党政権に改革ができるのか、今回の仕分けでその本気度が試される。

事業仕分けには「短時間の議論で結論を出すのは乱暴だ」「目先の費用対効果を優先して、教育や科学技術などの分野で、中長期的な視点が欠けている」などの批判もあった。

しかし、これまで国民の目に触れなかった予算査定の経過が全面公開されたことの意義は大きい。納税者の参加意識を高めたことは疑いない。枝野幸男行政刷新相が「政治文化の革命」と呼ぶのもうなずける。

事業仕分けは政権浮揚の道具ではない。有権者はそれほど甘くはない。政権が見せるべきはパフォーマンスではなく、無駄削減の実だ。

毎日新聞 2010年04月24日

独立法人見直し 「仕分け」の進化を見たい

仕分け人、蓮舫参院議員らが事業を問いただす声がまた帰ってきた。政府の独立行政法人(独法)、公益法人に対する事業仕分けが始まった。前半部分の独法への仕分けは、47法人の151事業が対象。初日から、国際協力機構(JICA、外務省所管)の運営費縮減など廃止や見直し判定が相次いだ。

今年度予算を対象に昨年11月実施した「第1弾」はその斬新さが、国民の強い関心を集めた。一方で、ムダ削減の効果が限られていたのも事実だ。今回は、独法が天下りの指定席となっている構図を暴くだけでなく、統廃合も含めた大仕掛けな改革につなげることが大切だ。「仕分け」も進化が問われている。

独法は行政の効率化に向けて、民間手法の導入を目指すとして制度化された。ところが役員の多くは所管省からの天下りで占められ、そこからさらに公益法人に天下りをする「わたり」が横行している。しかも、国から支出を受ける多くの独法は、ファミリー企業との随意契約で割高な経営をしている。財政危機の中で今ごろこんな運営をしている実態を大いにあぶり出してほしい。

ただ、「役人たたき」に終始するようでは、仕分けの限界も示すことになる。行政刷新会議が作業にあたり、事業を本来は民間に委ねるべきか、さらに他法人と重複していないかのチェックに重点を置いたのは賛成だ。その結果を踏まえ、仕分けの対象から外れた法人も含め、全体の改革に踏み込まねばならない。

また前回の作業では、同じ事業でも仕分け人がムダと判定した部分と別の経費が実際は予算から削られたケースも指摘されている。科学技術分野などが果たして「仕分け」になじむ分野かも論議を呼んだ。今回も、文部科学省所管の14法人が俎上(そじょう)に載る。事業の廃止や縮減の判定にあたり、その中身と理由についての説得力が前回以上に問われよう。

鳩山由紀夫首相には、仕分けを内閣支持率の挽回(ばんかい)につなげる期待が強いようだ。だが、枝野幸男行政刷新担当相が言う通り、仕分けの成果をただちに金額としてはじき出すことは難しい。政権浮揚を意識したパフォーマンスに走れば、逆に国民の反感を買う。仕分けを通じた経費削減の限界を認識したうえで財源論議は別途、進めなければならない。

仕分けの判定通りに事業廃止や法人の統廃合に手をつければ、天下り先が減る関係省庁が猛烈に抵抗することは確実だ。事業を廃止する法人の職員の雇用にどう取り組むかという、難題も控える。仕分けを政治の手法として定着させるためには、それを生かし切る内閣の力量が何よりも必要である。

読売新聞 2010年04月25日

仕分け第2弾 中長期の戦略的視点が重要だ

独立行政法人の税金の無駄遣いを徹底して削減することは無論、大切である。しかし、目先の費用対効果にこだわるあまり、より重要な戦略的視点を忘れてはなるまい。

政府の行政刷新会議が、事業仕分けの第2弾の作業を開始した。4日間にわたり、104の独法のうち、10府省が所管する47法人の151事業を対象に、「廃止」「縮減」「民間移管」「地方移管」などを判定する。

初日は、沖縄科学技術研究基盤整備機構について、大学院大学の開校準備の事務経費や職員給与が多すぎるとして、予算の縮減と管理運営体制の見直しを求めた。

青年海外協力隊の派遣や政府開発援助(ODA)を実施する国際協力機構(JICA)については、職員給与や在外手当、旅費の一層の節減、不要資産の国庫返納などが必要と結論づけた。

所管府省から独法、あるいは独法から関連企業・法人にOBが天下りする。その見返りに、独法や企業・法人は、随意契約などで有利な条件で事業を受注したり、補助金を受け取ったりする。こうした癒着の見直しは急務だ。

独法同士または独法と自治体が類似した事業を行っている場合、独法を統廃合し、事業を地方に移管すれば、事業の効率化や二重行政の是正に役立つだろう。

一方で、科学技術の研究開発法人を安易に統廃合する「数合わせ」の改革には、慎重であるべきだ。科学技術立国に欠かせない国際競争力を高める観点から、重要だと判断すれば、予算を拡充すべき事業もあるはずだ。

そもそも事業仕分けは、地方自治体の無駄な予算の削減で一定の効果を上げた手法だ。

はるかに事業費が巨額で、仕組みも複雑なうえ、国全体に影響する事業の是非について、わずか1時間足らずの議論を経て多数決で結論を出してしまうやり方は、乱暴であり、無理がある。

仕分け作業は、2010年度予算の概算要求を対象にした昨秋の第1弾と同様、全面公開され、インターネットで生中継された。

鳩山内閣の支持率の低下に歯止めがかからない中、政府・与党には、仕分けを政権浮揚のカードにしたい思惑が働いている。大衆受けを狙った政治ショーにすることは許されない。

政府は、仕分け作業の結論を踏まえて、来月中にも独法の改革案をまとめる予定だ。冷静で慎重な議論を重ねたうえで、最終結論を出すべきだろう。

産経新聞 2010年04月22日

独法仕分け 「国民受け」狙いでは困る

政府の行政刷新会議による、独立行政法人(独法)を対象にした「事業仕分け」第2弾の前半戦が23日から始まる。

全独法の約半数に当たる47法人の151事業が選ばれている。枝野幸男行政刷新担当相らが行った事前の視察を踏まえての選定だ。

独法の統廃合も視野に入れ、温存されている無駄を洗い出す方針だが、政治ショー的な国民受けを狙ったパフォーマンスに走るのは慎むべきである。

昨秋の第1弾では「1事業に1時間」という制限を設け、衆人環視の下で官僚バッシングを行い、話題を集めた。与党内には、再度の注目効果を期待する声もあるようだが、政権浮揚の手段と考えているなら見当違いである。

独法には改めるべき点が多い。天下り官僚の受け入れが慣例化している。再天下り先となる公益法人への随意契約集中や、委託された業務をファミリー企業に再委託するなど、不透明な運営でも批判を浴びている。過大な剰余金も問題になっている。

国民の目が届きにくい世界だ。一向に改善されなかった病巣に迫ることの意義は大きい。

だが、事業仕分けには将来を見据えた国家戦略が求められる。資源小国の日本は、科学技術立国を標榜(ひょうぼう)している。第1弾で、スーパーコンピューターの開発予算を凍結しようとした際に国民が強く反発したのは、そのためだ。

第2弾の仕分けを踏まえて、研究開発系の独法の制度変更なども検討される見通しだ。日本には38の研究開発法人が存在する。理化学研究所や宇宙航空研究開発機構などがその顔ぶれである。

だが、その数は米国に比べて1けた少ない。米国では研究機関の多様性が国力の維持向上につながっていると見るべきだろう。

もし、今回の仕分けで「数減らし」という単純な発想が跋扈(ばっこ)するようなら、日本の将来にとって極めて危険だ。研究開発力は加速度的に弱体化し、科学技術立国という目標も絵に描いたもちとなる。国民の誇りも失われる。

研究開発は実利の追求だけにとどまらない。真理の探究も、知の体系の構築も含まれる。それを忘れると二流国家に成り下がる。仕分けにもこの視点が必要だ。

民主党は独法だけでなく、特別会計の無駄の見直しを掲げていたはずだ。この本丸への切り込みを忘れてはならない。

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