ギリシャ救済 その場しのぎは危うい

毎日新聞 2010年04月17日

ギリシャ救済 その場しのぎは危うい

財政危機にあるギリシャへの支援が実現に向け動き出した。近く欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の責任者がギリシャを訪ね、準備の協議を始める模様だ。財政難に陥った国が仲間のユーロ加盟国から助けを受けるのは、1999年の単一通貨誕生以来、初めてのこととなる。

しかし、これで一件落着、と安心するにはほど遠いのが現状だ。市場は、今回の支援をもってしてもギリシャの財政健全化は困難だ、との厳しい見方を捨てていない。ユーロ加盟国は混乱の火が域内の他国に拡大したり、制御が利かなくなったりする前に、財政危機対応で抜本的な枠組み作りを急ぐ必要がある。

ギリシャも他のユーロ加盟国も、これまで市場圧力の後手に回る対応を繰り返してきた。ユーロ加盟国が、先送りしてきた支援額や貸出金利などの具体的内容をようやく固めたのも、ギリシャ国債の格付けが引き下げられたからだ。何も手を打たなければ、直後に予定されていた国債入札が失敗に終わり、混乱に拍車がかかる恐れがあった。

入札はひとまず終わったが、その後も市場の不安は払しょくされず、ギリシャ国債の利回りは年初の3倍程の水準に高止まりした。今後、5月末までに110億ユーロ、年内に総額540億ユーロの国債入札が控えており、このまま金利の高騰を許せばギリシャの危機は一層深刻化する。EUとIMFによる融資が待ったなしになった背景だ。

しかし、実際に支援の融資が行われても疑問や難問が多く残る。ギリシャは国内総生産(GDP)の12・7%(09年)にまで達した財政赤字を計画通りに大幅削減できるのか、と市場関係者の多くは疑っている。実現にはかつてないスケールの緊縮財政が必要で、国民が大きな痛みを強いられることになるからだ。

アルゼンチンがIMFの支援にもかかわらず結局、債務不履行に陥った例があり、アルゼンチン以上に財政悪化が深刻なギリシャは早晩、債務の大幅削減など抜本的な対策を迫られる、との見方も少なくない。

信用不安が他のユーロ加盟国に飛び火した場合、どうするのかという問題もある。危機のたびに対策を議論するようでは、救済に対する域内世論の反発も強まりかねない。恒久的な仕組みとしてIMFのEU版(EMF)創設を求める提案は検討に値するのではないか。

ギリシャへの支援融資で混乱を回避できたら、稼いだ時間を使って、こうした問題への解決策を用意しておく必要がある。

市場に催促され対策を小出しにするのはもうやめた方がいい。

読売新聞 2010年04月19日

ギリシャ危機 IMFに頼る欧州の苦い決断

ギリシャの財政危機に対する支援策が、ようやく動き出した。

独仏など単一通貨ユーロを採用する欧州15か国は、ギリシャが資金繰りに行き詰まった場合、最大300億ユーロ(約3・8兆円)を融資することを決めた。

欧州15か国は同時に、国際通貨基金(IMF)にも協調融資を求める方針で合意しており、支援総額は450億ユーロ(約5・7兆円)超に達するとみられる。

アジア、中南米諸国などが米国主導のIMFから緊急支援を受ける例は珍しくない。だが、1999年のユーロ誕生以来、ユーロを導入している国がIMFから救済を受ければ初めてである。

メンツ丸つぶれだが、背に腹は代えられぬということだろう。苦渋の決断を評価したい。

一連の合意を受け、ギリシャ政府は、約16億ユーロの短期国債を起債し、資金調達に成功した。欧州とIMFによる支援体制ができたことで、ひとまず市場に安心感が広がった効果といえる。

しかし、これでギリシャ危機が去ったと楽観はできまい。

ギリシャは5月にかけて大量の国債償還を控え、資金繰りは綱渡りが続く。今後も安定して資金調達ができるか不透明だ。

そもそも、今回の合意実現までの道のりは平坦(へいたん)ではなかった。

独仏両国は当初、放漫財政のギリシャを安易に救済したり、IMFに支援を求めたりすることに消極的だった。

3月半ばには、ギリシャを支援する方針でユーロ15か国がいったん合意したが、ドイツがその後、難色を示し混迷が続いていた。

しかし、危機を放置すれば、欧州全体に悪影響が広がりかねず、土壇場で歩み寄った。

今後の課題は、ギリシャが確実に財政再建できるかどうかだ。

ギリシャは国内総生産(GDP)比で12・7%に達した財政赤字比率を、今年中に4ポイント引き下げる目標を立て、3月初めの追加財政再建策に付加価値税の引き上げなどを盛り込んだ。

これに対し、ギリシャでは反対デモが続いているが、国民が痛みを分かち合う姿勢が肝要だ。

欧州では、財政赤字を抱えたポルトガル、スペインなどにも信用不安が飛び火し、市場の懸念材料となっている。

だからといって毎回、IMFに支援を求めるわけにはいくまい。ユーロ加盟国の財政をいかに改善していくか。独仏などの手腕が問われそうだ。

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