暴力団制圧 警察は市民の勇気を守れ

朝日新聞 2010年04月16日

暴力団制圧 警察は市民の勇気を守れ

暴力団とは何か。日常の市民生活とは共生できない存在である。

その暴力団による発砲事件が福岡県で相次いでいる。警察庁の安藤隆春長官は現地を訪れ、暴力団壊滅に向けた強い取り組みを指示した。

北九州市内で先月、指定暴力団工藤会の追放運動を進める自治会のリーダー宅に銃弾が撃ち込まれた。この銃撃事件などを受けて、全市を挙げて暴力団追放運動に取り組む姿勢を示した市長のもとには脅迫文が届いた。

さらに今月、福岡市の西部ガス関連ビルと、専務の親族宅に銃弾が撃ち込まれた。西部ガスには2月、北九州市に計画する液化天然ガスの大型基地建設工事から大手ゼネコンを外せ、とする脅迫文が銃弾とともに届いていた。

工藤会への利益供与を拒んできたこの建設会社に関係する発砲事件は、これまでに計8件起きている。自治会リーダーや企業幹部ら市民に銃口を向けた事件は、社会に対する露骨な挑戦だ。断じて許すことはできない。

福岡県は今月、暴力団排除条例を施行した。それには暴力団を利用しようとして利益を供与した事業者に対する罰則が全国で初めて設けられた。

警察庁は「警察対暴力団という構図から社会対暴力団への転換を進める」として、福岡をモデルに、ほかの都道府県でも同様の条例を制定するよう後押ししていく方針だ。

警察は組織を挙げて市民を徹底的に守り抜き、威信をかけて早く容疑者を逮捕し解散につなげてほしい。そうしなければ社会全体として暴力団と闘う隊列はできない。

福岡県内の発砲事件は2008年まで5年連続で全国最多だった。今年はすでに8件を数える。県内に拠点を置く指定暴力団は5団体で全国最多だ。県警幹部が「ヤクザを支える土壌がある」というほど、福岡特有の要因もある。

暴力団から目の敵にされる建設会社があること自体、逆らわなければ仕事が円滑に進むからとその介入を受け入れてきた業界の体質をうかがわせる。

暴力団を追いつめるには、資金源を断ち、組織の弱体化を図るしかない。条例は悪質な企業を摘発、公表して資金が行かないようにする仕組みだ。

包囲する輪に裂け目があってはいけない。トラブル処理に暴力団を使うような行為は根絶させねばならない。報復や嫌がらせを恐れてカネを払ってきた企業なども、これを機に暴力団の要求を拒む勇気をもってもらいたい。

暴力団を必要悪と見るような風土が残るのは福岡ばかりではあるまい。

福岡で暴力団と立ち向かう人々の決意を全国に広めるためにも、警察は住民や自治体、業界と連携を強め、あらゆる法令を使って違法な行為を封じ込め、壊滅へと追い込んでほしい。

産経新聞 2010年04月18日

暴力団排除条例 警察は住民期待に応えよ

警察庁の安藤隆春長官が「日本の暴力団追放の成否がかかっている」とまで語った、福岡県の「暴力団排除条例」が今月から施行された。

暴力団組員に利益供与した事業者側にも罰則を科すなど全国初の条例だが、これに合わせるように、暴力団追放の先頭に立つ住民運動のリーダー宅や地元企業への暴力団による発砲事件が続発している。

九州ではここ数年、暴力団同士の抗争事件が目立っていた。しかし、今回は一般の住民を直接狙ったものであり、きわめて深刻な事態だ。こうした卑劣な犯行は絶対に許してはならない。

危機感を抱いた警察庁は、安藤長官自らが現地を視察し、徹底捜査と暴力団の取り締まり強化を指示した。当然のことだ。警察は今回の発砲事件を暴力団壊滅への好機ととらえ、捜査に全力を傾けてもらいたい。

福岡県では暴力団によるとみられる発砲事件が平成20年まで5年連続全国最多だった。指定暴力団も5団体と、全国で一番多い。

暴力団による事件は後を絶たず、福岡県が全国に先駆けて、暴力団を街から一掃する厳しい内容の条例を定めたのも、こうした住民の不安が背景にある。

しかし、これに反発する暴力団は先月15日、暴力団追放運動を展開する北九州市小倉南区の自治会長宅に銃弾を撃ち込んでいる。同29日には、暴力団排除に熱心に取り組む北九州市長あての脅迫状も届けられた。

今月に入っても、嫌がらせは続いており、福岡市内の西部ガス関連ビルと同社役員の親族宅に相次いで銃弾が撃ち込まれている。

警察は一連の事件について、同社が計画する液化天然ガス基地建設に絡み、北九州市を拠点とする指定暴力団工藤会による組織的な犯行とみている。

警察庁では福岡県の条例は、暴力団の資金源を絶ち、組織に打撃を与えるものと評価し、全国自治体への広がりを期待している。

発砲事件の捜査は「まさに天王山の戦い」(安藤長官)であり、警察は、盛り上がった住民運動が脅迫を恐れて萎縮(いしゅく)することがないよう事件の全容を解明し、容疑者を逮捕することで暴力団の壊滅につなげなければならない。

暴力団の追放、解散は警察だけではできない。自治体、住民、業界も一体となって取り組み、安全・安心な社会を築きたい。

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