教員人事権 大阪の試みに注目する

朝日新聞 2010年04月17日

教員人事権 大阪の試みに注目する

わがまちに根を張った先生たちのもとで生き生きと学べる。教育を柱にした町づくりにつながる。そんな可能性を開く試みとして注目したい。

大阪府教育委員会がもつ公立小中学校の教員の人事権について、橋下徹知事が市町村教委に移すことを提案。大阪北部の五つの市町が連合を組み、受け皿になりたいと名乗りを上げた。これを文部科学省が認める方針だ。

5市町の人口は計約65万人。109の公立小中で3千人の先生が教える。実現すれば、この中での転勤は府教委に相談せずに決めたり、独自に先生を採用したりできるようになる。

いまの制度では、小中学校を設置、運営するのは市町村だが、教員の人事や採用は都道府県教委が行う。教員給与は3分の2を都道府県、3分の1を国が負担する。全国の教育水準を維持し、先生のばらつきが生じないようにという仕組みだ。

だがこれは、国、都道府県、市町村の上下関係を生むもとにもなる。都道府県の人事コントロールのもとでは、学校現場が主体となった取り組みも育ちにくいと、指摘されてきた。

子どもを一番近くで見ている地域へ権限と裁量をおろし、子どもに合った学びを生み出そう――。教育分権の議論の中で、市町村への人事権移譲も語られてきた。ある程度の規模の自治体連合が教育行政の責任を持つのは、一つのあり方だろう。

言い出しっぺの橋下知事には、全国学力調査で大阪の結果が低迷したことを受け、市町村の教育の責任をはっきりさせる狙いもあったようだ。

だが学力向上ばかりが目的であっては困る。「国際化教育のため語学が堪能な先生を増やしたい」「地域の人材を社会人教員として活用したい」といった独自の施策を進める仕組みとして生かしたい。

弊害の懸念もある。都市部には優秀な先生が集まっても、へき地の募集に応じる若者がいるだろうか。人事異動の範囲が狭まり、むしろ硬直化しないか。地域によって採用される人材の傾向が偏るのではないか。

どこでもすぐに手を挙げられる話ではなさそうだ。大阪の実験を見守りつつ、工夫を考えるべきだろう。

地域の権限と責任が重くなれば、だれがどうやって教育のことを決めるのかも、重要になる。

橋下知事は、次の段階では市町村教委から市町村長へと権限を移す考えを持っているという。形骸(けいがい)化した教育委員会の現状には問題もあろう。だが、首長が教育のすべてを握るとなると、人事の偏りや過度な政治的介入が起きないか心配だ。

地域の人々の意見を教育のあり方に反映する仕組みを、どう作るのか。その議論も進めたい。

読売新聞 2010年04月21日

教員人事権移譲 弊害生まないルール作りを

公立小中学校の教員の採用や異動、昇任や懲戒といった権限を都道府県教育委員会から市町村教委におろしてほしい。橋下徹・大阪府知事の教員人事権移譲の要請を、文部科学省が受け入れた。

府北部の3市と2町が広域連合を組んで教員人事権の移譲を受ける。府の条例制定が前提だが、実現すれば、市町村の実情や教育方針に沿った人事が市町村の責任で実施できる。地域に根ざした教員のもと、特色ある学校教育が可能になるという。

成果が上がれば、手を挙げる自治体も出て来るのではないか。大阪の試みを注視したい。

教員の人事権は都道府県と政令市の教委だけに認められている。これを義務教育の実施主体である市町村に移すべきだとの提言は、中央教育審議会の答申(2005年)などにも盛られてきた。

「分権改革・地域主権」を掲げる民主党の政策集にも、「自治体の長が責任をもって教育行政を行う」とある。

だが、都道府県も市町村も権限移譲には消極的で、これまで具体的動きはなかった。橋下知事の要請の背景には、低迷する全国学力テストの結果に、市町村の責任を明確にする狙いがあるという。

権限移譲で市町村の責任はますます重くなる。円滑な教員人事や学力向上に結び付く学校教育の実施、地域住民の意見を教育に反映させることも求められよう。

一方で弊害も予想される。都市部に比べ、山間部・離島などへき地を抱える自治体の募集に若い優秀な人材が応じるだろうか。首都圏でも政令市ばかりに人材が集まり、他の地域の教員人事に頭を悩ませている県がある。

そうした例を参考に、広域で人事交流を可能にする制度作りを検討しなければならない。都道府県教委との調整も当然、必要だ。

また、採用される教員の思想などに偏りが出ることはないだろうか。情実人事が行われる懸念も払拭(ふっしょく)できない。

文科省は教員の給与負担についても、県から市町村に移すことを検討している。その財源を国から教育一括交付金の形で直接、市町村へおろす構想のようだ。

その際、市町村によって教員給与に大きな開きが生じるようなら、人材獲得競争に敗れて教員不足に陥るところも出てこよう。

権限の移譲が新たな教育格差を生むようでは本末転倒である。弊害を生まないためのルールづくりが必要だろう。

産経新聞 2010年04月18日

教員人事権移譲 優秀な先生確保なら歓迎

文部科学省が、公立小中学校の教員の人事権を都道府県教育委員会から市町村教委に移すことを認める方針を示した。

大阪府の橋下徹知事の要請を受けたものだが、人事権移譲を含め教育の地方分権には課題が少なくない。今後、他の自治体にも広がる可能性も視野に、文科省には改めて慎重な判断と検討を求めたい。

教育の地方分権では、いじめ問題や一部教職員組合が進める偏向教育などに対し、教委が適切な指導を行えず、公教育への不信を招いた事例も多い。権限移譲には当然、責任が伴い、教委の指導力が問われる。

大阪府の場合は、豊中、池田など北部3市2町が広域連携を組み、府が条例を設けて教員人事権を移譲する。教員採用や異動、配置、懲戒など政令市並みに人事権が与えられることになる。

人事権移譲は、市町村教委が都道府県教委に要望・相談する手間が減り、地域で進めようとする教育目標に沿って教員配置を機動的に行える利点がある。

一方で、山間地域など小規模の教委からは「いい先生が集まらなくなる」などとする反対意見もある。現場教員を指導する指導主事などの人材確保も課題だ。大阪府の事例でも広域連携を組むことで実現の方向となった。

優秀な教員の確保は教育再生の決め手だ。東京都杉並区のように師範塾を設け、独自に教員養成などに取り組む自治体もある。権限移譲で教員の育成、教育内容改善へ競争が進むことは歓迎だが、教委の熱意や指導力によって地域差が広がる可能性はある。

教委の実力が問われる半面、心配なのは教委自体の閉鎖的な体質だ。過去には、教職員組合とのなれ合いから偏向教育を放置し、旧文部省の改善指導を受けた広島県の事例もある。

いじめ問題の放置など教委のことなかれ体質にも批判が起きた。3年前の教育再生3法改正で、教委活性化とともに国の是正権限を明確にしたのもこのためだ。違法な選挙運動や偏向教育が発覚した北海道教職員組合のような問題に教委が毅然(きぜん)とした指導力を発揮できるか注視する必要がある。

また権限移譲には、保護者や地域住民に情報公開を適切に行うことが欠かせない。全国学力テストの市町村別や学校別の成績公表に反対するような教委の体質を改めねば権限は移譲できまい。

山のあなた - 2011/11/19 21:35
日本の政治は腐っている。国も地方も同じだ。教員採用もコネが幅をきかせている。人事権を府から5市町村へ移譲したところで、市町村議員が暗躍するのをやめさせる
ことはできない。一説によると、議員に対する斡旋報酬は200万円とも400万円とも聞く。私は大阪府北摂地域の一教員だが、同僚が「僕は市会議員の〇〇先生には足を向
けて寝られないんや。就職の時お世話になったさかいにな。」と公言している。このバカ教師は「僕は漢字の書けない国語教師で~す。」とのたまっておられ、現在は特
別支援教育のオーソリティーと目されておられる。しかし彼の本質を知る教員方は、心の中で彼を軽蔑しているのだが。ちなみに、本市の教育委員会の人事記録簿にはコ
ネ採用と非コネ採用が分かるように目印がついているそうだ。
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