核安全サミット テロ防止へ対策強化を急げ

朝日新聞 2010年04月15日

核サミット テロの魔手を阻むために

大規模な核戦争が起きる危険は、冷戦期より格段に小さくなった。だが、逆に、核テロの危険は高まった。これを防ぐには国際協力を通じて、核物質の管理、闇市場の摘発などを強めるしかない。

そう考えるオバマ米大統領の呼びかけで、核保安サミットが開かれ、この問題が国際社会の最優先政策のひとつに押し上げられた。冷戦思考から離れて、核にまつわる現在の脅威を減らそうとするオバマ外交がまた一歩、前進したと言えよう。

核テロ防止は米国だけでなく、世界にとって不可欠な対策だ。主要都市で核テロが起きれば、甚大な犠牲が出るばかりではない。グローバル化した世界では金融や貿易、情報通信などが大混乱に陥り、国際経済が重大な危機に直面する。サミットが共同声明で核テロを「国際安全保障への最も挑戦的な脅威」とみなしたのも、そうした安全保障観からだろう。

共同声明は、すべての核物質の管理を4年で徹底すると表明した。行動計画では、原子力施設の警備などを定めた核物質防護条約や、核テロを重大犯罪として摘発・処罰していく核テロ防止条約の運用強化が盛り込まれた。闇市場を封じるための、各国の法律の整備・運用の国際支援でも合意した。

国際社会のどこかに核管理の穴があれば、テロ集団にとって、つけ入る隙(すき)となる。合意事項を実行に移せるかが今後の課題だが、核テロへの脅威感が、多くの開発途上国の間で共有されているわけではない。しかも、核テロ対策に人材、資金をつぎ込むより、さらなる核軍縮の方が先決だとの不満もある。こうした溝をどのように乗り越えていくか。国際社会に課された重い宿題だ。

中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席は「責任ある態度で核保安を重視」すると強調した。核拡散の問題を抱える北朝鮮とイランは、ともに核の闇市場にかかわった疑いがあるが、中国は両国にあまり強い姿勢で臨んでこなかった。今後は両国がからむ闇市場の防止でも欧米などと協議を密にして、有効な手立てを積極的に実行してもらいたい。

サミットには、核不拡散条約(NPT)に背を向けたまま核武装したインド、パキスタン、事実上の核保有とみなされているイスラエルも代表を送った。核保安サミットはNPTの枠外で、新たに核の脅威を減らす国際的枠組みを設けた格好だ。

核不拡散については、未加盟国に対し、非核化したうえでNPTに入るよう求める。あくまでそれが原則である。だが同時に、核保安サミットを活用し、核テロ防止にもやはり核軍縮が欠かせないという根本的な問題への理解を広め、多国間の核軍縮への突破口にもしていくべきだろう。

毎日新聞 2010年04月15日

核テロ防止 日本も確かな役割を

01年の米同時多発テロと核兵器を重ねた恐ろしいイメージが世界を覆っている。核戦争の恐怖から核兵器テロの脅威へと、世界の関心は明確に移った。ワシントンで開かれた核安全保障サミットは、そんな歴史的意義を帯びている。

さまざまな利害関係を持つ47カ国の首脳が一堂に会し、2日間の協議で「核物質の管理を4年以内に徹底する」との声明採択にこぎつけた要因は、第一にオバマ米大統領の指導力、第二に核テロが現実味を増しているためだろう。まずはサミットの成功を祝福したい。

今回のサミットは昨年4月、オバマ大統領がプラハで「核兵器なき世界」の演説をした際、開催を約束していた。不透明な核開発を続けるイラン、既に2回の核実験を行った北朝鮮は招かれなかったが、核拡散防止条約(NPT)に反して核兵器を持ったインド、パキスタンと、保有が確実視されるイスラエルはそれぞれ代表を派遣した。討議内容を来月開催のNPT再検討会議(5年に1度開催)でも生かしてほしい。

米国で同時テロを実行したアルカイダなどの国際テロ組織は、核兵器か核物質を入手しての大規模テロを画策している。そんな災厄を防ぐには、余剰の核物質を保管せず、盗難などを防ぐ国際的な管理強化と情報共有が必要だ。

その第一歩として、米国とロシアが核兵器解体で生じる1万7000発相当のプルトニウム計68トンを原子力発電用に再利用する協定に署名し、メキシコやカナダ、ウクライナなどが高濃縮ウランなどの放棄を表明したのは意義深い。世界各国の高濃縮ウランとプルトニウム保有量は計2000トンを超えるという。共同声明と作業計画を順守して核物質の安全管理を図らねばならない。

鳩山由紀夫首相は、日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)に核の不拡散・安全保持のための施設を年内に設置し、人材育成を通じた核テロ防止の拠点とすることを表明した。効果のほどは即断できないが、唯一の被爆国・日本として、核をめぐる取り組みの先頭に立ちたい。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長と連携しながら、日本が確かな役割を果たすよう期待する。

気になるのは、北朝鮮への対応が明確でないことだ。あと3~5年で核兵器開発が可能ともいわれるイランについては、米中首脳会談などで国連制裁強化への布石が打たれた。次回サミットの開催地を韓国としたのは北朝鮮シフトと思われるが、この国からの核兵器や技術の流出を食い止める強い意欲が感じられない。イランに集中して北朝鮮の脅威を軽視しては将来に禍根を残す。

読売新聞 2010年04月15日

核安全サミット テロ防止へ対策強化を急げ

オバマ米大統領が主宰した核安全サミットで、世界47か国の首脳たちは核物質の管理強化や国際協力推進を盛り込んだ共同声明を採択した。

冷戦後の世界は、世界規模の核戦争の脅威こそ遠のいたものの、核兵器が使われる危険性はむしろ高まっている。

核開発を進める「ならず者国家」や、核入手を狙うアル・カーイダのような国際テロ組織が存在しているからだ。米同時テロ後、核テロは差し迫った現実の脅威と受け止められるようになった。

共同声明は、核テロを「国際安全保障への最も重大な脅威」と位置づけ、各国が責任をもって、保有する核物質や核施設の防護、安全維持、核流出の防止対策を講じていく方針を打ち出した。

だが、共同声明の履行だけでは十分でない。核テロ対策を強化する努力を倍加すべきである。

共同声明が重視しているのが、核兵器の原料となる高濃縮ウランとプルトニウムの管理だ。核兵器用に開発した核分裂性物質だが、核の平和利用の普及に伴い原子炉の燃料としても使われている。

欧州では、管理の甘い旧ソ連の核施設から流出し、摘発された事例が幾つもある。各国は厳正に管理し、余剰分は処分すべきだ。

エネルギーの安全保障や地球温暖化対策の観点から、原子力発電への関心は、開発途上国にも高まっている。途上国側には、核物質の管理強化が、原子力先進国による核燃料の供給規制につながるのではないかとの警戒感もある。

それを払拭(ふっしょく)しつつ、国際連携を深めることが不可欠である。

今回サミットにあわせ米露両国は、核弾頭解体で取り出した余剰プルトニウムを原子炉で燃料として消費する協定に署名した。核大国としての努力の表明だろう。

核燃料のウランは、一般的な原発施設で稼働する軽水炉では低濃縮タイプを使っているが、医療用アイソトープを生産する研究炉の多くは高濃縮タイプを使う。

高濃縮ウランは、軍事転用が容易だとして利用しない傾向が強まっている。各国は低濃縮ウラン利用炉への転換を加速すべきだ。

鳩山首相は、核不拡散や核管理のノウハウ提供と専門家育成を図る目的で、アジアの拠点となる支援センター新設を提唱した。

日本は、ウラン濃縮施設と、使用済み燃料からプルトニウムを分離する再処理施設の両方を持つ。原発建設熱が高まるアジアで、核燃料の安定供給拠点として活用することも重要な検討課題だ。

産経新聞 2010年04月15日

核安全サミット 拡散防止へ国際包囲網を

オバマ米大統領の呼びかけに世界47カ国が参加した核安全保障サミットは、核テロ防止と核物質の安全確保をめざす首脳声明と作業計画を採択して閉幕した。

核を用いたテロを阻止する目的でこれだけの首脳が一堂に結集したのは初めてで、国際社会の強い決意を示した。

オバマ大統領は個別首脳会談などを通じて核やミサイル開発を進めるイラン、北朝鮮への国際包囲網の強化にも力を注ぎ、核テロや不拡散に関する認識の共有や国際協調を高める上でも望ましい成果をあげたといえる。

しかし、国連の対イラン追加制裁問題などでは明確な道筋を描けなかった。日本は研修センター設置などで貢献したものの、存在感は著しく低下した。今月の国連安保理議長として日本は責任ある外交を進める必要がある。

オバマ氏は核テロを「世界の安全にとって最大の脅威の一つ」とし、「4年以内」に核物質の安全管理確立を掲げてきた。開会演説で「リンゴ1個大のプルトニウムで数十万人の市民を殺傷できる。アルカーイダなどの組織が入手すればためらわずに使うだろう」と訴えたのもそのためだ。

世界の高濃縮ウランとプルトニウムの備蓄量は「軍事、民生用を合わせて2千トン以上」とされ、核物質の盗難、紛失、違法取引などの報告も次第に増えている。

首脳声明や作業計画で、核テロ防止国際条約などの順守促進、核物質の検知・鑑識技術の向上、情報共有などを申し合わせたのは当然だ。会期中にウクライナ、メキシコが高濃縮ウランの放棄を宣言し、米露がプルトニウム民生転換協定に調印したことも前向きの流れを加えたといっていい。

だが、核テロと並ぶ重要課題である核拡散防止条約(NPT)体制の強化では、課題が残された。とりわけイランへの追加制裁問題で、米国は中露の協調姿勢を引き出したとはいえ、本音は中露ともに制裁決議には消極的だ。

2年後の次回サミット開催国が韓国となったのは、国際社会の要請を無視して核開発を進める北朝鮮の行動を容認しない強い意思表示でもある。北への国際圧力と包囲網をさらに高めていく意味からも決定を歓迎したい。

安保理では今後、イランや中国の説得などが重要課題だ。鳩山由紀夫首相には米国が頼れる同盟国として力を発揮してほしい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/304/