年初以来、きしみ続けていた米中両国関係を、ひとまず修復したと言えるのだろう。
オバマ米大統領と胡錦濤・中国国家主席の両首脳が、5か月ぶりに、ワシントンで会談した。
相互依存関係が強まり、世界の景気回復や核不拡散の問題など両国が連携すべき課題は数多い。台湾やチベットなど2国間問題の立場の違いを超え、国際的な課題の解決では、米中が協調していくことを再確認した形だ。
焦点だった人民元の切り上げ問題では、対立の表面化を回避しようとする動きがうかがえた。
対ドルの人民元相場は、2008年夏から1ドル=6・8元程度で動いていない。中国が輸出産業を保護しようと、市場介入で元の上昇を抑制しているからだ。
これに対し、今秋に中間選挙を控えた米議会では、元安が米国の産業界に打撃を与え、失業問題を悪化させているとして、反発が根強い。中国製品に報復関税をかける制裁法案も浮上しつつある。
首脳会談は表向きは対決ムードを避けた。だが、大統領が人民元切り上げを求めたのに対して、胡主席は「外圧の中では改革を進められない」と牽制し、自主的に判断する考えを示した。
米政府は、15日に予定していた為替報告書の発表を延期し、中国を「為替操作国」に名指しすることを先送りしたばかりだ。
大統領は輸出戦略を打ち出し、雇用の拡大を重視しているが、当面は対中圧力を和らげ、元切り上げを待つ構えだろう。
しかし、中国がいつ改革に踏み切るかは不透明だ。早期に動かなければ、米国内の対中強硬論が勢いを増し、対立が先鋭化しかねない。中国は決断を急ぐべきだ。
中国経済は金融危機を克服し、2けた成長を回復したが、過剰マネーによる不動産価格の高騰など元安に伴う副作用も目立つ。
ここで過度な市場介入をやめて元高を容認し、バブルを退治することが中国にも利益となろう。
イランの核開発疑惑では、国連安全保障理事会での追加制裁決議の早期採択を目指す米国に対し、胡主席は、中国も国際的な核拡散防止体制を維持する義務があるとして、協力する姿勢を示した。
中国は原油の輸入先や投資先として、イランとの関係を深めているだけに、米側に一定の歩み寄りを示したと言える。
米中両国は自国の利益だけにとらわれず、国際的な課題解決に冷静に取り組んでもらいたい。
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