高速実質値上げ 詐欺も同然の公約違反だ

朝日新聞 2010年04月14日

高速値上げ 造るためでは情けない

高速道路をつくる財源にするなら、この値上げは認められない。

前原誠司国土交通相が先週発表した高速道路の新料金制度は、鳩山政権の政策の迷走ぶりをあらわにした。

新料金では、現行の「休日上限1千円」を廃止し、車種に応じて1千~1万円の上限を設ける。平日に長い距離を利用する人にとっては大幅な値下げだが、休日に車で遠出する家族連れには値上げとなる。

夜間や通勤時間帯の各種割引も廃止されるので、日常的に近距離を走る利用者にとっても負担が増す。全体としては、値上げ改定だ。

前原氏は、改定で現在の複雑な割引制度がわかりやすくなり、交通の集中による渋滞も緩和できるとしている。 だが、改定は本当は何のためか。

地球温暖化対策や、利用者の負担を増やして税金の投入額を減らすためというならまだ分かる。だがそうではない。実質値上げ分は高速道路の建設費に回される。それが狙いだと見られても仕方ないのだ。

高速道路会社には、将来の料金割引のための財源として投入された税金が約2.5兆円残っている。新料金を導入すれば、このうち約1.4兆円を道路整備に回せるようになる。対象は、昨秋の鳩山政権の発足に伴い凍結した東京外環道や地方路線の4車線化拡幅工事などだ。

建設が必要な道路なら、堂々と政府予算案に盛り込めばいい。国会の監視の目をくらます不透明なやり方では、国民の理解など得られない。

採算や経済効果も怪しい高速道路がむやみに造られないようにと、この10年、道路行政の改革が進められてきた。今回の新料金制度はその流れを巻き戻すものではないか。

「コンクリートから人へ」の看板を掲げ、社会保障財源の確保に汗をかくべき民主党政権が、参院選への思惑から高速道路財源を優先的に確保しようとしているように見えるのは、なんとも情けない。

割引のための財源が余れば国庫に戻し、子育てや医療、介護、教育など優先度の高い政策にあてるのが筋だ。

「値上げ」の一方で、鳩山政権は「高速道路の原則無料化」の旗も降ろしていない。37路線では無料化の「社会実験」に取り組む。この矛盾をどう説明するというのか。

新料金制度には、JRやフェリーなど公共交通への配慮やエコカー普及の後押しも一部にうかがえる。だが、しょせんはつぎはぎ細工だ。

温暖化防止と逆行する無料化の公約は修正し、環境や経済効率を総合的に勘案して料金制度を作るべきだ。

低炭素時代の高速道路のあり方について、どんな未来図を描くのか。鳩山由紀夫首相は明確に語る責任がある。

産経新聞 2010年04月11日

高速実質値上げ 詐欺も同然の公約違反だ

国土交通省は6月中の導入を目指す高速道路の新たな料金体系を発表したが、この内容だと鳩山政権は、公約違反どころか、詐欺と指弾されても反論はできまい。

車種別に一定の走行距離を超えれば料金を据え置く「上限制」が採用された結果、近距離中心の利用者や、もっぱら週末に車で遠出を楽しむサンデードライバーなどには、むしろ実質的値上げになるからだ。

新制度では、上限料金は平日・休日とも普通車で2千円、中・大型車は5千円となる。このため、平日に長距離を走る利用者には値下げの恩恵が大きいものの、新料金の実施にあわせて「休日上限1千円」などの現行割引は、一部を除き原則として廃止される。

そもそも民主党が昨年の衆院選で掲げた政権公約は、上限制ではなく原則無料化だったはずだ。ところが今回無料化されるのは、利用が比較的少ない地方の37路線50区間にすぎない。総距離でも全体の2割どまりで、財源不足から来年度以降の拡大にもめどすら立たないのが実情である。

無料化の目的も曖昧(あいまい)になりかけている。当初は物流の活発化を通じて内需拡大の切り札にするつもりが、逆に「渋滞を深刻化させるだけで環境面でも逆効果」という批判も浴びた。鉄道やフェリーなど競合業界からの反発も強い。

新制度実施の原資には麻生前政権時代に確保した現行割引財源の残り約2・6兆円があてられる。ところが、半分以上の約1・4兆円については、道路建設費に転用するというから開いた口がふさがらない。政府は既に関連法の改正案も今国会に提出している。

これは「高速道路を造るために国費を投入しない」(馬淵澄夫国交副大臣)としてきた政府方針にも明らかに矛盾している。

新制度は自動料金収受システム(ETC)の搭載メリットについても利用者を混乱させそうだ。

現在定額制の首都、阪神両高速道路は年末にも普通車で500~900円の走行距離別料金に移行する。

これに伴い、ETC車以外は最初の料金所で上限額を支払う必要がある。これに対し、上限料金制の高速道路ではETC搭載の有無は問われなくなるからだ。

国民との約束を、わずか半年余りであっさりとひっくり返して恥じない鳩山政権の運営姿勢は、あまりに無定見で危うい。

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