今夏の竣工を目指してきた日本原燃の「再処理工場」(青森県六ヶ所村)の工期が、1年以上遅れることになった。
工期の見直しは、1989年の事業指定申請以降17回目となる。試運転の最終段階で深刻な技術トラブルに直面したことが理由という。
問題は、相当にやっかいなトラブルということだ。事態を悪化させた原燃の責任は大きい。一義的には原燃が抜本的な対策を講じるべきだが、その場しのぎの対応では解決できまい。産官学が力を結集して当たるべきだ。
再処理工場は、日本がエネルギー政策の柱に掲げる「核燃料サイクル」の中核施設だ。原子力発電所の使用済み核燃料から、ウランとプルトニウムを回収する。
回収したプルトニウムなどを核燃料として使うことで、ウラン資源を有効活用できる。さらに放射性廃棄物の量も減らせる。
原発は、エネルギーの安定供給に重要な役割を担う。しかも、排出削減が急務の二酸化炭素をほとんど出さない。核燃料サイクル技術が確立すれば、原発を長期に安定して運転する基盤が整う。
だが、現実は、今回を含めた工程の遅れで、六ヶ所村の再処理工場で処理するはずだった使用済み核燃料が、国内各地の原発に滞る事態になっている。
再処理工場が動かないと、2~3年のうちに、使用済み核燃料の保管場所がなくなって停止に追い込まれる原発が出かねない。
今回のトラブルは、プルトニウムなどを回収した後に残る放射性廃液をガラスと混ぜて固化する工程で起きた。ガラスと廃液を混ぜる炉が詰まるなどの不調が試運転で続いた。
これを解決しようと試験を繰り返すうちに、炉の一部が壊れたり密閉施設内ながら廃液が漏れたりした。漏れた廃液が、さらに施設内の装置を腐食した。
原燃は、この炉の改修や、施設の洗浄作業を計画している。しかし、施設内の装置の故障が続発して作業は難航している。
施設の大がかりな改修が必要との指摘も出ている。そうなれば資金調達、地元了解など、原燃だけでは解決できない事態となる。
核燃料サイクル政策は、これまで政府が電気事業者とともに推進してきた。新たに政権を担当する民主党は、この政策を継承すると公約に明記している。
実態をよく把握したうえで、再処理工場の稼働に向けて、取り組みを強めてもらいたい。
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