’09衆院選 政治改革 己に甘すぎないか

朝日新聞 2009年08月11日

09総選挙・子育て支援 未来への投資を競え

子育て対策が、やっと政治の最重要課題に躍り出た。

衆院選マニフェストで、民主党が中学卒業まで1人月額2万6千円を出す「子ども手当」や公立高校無償化をうたい、自民党は子育てに配慮した低所得者向けの給付や税額控除、幼児教育の無償化を打ち出した。

少子化に歯止めをかける環境を整えることは、明日の日本にとって待ったなしだ。未来を担う世代への投資に本腰を入れる姿勢を各政党が明確にしたことを評価したい。

日本の社会保障給付は、高齢者対策に偏ってきた。いまも7割はお年寄りの年金や医療・介護に使われ、子どもに対してはわずか4%だ。

民主党案の子ども手当に必要な費用は年5.3兆円。現在子ども対策に充てられている予算は、政府と自治体を合わせて約3兆5千億円だから、一挙にそれ以上の大金を投じようという大胆な提案である。

自民党案についても、早急に具体的な内容を知りたいところだ。

厚生労働省の調査によれば、未婚男女の9割が結婚したいと考え、夫婦は平均2人の子を持ちたいと願っている。だが、その希望をかなえられないのが出生率1.37の日本だ。

支援策の充実で日本の出生率を回復に向かわせることが期待される。

それには、現金給付に加え、子育てしやすい社会的環境を整えることも重要だ。とくに保育施設の充実を急がなければならない。

認可施設に申し込んだが入れない待機児童は約4万人。自民、民主とも公約で「待機児童解消」を掲げているが、具体的にどう取り組むのか。

厚労省の試算によると、働きたい女性の希望に応えるには、乳幼児保育100万人分、小学1~3年の放課後保育145万人分の対策が新たに必要で、保育園の運営費や育児休業する人への補償などを含め年1.5兆~2.4兆円の財源が要るという。

フランスでは、90年代半ばに1.66だった出生率が06年には2を超えた。その背景には、現金給付に加えて保育サービスの拡充があった。

いずれにせよ、子育て支援には大幅な財政支出の増加が伴う。財源難の中でも、最優先に取り組まなければいけない課題である。自民にせよ民主にせよ、やがて本格化する財源論議への備えが問われる。

少子化対策には政府や自治体の措置だけでなく、民間企業で働きながら子育てをしやすい職場環境をつくっていくことも大切だ。

そうした方向へ社会を導くために、政治が何をしなければならないか。広い視野から「子育て支援」にどう取り組むのか、選挙戦を通じてとくと聞いてみたい。

毎日新聞 2009年08月14日

’09衆院選 政治改革 己に甘すぎないか

今回の総選挙でも「政治改革」は争点の一つになっている。各党のマニフェストでも、公務員改革などは積極的な半面、政治家に課せられるテーマは歯切れが悪い。特に自民党は具体策に欠ける傾向が目立つ。

世襲議員の制限は自民、民主、公明党などが具体策を提示している。いずれも、前職議員が引退などした場合、その配偶者および3親等以内の親族が同一選挙区内から立候補しても、「公認または推薦しない」方針を明示している。問題は実施時期で、民主党は09年からの適用を打ち出したが、世襲議員が多い自民党は「次回から」と、延引している。

政治資金問題で焦点になっている企業・団体の献金、パーティー券購入を民主党は3年後に全面禁止することを明示した。相次ぐ党首脳の献金不正問題を抱えているとはいえ、この種の方針転換は歓迎したい。公明党は政治資金規正法の制裁を強化し、不正議員には公民権停止を科すよう求めている。一案だ。

一方、自民党は、政治資金の透明性を確保する措置を「1年以内に結論を得る」にとどめ、具体策の提示を避けている。政党助成金として税金が投入されて以来、政治資金への国民の視線は一段と厳しくなっている。もっと留意すべきだ。

政治の責任を大いに指摘したいのは国会議員の定数削減と1票の格差是正問題だ。自民党は「衆院を次回から1割以上、10年後には衆参両院で3割以上の削減を目指す」と、うたう。民主党は衆院の比例代表議席を80減らし、より小選挙区重視の選挙制度に変える方針を打ち出している。1票の格差を抜本的に是正しようと、47都道府県に1議席ずつまず配分する「基数配分」の廃止を提唱している。

これに対し、公明党は新しい中選挙区を導入し、定数の大幅削減を行う方針を掲げ、共産党は衆院の比例代表の削減は「間違った政治」と指弾。社民党は「比例代表中心の制度への改革」と主張している。

選挙制度の手直しは各党とも党勢に重大な影響を与える。党利党略に走りやすいが、少数意見を極力取り入れるか、政権交代を常に意識できる2大政党制を促進させるかは、「国のあり方」そのものだ。大いに論議を深めてほしい。

早々に着手しなくてはならないのは、1票の格差是正だ。衆院は2・3倍に、参院にいたっては4・9倍にも達している。衆院は10年に1度の国勢調査の結果を踏まえ2倍以内に是正されるが、参院は是正策を設けていない。国民の基本的権利に、これほどの格差は許されない。

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