平沼・与謝野新党 日本没落の危機感共有を

毎日新聞 2010年04月11日

平沼・与謝野新党 「立ち上がった先」を語れ

メッセージがどれだけ国民に伝わっただろう。平沼赳夫元経済産業相や与謝野馨元財務相らによる新党「たちあがれ日本」が10日旗揚げした。「打倒民主党」のスローガンと共に「自主憲法制定」や経済・財政再建を基本政策に掲げた。

参院選に向け、山田宏東京都杉並区長ら首長やその経験者による新党も近く発足する予定で民主、自民両党と異なる新勢力結集を探る動きがさかんだ。新党参入で政界に緊張感が生まれ政策論争が活発化するのは歓迎だが、乱立が逆に有権者の幻滅を招くことになってはならない。

「たちあがれ」に参加した代表の平沼氏ら5議員は、いずれも元は自民党議員だ。中堅・若手議員が参加を見送ったため平均年齢は約70歳となり、新鮮ではつらつとしたイメージを与えたとは言い難い。

それ以上にすっきりした印象を抱けないのは、結党の動機が今ひとつ不明確な点にある。代表の平沼氏は10日の会見で参院選後の民主党との連携は「まったくない」と否定したが、民主党との対決姿勢を強調するほど、離党劇で最大の打撃を被ったのが自民党だという現実とのギャップがさらに際だってしまう。

新党結成を後押ししたのは発起人に名を連ねた石原慎太郎東京都知事だ。石原氏は最近、福田康夫内閣時代に一時浮上した民主、自民両党の大連立構想に再三言及し、民主党の小沢一郎幹事長(当時代表)の関与を評価している。小沢氏と与謝野氏は関係が近いことでも知られる。

新党は政界再編の橋渡し役を目指すというが、具体的にどんな姿を描いているのか。大連立構想の再現をにらみ、その接着剤となることも狙っているのか。国民に率直な説明が必要である。

政策についても、発表文書では「税制抜本改革」などとするだけで消費税率の引き上げを明確には記さなかった。今後の社会保障や深刻な財政危機をめぐる論議を政界全体で活発化させたいのなら、もっと正面から提起してもよかった。

「自主憲法制定」や国家観に関してはさらに丁寧な説明を求めたい。自民党はすでに新憲法草案をまとめているが、どんな違いを意識して改憲論議を進めるのか。集団的自衛権の行使や歴史認識をはじめとする基本的な問題でも見解を明確に示さなければならない。平沼氏が反対、与謝野氏が推進と対照的な立場だった郵政民営化についても同様だ。

鳩山内閣や自民党の迷走をよそに各種調査で「みんなの党」の支持率上昇が目立つ。首長新党も含めた新党の参入は注目に値するが、構想や理念がはっきりしないまま乱立すると有権者は逆に戸惑う。

産経新聞 2010年04月11日

平沼・与謝野新党 日本没落の危機感共有を

日本が没落する姿を黙って見てはいられない−。こんな危機感を持った衆参両院の国会議員5人が新党「たちあがれ日本」を旗揚げした。

内政と外交を迷走させ、国益を損なっている鳩山政権と真っ向から対決しようという新たな政治グループが誕生したことの意味は大きい。

メンバーがいずれも高齢であることを理由に揶揄(やゆ)する向きもあるが、現在の政治の閉塞(へいそく)状況打破に期待したい。「日本復活」に政治生命をかけるという決断と心意気を無駄にしてはならない。

平沼赳夫元経済産業相と自民党を離党した与謝野馨元財務相らは、参院選で民主党の過半数確保を阻止すると表明した。

だが、これは新党だけで実現できる課題ではない。自民党や民主党に所属する議員が今の政治の流れを変えようと、どこまで真剣に考え、行動するかである。

いまだに国民の期待に応えていない自民党は、戦う野党の機能を回復しなければならない。

一方、民主党は「政治とカネ」の問題に対する自浄能力を喪失している。背景には、小沢一郎幹事長を中心とした「独裁体制」が存在する。それを許しているのは、党内で異論を唱える議員があまりにも少ないからだ。

二大政党が十分に機能しているのか。新党が民主、自民両党に課題を突きつけたといえる。

代表に就いた平沼氏は、民主党政権がマニフェスト(政権公約)に明記していなかった永住外国人への地方参政権付与や選択的夫婦別姓の導入などの動きを厳しく批判し、「この国を駄目にしてしまう」との危機感を強調した。

党綱領では、自主憲法制定を明記したほか、財政危機の克服や財源に裏打ちされた社会保障制度などを挙げた。いずれも党派を超えて政治が取り組むべき課題といえるものだ。

また、「選挙のための政治を峻拒(しゅんきょ)する」と利益誘導政治を厳しく批判した。民主党政権が露骨な利益誘導を予算配分を通じて行っている実態があるためだ。

このほか、参院選に向けて山田宏東京都杉並区長や中田宏前横浜市長ら「改革派首長」による新党結成も今週に予定されている。

みんなの党も含めて、政治の現状を変えようという勢力の結集がカギだ。選挙協力などの連携を軸に、平沼氏らベテランの手腕も問われる。

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