米国のオバマ大統領とロシアのメドベージェフ大統領が、チェコのプラハで、新たな戦略兵器削減条約(新START)に署名した。
世界は、新たな核保有や核テロなどの脅威に直面している。その中で、米露が核削減を通じて戦略的な安定を図ることは、世界の安全に寄与するものだ。
オバマ大統領は1年前、この地で、「核兵器のない世界」実現に向けて具体的な措置をとると公約していた。新条約は、「核兵器の役割縮小」をうたう新たな米核戦略指針の発表と並び、その最初の成果である。
新条約の発効から7年以内に、米露両国は、戦略核弾頭の配備数を各1550発以下に削減する。また長距離弾道ミサイルや長距離爆撃機など核兵器の運搬手段も、各800基以下に制限する。
米露両国は新条約を速やかに発効させ、着実に履行すべきだ。
それでもなお、世界には約2万発の核兵器が残る。その9割以上を保有する米露には、さらに大胆に核を削減する責任がある。
配備から外して備蓄に回した戦略核弾頭や、巡航ミサイルなどに搭載する戦術核は、まだ手つかずだ。今後、こうした核兵器の削減も実行しなければならない。
米露の核軍縮の一方で、中国が核近代化に走るなら、核の脅威は高まる恐れがある。核軍備の拡張を進める中国も取り込んだ核軍縮が不可欠となる。
オバマ政権は、核戦略指針で、中国の核戦略の「透明性の欠如」に強い懸念を表明し、高官級対話を提唱した。米中は、核をめぐる対話を進めるときだ。
来月、ニューヨークで開かれる核拡散防止条約(NPT)の再検討会議は、核保有国と非核国が一致した行動を取れるかが焦点となる。核拡散防止は、非核国の協力なしには不可能だ。
そのためにも、米露だけでなく、中英仏を含めすべての核保有国が核軍縮に取り組むことが肝要だ。NPTの枠外で事実上の核保有国となったインドやパキスタンなども引き込む必要があろう。
核実験全面禁止条約(CTBT)の早期発効や、核兵器の原料となるプルトニウムや高濃縮ウランの生産を禁じるカットオフ条約の早期交渉開始など、取り組むべき重要課題は山積している。
まず、米国が、米露新条約やCTBTを早期に批准して、範を垂れることだ。上院で3分の2の支持獲得は至難の業だが、オバマ大統領は全力を挙げてほしい。
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