平成大合併終了 歪みに配慮し行革を進めよ

毎日新聞 2010年04月06日

「平成の合併」終了 権限移譲の約束を守れ

単なるカネ減らしに終わらせてはならない。政府が主導し10年以上にわたり市町村の合併を促した「平成の大合併」が3月で幕を閉じた。99年当時3232あった市町村数は町村を中心に1727とほぼ半減し、自治の基盤は大きく変化した。

合併をめぐっては効率化の一方で旧自治体間の格差拡大などひずみが指摘されており、国から地方への権限、財源移譲が進まないままでは「何のための合併だったのか」ということになりかねない。現行の「都道府県-市町村」体制のあり方も含め、自治体の将来像についても与野党は議論を続けるべきである。

日本の市町村数は7万超あった明治以来、これで3度の「大合併」の波をくぐった。今回は分権時代に向けた自治の受け皿としての基盤強化と、財政難に伴う地方行革の双方の要請からだったが、実際に多くの町村を合併に駆り立てたのは、後者の財政事情である。大合併の結果「村」の無い県も珍しくない。地方議員の数が2万人以上減ったことは、自民党の地方組織を直撃したとも指摘される。日本の政治土壌の変化にもたらした影響は小さくあるまい。

分権社会を目指す一里塚として、市町村の基盤強化は避けられない。それだけに、激しかった合併と裏腹に、国から地方への権限、財源移譲が遅々として進まぬ現状には失望を禁じ得ない。

鳩山内閣は「地域主権」の担い手として都道府県よりも基礎自治体(市町村)重視を掲げる。にもかかわらず、都道府県から市町村に権限を移譲する作業は停滞しており、政府の地方分権改革推進委員会の勧告の25%しか進んでいない。これでは「だまし」と言われても仕方がない。住民自らが地域のあり方を決められる環境を整えることが大切だ。

また、合併した多くの地域で住民は行政サービスの低下を感じており、特に本庁舎が置かれていない旧町村区域に不満が強い。合併前の旧町村などを単位とする「地域自治区」が制度化されたが、あまり普及していないようだ。市町村より小さな単位の地域共同体が身近な自治を実現できるよう、工夫が必要だ。

大合併は一段落したが、県から市町村への分権が進めば、都道府県のあり方と役割は将来的に見直さざるを得まい。都道府県をブロック別に再編する「道州制」構想について民主党は基本的に慎重な立場だ。一方で都道府県や道州は置かず市町村を「300市」に再編するという小沢一郎・民主党幹事長の持論も凍結されたままである。では、どんな国家像を描いているのか。「地域主権」を語る以上、政府はその展望を国民に示さなければならない。

読売新聞 2010年04月05日

平成大合併終了 歪みに配慮し行革を進めよ

功罪両面が指摘される「平成の大合併」が3月末で終了した。

人口減・少子高齢化社会や地方分権に備えるという市町村合併の方向性は正しい。一部で顕在化した(ゆが)みに手当てをしつつ、さらなる合併を追求すべきだ。

1999年3月に3232あった市町村は、11年間で1727となり、ほぼ半減した。

市は670から786に増加した。町は1994から757に急減し、市を下回った。村は568から184に減ったが、それでも一定数が残されたとも言える。

市町村の減少率は、都道府県ごとのばらつきが大きい。長崎、広島など4県が70%を超えたのに対し、大都市部の大阪、東京はわずか2%台だった。面積が広い北海道も15%台にとどまった。

少子高齢化が進む中で、住民に身近な行政機能を確保するには、市町村の行財政基盤を高めることが不可欠だ。国から都道府県、さらに市町村へ地方分権を進めるにも、同様のことが言えよう。

行政の効率化や経費削減の面でも、合併のメリットは大きい。首長ら三役と議員が2万1000人減り、年1200億円の人件費が節約された。2016年度には、年1兆8000億円の節減効果を生むとの試算もある。

今回、合併を検討しながら、首長や議会の相性の悪さなどから交渉が不調に終わった例も少なくない。今後も、各市町村が自主的に合併する選択肢は残しておくべきだ。国と都道府県も、積極的に側面支援してもらいたい。

一方で、合併の結果、「中心部から外れた旧市町村がすたれた」「住民の声が届きにくくなった」との不満があるのも事実だ。

旧市町村に開設した市町村役場の出先機関の機能や出先機関の長の権限を強化するなど、きめ細かな対応が求められよう。

住民サービスの低下や地域の伝統・文化の衰退を懸念する声もある。だが、これらは、合併よりも、不況や、三位一体改革の地方交付税削減に起因する面が多い。

合併による効率化は、すぐに目に見えるとは限らない。中長期的な行政改革を通じて、粘り強く実現を目指す必要がある。

注目すべきは、合併の副次効果として、住民が地元の行政に目を向け、地方自治への参加意識を持ち始めたことだ。新たな地方自治組織を作り、イベントや町づくりに取り組む例も多数ある。

こうした動きを、各市町村が支援し、連携することが重要だ。

仁枝 俊昭 - 2010/08/03 14:47
総務庁主導の交付税削減目標の町村合併は趣旨が違う。経常収支比率60%台を掲げた合併ならわかるが、ただ単に合併による人員削減だけではダメで、議員数法定の最高人数でなく、議員給与、職員の役職加算手当て削減、財政状況に見合った給与
体系が必要だ。将来性負担比率、財政力指数等は当然加味されるべきだ。
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