日銀短観改善 攻めの経営の出番だ

朝日新聞 2010年04月02日

日銀短観 投資と雇用で一歩前へ

日本経済の足元を照らす日差しは着実に明るさを増してきた。多くの人がそれを実感できるよう、企業は設備投資と雇用の拡大に向けて踏み出すべき時を迎えつつある。

そんな現状を、きのう発表された日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)が映し出した。

大企業の製造業の景況感は4四半期連続で改善している。中国などアジア向けを中心とする輸出の好調を反映した。円相場の安定と株価の好調に加え、エコポイントなど個人消費を刺激する政策の効果も続いている。大企業の非製造業や、中堅・中小企業の景況感もよくなってきた。

半面、自律回復力を占う設備投資と雇用の動きは鈍い。大企業製造業の2010年度の設備投資計画は、記録的な落ち込みだった09年度とほぼ横ばい。下げ止まったものの、反転には至っていない。雇用は2月の統計で失業率がわずかに改善したが、就業者数の増加につながっていない。

それでも短観では、企業が抱える設備と雇用の過剰感が和らいでいることが明白になった。鉱工業生産は世界金融危機前の8割強の水準まで回復してきた。深手を負った輸出産業では、先進国向けの高級品を生産する設備が余っているが、新興国向けの安価な製品をつくる設備は足りていない。

景気の二番底が避けられ、予期せぬ異変がない限り、先行きも大丈夫そうだ。企業は過剰な警戒を解き、アジアの成長と連動しながら前向き姿勢に転じる時ではないか。

このところ明らかになった主要企業のトップ人事を見ても、昨年の守り一辺倒から打って変わって、国際派の起用や世代交代で「攻め」に出ようという状況判断を感じる。経営の新陳代謝を加速させ、世界経済の構造変化に即した新ビジョンを固め、設備や雇用を拡大させる前向きな循環を早く取り戻して欲しい。

一方で、話題を呼んだ大型再編の交渉が相次いで破談になっている。ビール、自動車、百貨店など業界の状況はさまざまであり、危機感に駆られた統合の判断がベストだったとは限らない。だが、一連の頓挫が景気一服の影響だとすれば気がかりだ。

回復へ向かう時期にこそ事業変革の苦しみが生きる。挑戦する意欲がいよいよ大事になるのではないか。

政府も、民間経済を後押しする政策の手綱を緩めてはいけない。地球温暖化防止に役立つグリーン経済への転換、福祉や教育を担う産業の育成、アジアとの融合を図る通商戦略の具体化など、課題は山積している。

鳩山政権には、新成長戦略の全体像や中期財政フレームを説得力あるものに仕上げ、国民が抱く経済運営能力への不安を一掃するよう求めたい。

毎日新聞 2010年04月02日

日銀短観改善 攻めの経営の出番だ

日銀が3カ月に1度実施している短観の3月調査で、企業の景況感が一段と改善した。景気が「よい」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた業況判断指数は、大企業・製造業がマイナス14となり、昨年12月の前回調査(マイナス25)から11ポイントの大幅上昇である。

昨年の3月短観も、同じ新年度初日の4月1日に発表されたが、内容は惨たんたるものだった。大企業・製造業の業況判断指数は「過去最悪」のマイナス58、自動車産業にいたってはマイナス92まで落ち込んだ。

そこから4期連続の改善である。自動車は今回、マイナス2まで上昇した。もちろん、回復が遅れている業種もある。中小企業はまだ厳しい。大企業・製造業の改善も、輸出先であるアジアの成長に助けられている面が大きい。大幅改善とはいえ業況判断指数はまだマイナスの領域である。それでも1年で、ここまで回復した。企業はそろそろ自信を持って攻めの経営に踏み出していい。

短観の中で特に改善が著しいのが新年度の収益見通しである。経常利益は製造業を中心に軒並み前年度比2けたの増加を見込んでいる。問題はこの利益を企業がどう使っていくかだが、気になる傾向がある。リーマン・ショック以降、企業が蓄えている現金や預金が積み上がっているのだ。総額で210兆円規模に膨らんだ。これを消費につながる賃金に還元したり、新たな投資に回したりしなければ、景気はよくならない。ところが企業は、賃上げにも設備投資にも極めて慎重なままである。

確かに設備などの余剰感は残っているだろうが、設備投資といっても既存製品の増産につながるものばかりではあるまい。環境やエネルギー、娯楽・文化関連産業などで、これまでになかった製品や新サービスを生み出す余地は十分あるだろう。成長するための提携先も国内企業に限らない。いつまでもデフレを理由に縮こまっていては韓国や中国などの企業にチャンスを奪われるだけだ。

政界には政府や日銀の追加刺激策を求める声もある。しかし、膨大な借金を抱えた財政に支出を増やす余力は乏しい。企業の資金不足が景気の足かせになっているわけではないのだから、日銀に追加緩和を求めるのもほとんど無意味だ。政策頼みの回復には限界がある。

1日、会社更生手続き中の日本航空が開いた入社式で、稲盛和夫会長はこうあいさつした。「復活の成否は『必ず再生する』という不撓(ふとう)不屈の一心が持てるか否かだ」

企業一社一社の成長が国の経済成長を支える。「必ず成長する」と経営者や社員が強く思うことから、新しい発想や成長戦略は始まる。

読売新聞 2010年04月02日

日銀短観改善 本格回復への詰めを誤るな

企業の景況感は着実に改善を続け、景気腰折れの懸念は薄らいできたといえよう。

しかし、デフレ克服や雇用改善など課題は多い。政府・日銀は景気の本格回復への詰めを誤ってはならない。

日銀が1日発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景気認識を示す業況判断指数が、大企業の製造業でマイナス14と、前回の12月調査より11ポイント改善した。4期連続のことで、改善幅は前回よりも拡大した。

アジアなどへの輸出増で製造業が先に回復し、この影響で非製造業にも明るさが広がってきた。減収減益だった企業業績も今年度は増収増益に転じる見通しだ。

だが、指数の水準はプラスにはなお遠く、企業心理は冷え込んでいる。決して楽観はできない。

気がかりなのは、内需主導の自律回復に欠かせぬ設備投資が振るわないことだ。大企業・製造業の設備投資は、2009年度に30%減と過去最大の落ち込みとなり、10年度計画もマイナスである。

省エネや環境をはじめ、成長が期待できる分野で、民間投資を促すべきだ。政府は、投資減税など、有望な産業の育成策について具体化を急いでもらいたい。

一方、政府の景気対策の効果にかげりが見える。自動車業界の業況判断は今回大きく上昇したが、先行きは低下を見込む。メーカーはエコカー減税などの恩恵が薄れると見ているようだ。

さらに、公共事業に依存する中堅、中小の建設業は今後、大幅な業況悪化を予想する。鳩山政権の公共事業2割カットの影響だろうか。「コンクリートから人へ」の政策が、景気に水を差さないか点検しなければならない。

デフレの影響も大きい。短観の価格判断指数を見ると、この先、販売価格は上がらないのに、仕入れ価格は上昇すると見込む企業が多いことがわかる。

安売り競争の一方で、資源が高騰して、企業の採算が大きく悪化する恐れがある。国際市況の動向などに注意が必要である。

社員が多すぎると感じる企業が多く、雇用は増えていない。労働者の給与も減り続けている。

02年からの戦後最長の景気拡大では、企業利益が家計に回らず、消費など内需は低迷した。その後の輸出急減で、経済が打撃を受けた教訓に学ぶべきだ。

得意の輸出でしっかり外需を稼ぎ、どのように内需振興につなげるか。官民を挙げて、成長戦略に知恵を絞らねばならない。

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