党首討論 真正面から懸案を論じ合え

毎日新聞 2010年04月01日

党首討論 争点をより明確に示せ

両党首、苦境にあっての論戦である。鳩山由紀夫首相と自民党の谷垣禎一総裁らによる2度目の党首討論が行われた。焦点の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について首相は5月末までに地元了解を取り付け、新たな政府案を決着させることを約束した。

初回の討論が迫力不足として党内の強い批判を招いた谷垣氏だが、普天間問題にほぼテーマを絞り込んだこともあり、それなりに聞き応えがあった。夏の参院選に向け2大政党が混乱するばかりでは、政治への国民の失望を深めるばかりだ。両党首は討論を逃げずに対立点の明確化に努めなければならない。

首相、谷垣氏とも足元がぐらつく中での討論だった。首相は郵政改革見直しをめぐり深刻な閣内対立を招き、亀井静香金融・郵政担当相案の事実上の丸のみで、辛くも空中分解を免れた。一方で、谷垣氏にもきついプレッシャーがかけられた。2月の初討論を境に自民党内から迫力不足との批判が噴出し、反転攻勢どころか逆に党掌握に不安を来す波乱要因となったためだ。

そんな危機感もあってか、特に普天間問題をめぐる応酬は緊張感があった。首相が一時、政府案を3月中に決めると公言した点を谷垣氏は突いたが、首相は「腹案」をまとめており、公表できないと述べるにとどめた。

谷垣氏はさらに新たな政府案について「(辺野古に移設する従来計画が想定する)14年までに普天間の危険を軽減するのか」と迫り、首相はこの点は約束した。また、首相がかねて5月末を期限としている意味合いについて単に政府方針だけでなく、移転先や米側の了解も含むのかを谷垣氏はただし、首相は「政府案としてその案を5月末までに認めてもらうのが私の役割」と応じた。

仮に5月末に決着できない場合は退陣か衆院解散を谷垣氏が求めたのに対し、首相は明言しなかった。しかし、地元了解も含めた決着を首相が約束した言質は重い。

「政治とカネ」について、首相は相変わらず守勢だった。自らの資金管理団体の偽装献金事件に関して、資料の公開も含めた説明についてあいまいな発言に終始した。

自民党内では今回の討論で谷垣氏が首相に即時退陣を迫らなかった点に批判が出ることも予想される。だが、論戦を通じて国民に政策の違いを示し、課題によっては建設的に接点を探ることが討論の目的であり、倒閣運動の道具ではない。郵政改革、財政再建問題を今回、谷垣氏は取り上げなかった。実のある討論を挑むにはまず、選挙に向け自党の政策をより明確にしなければならない。

読売新聞 2010年04月01日

党首討論 真正面から懸案を論じ合え

鳩山首相と谷垣自民党総裁、山口公明党代表による今国会2回目の党首討論が行われた。

前回の討論で迫力不足と批判された谷垣総裁は米軍普天間飛行場移設問題で、攻撃姿勢をみせた。首相が約束している5月末までの決着が果たせなかった場合は、退陣するか衆院を解散するよう迫った。

首相は、「命がけで行動し、必ず成果を上げる。政府を信頼してほしい」と応じるなど、前回よりは緊張感のある討論となった。

後半国会では、党首討論を頻繁に開き、外交、税財政など国の根幹にかかわる問題について論戦を深めるべきだ。

谷垣総裁は、普天間問題について、米国と地元双方の理解を得ていた現行案を否定して沖縄の期待をあおり立てた揚げ句、政府案がいまだ一本化されていない現状を批判した。

首相は「腹案はすでにある」と反論し、「現行案と同等かそれ以上の成果が上がる」と強調した。だが、早期決着の決意を示すだけで、具体性や説得力を欠いた。

元秘書による偽装献金事件では谷垣総裁が、元秘書の裁判が結審したことをとらえ、首相が説明責任を果たすよう求めた。

首相は「身を粉にして国民の期待に応える」と述べたが、国民が求めているのは真相の解明だ。裁判中を口実に説明責任を回避し続けることは許されない。

山口代表も、政治資金問題に関する与野党協議機関の設置を提案した前回とは打って変わり、政権に対する対決姿勢を前面に打ち出した。郵政改革法案をめぐる閣内の混乱などを列挙して、「内閣は機能不全」「失望内閣」などと厳しく批判した。

谷垣、山口両氏に対する首相の発言は、全体に冗長で、追及に正面から答えていない場面が目立った。これでは、討論を早く切り上げようとする時間稼ぎとみられても仕方があるまい。

谷垣総裁は、前回の討論で追及が甘かったと党内から指摘が相次ぎ、与謝野馨・元財務相らが総裁交代論を展開した。今回は反省をある程度生かしたと言えるが、質問調が抜け切れなかった。

党内には「谷垣総裁では参院選は戦えない」との声が依然くすぶっている。若手・中堅議員は拙劣な国会運営を理由に、大島幹事長や川崎二郎国会対策委員長ら執行部の刷新も求めている。

戦う野党として態勢を立て直せるか、谷垣総裁の指導力が引き続き問われよう。

産経新聞 2010年04月01日

党首討論 首相は命がけで自浄示せ

今国会で2回目の党首討論も、国会が自浄作用を発揮する契機とならなかったのは残念だ。

鳩山由紀夫首相は、虚偽献金問題の初公判で起訴内容を認めた元公設第1秘書、勝場(かつば)啓二被告の証人喚問について「国会が決めること」などと、人ごとのように語った。喚問に応じるよう勝場被告に促すことも、説明責任の一つではないのか。

首相は、母親から提供された約12億6千万円の資金の使途に関する資料を提出する意向を国会答弁で示してきたが、党首討論で「まだ勝場被告の判決は出ていない」「プライベートなことを公表するのはいかがか」などと及び腰になったのはどういうことか。

首相の開き直った姿勢から、国民の信を取り戻そうという意思は感じられない。

「政治とカネ」の問題について「国民に何十回も説明した」と主張したが、母親からの巨額資金も「まったく知らなかった」などという不自然な説明を繰り返したにすぎない。「身を粉にして国民の期待に応える」のが責任の取り方だというが、どれだけ理解を得られるだろうか。

米軍普天間飛行場の移設問題では、日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部という現行案について「13年かかって杭(くい)一つ打てなかった。本当の意味で地元の同意が取り付けられていなかった」と首相は述べた。だが、これだけでは現行案を受け入れない説明にはなっていない。

首相は決着に向けて「腹案」があるという。しかし、鳩山政権は県外移設を掲げて移設問題を迷走させてきた。移設先に名前の挙がった自治体や沖縄県から強い反発を招いているのが、これまでの経過といえる。

5月末の期限までに決着できない場合の政治責任については明言を避けたまま、「命がけで体当たりで行動していく」と述べた。これまでの無定見な発言のぶれを考えれば、言葉の重みは乏しい。

郵政改革見直しに関しては、公明党の山口那津男代表から「閣内バラバラ」と批判されたことに対し、「閣議で決めるまでは、官僚任せでない新しい内閣だから自分たちの考え方があっていい」と反論した。

しかし、30日の閣僚懇談会ではあっさり改革案が決着した。選挙を重視した決着との指摘もある。さらなる説明が必要だ。

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