プロ野球開幕 「世界一」のプレーが見たい

毎日新聞 2010年03月21日

センバツ開幕 希望膨らむ春にしよう

桜前線の北上とともに球春が訪れる。第82回選抜高校野球大会は21日、阪神甲子園球場で開幕する。新しく張り替えられた外野の芝生が選手を迎えてくれる。

沖縄からの2校同時出場が高校球史に新たなページを開いた。沖縄勢初のセンバツ出場から50年の節目でもある。米軍統治下の時代には植物検疫法に抵触するとして、持ち帰った甲子園の土を捨てざるを得なかった。本土復帰を経て、平成に入り、沖縄尚学が春を2度制覇するなどレベルが高まった。今回出場する嘉手納と興南も実力で選ばれた。沖縄同士の決勝は夢ではなくなった。

嘉手納は極東最大の米軍基地の近くにあり、米軍機のごう音が練習中の声をかき消す。墜落の危険とも隣り合わせの日常が沖縄県民の負担を象徴している。「奔放なベースボール」を合言葉に初出場を果たした意義は大きい。興南は夏の甲子園で県勢初のベスト4に進み、沖縄高校球界をリードしてきた。3季連続出場でセンバツの初勝利を目指す。

困難克服校や模範校から選ぶ「21世紀枠」は10年目を迎えた。

36年ぶりの向陽(和歌山)は旧制海草中学時代、夏連覇を達成している。準決勝と決勝で無安打無得点試合を演じ、野球殿堂入りした嶋清一投手は太平洋戦争で若くして戦死した。部員は嶋さんの生涯を学ぶことで野球ができる平和のありがたさをかみしめている。

初出場の山形中央(山形)は感謝の心を大切に、地元の清掃活動などに取り組んでいる。同じく初めての川島(徳島)は部員18人と少なく、グラウンドも他のクラブと共用だが、練習に工夫を凝らしてきた。3校は地域と強いきずなで結ばれている。少子化の中、部員減少や過疎に悩む学校の励みになるだろう。

今大会は中京大中京(愛知)が同校2度目の夏春連覇に挑むが、昨年の春夏の甲子園の決勝に雪国勢が進むなど各校の実力は均衡している。出場32校のどのチームが上位に進出してもおかしくなく、好試合が期待できる。

大会中の4月1日には日本学生野球憲章が改正される。学業との両立を前提に「学校教育の一環」と学生野球を定義し、部活動に週1回の休養を求める一方でプロとの交流を緩和した。アマチュアリズムを守りつつ技術向上を図る指導方針の確立に学校全体で取り組む必要がある。

甲子園の銀傘には太陽光発電が取り付けられ、環境にも配慮した魅力あるスタジアムに生まれ変わった。社会に閉塞(へいそく)感が漂う中、その大舞台で夢と希望を与える高校球児のプレーに声援を送りたい。入場行進曲に思いを寄せ、ベストを尽くそう。

読売新聞 2010年03月20日

プロ野球開幕 「世界一」のプレーが見たい

プロ野球のパ・リーグが20日、開幕する。セ・リーグも26日に熱戦の火ぶたを切る。いよいよ球春到来である。

「ここに、世界一がある。」――。これが今季のプロ野球のスローガンだ。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)連覇を成し遂げた国の野球にふさわしい、レベルの高いプレーでファンを楽しませてほしい。

パ・リーグでは、日本ハムが連覇を目指す。巨人の4連覇がなるかどうかが、セ・リーグの焦点だ。西武の雄星投手、巨人の長野(ちょうの)久義選手ら期待のルーキーの活躍が今から楽しみだ。

日本球界に復帰した阪神の城島健司捕手やオリックスの田口壮選手らには、米大リーグで磨いた技を存分に発揮してもらいたい。

5球団の新監督たちの采配(さいはい)も注目点の一つだろう。

両リーグで新たに導入されるのが、本塁打のビデオ判定だ。打球がポール際などに飛んだ際、審判が必要と認めれば映像で確認し、最終判断するようになる。

この導入で、より正確なジャッジが可能になるだろう。抗議による長い中断も避けられそうだ。ぜひとも有効に活用してほしい。

ボールカウントについて、審判のコールが「ボール」「ストライク」の順になるのも、今季からの変更点だ。フルカウントの場合は、大リーグと同様に「3ボール、2ストライク」となる。

高校野球では既に実施しており、大学、社会人野球も今季から変更する。国際基準に準じた変更は、国際大会が増えている現状を考えれば自然な流れといえる。

これに伴い、横浜スタジアムは球場内のカウント表示を開幕までに替えるというが、多くの球場は当面、「SBO」のままだ。テレビ中継での画面表示も、従来通りのケースがほとんどのようだ。

だが、ファンに浸透させていくには、表示スタイルも変えていく必要があるだろう。

21日からは選抜高校野球大会も始まる。出場選手の中には、将来のプロ野球を担うような逸材がいるかもしれない。

これまでは、高校生、大学生とプロ選手との交流は、原則的に禁じられていた。日本学生野球憲章の規定があったためだ。

憲章は全面改正され、日本学生野球協会の承認があれば、プロとの試合や練習が解禁となった。

これを機に「プロ・アマ交流」を活発化させたい。プロの技を高校生らが学ぶことが、球界全体のレベルアップにつながる。

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