日銀が、量的金融緩和の拡大を決めた。政府に背中を押された面はあるにせよ、まずは妥当な判断である。
昨年12月に導入した新型オペ(公開市場操作)という資金供給策を拡大することだ。
年0・1%の超低利で期間3か月の資金を金融機関に貸し出す仕組みで、上限は10兆円だった。供給額が上限すれすれの9・6兆円に達したため、20兆円に倍増することにした。
新型オペは、金融機関の資金繰りや短期金利の低下に一定の効果を上げたと言っていいだろう。
政府が景気判断を上方修正するなど、明るさの出てきた時期にあえて、「経済、物価の改善を確かにする」(白川日銀総裁)として追加策に踏み切ったことは、デフレ脱却にかける、日銀の強い決意を印象づけた。
一方で、日銀は企業向け金融を支援する別の資金供給策を今月末で打ち切り、市場の資金が約6兆円近くも減る。追加緩和は、これを穴埋めする意味もある。
つまり、外見は10兆円の追加供給だが、正味の効果は4~5兆円にとどまる計算だ。
消費者物価指数は依然として下落が続き、デフレ圧力は根強い。今回の追加だけで十分かどうか注意する必要はあろう。
景気や物価の動向によっては、長期国債の買い入れ増額や、日銀当座預金の残高を目標に掲げる全面的な量的緩和など、さらに強力な措置も検討すべきだ。
菅財務相はじめ、政府サイドは、金融緩和要求を繰り返してきた。だが、日銀がさらに金利を低下させる余地は少ない。
むしろ、デフレ不況の最大の原因は、総額30兆円にのぼる日本経済の需要不足にある。金融政策だけでは解決できまい。
アジア向け輸出など外需の力で企業収益は改善してきたが、設備投資や雇用増加につながるほど、企業心理は好転していない。
堅調だった公共工事も減速が始まり、自動車販売も頭打ちだ。前政権による景気対策の“貯金”は、使い果たしつつある。
財政出動には限界もあるが、打つ手がないわけではない。
政府は、子ども手当や高校授業料無償化など、ばらまき的な「家計支援」ばかりでなく、法人税実効税率の引き下げなどで、企業活動を後押しすべきではないか。
省エネなど先端産業のてこ入れや、医療・介護などを有望な市場に育てる規制緩和など、将来をにらんだ成長戦略も重要だ。
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