日韓関係の改善傾向を経済分野で後押しする合意として歓迎したい。
ソウルで第7回日韓財務対話が開かれた。麻生財務相と韓国の柳一鎬企画財政相が、日韓通貨交換(スワップ)協定の再締結に向けて、議論を開始することで一致した。
スワップ協定は、通貨危機の際に米ドルなどを融通し合う枠組みだ。2001年に締結され、主に韓国の通貨不安を抑える役割を担ってきたが、昨年2月に期限切れで失効している。
今年6月には、英国の欧州連合(EU)離脱決定の余波で、通貨ウォンが急落した。韓国は外貨準備高を積み増しており、通貨融通の必要性は低いとされるものの、柳氏は「2国間経済協力強化の証し」として再締結を提案した。
スワップ協定は、金融分野における日韓協力の象徴的存在だ。再締結は、両国だけでなく、アジア地域全体の金融市場の安定にも役立つと評価できよう。
日韓両政府が昨年末、慰安婦問題の解決に合意したことで、両国関係は着実に改善している。今回の協定再締結も一助となろう。
そもそも財務対話が06年に始まったのは、小泉元首相の靖国神社参拝問題で冷却化した日韓関係を経済面から修復する一歩とする狙いが大きかった。
12年に竹島問題を巡る日韓対立の影響で中断されたが、昨年5月に再開された。今後も、経済問題全般について、率直な協議を重ねることが求められる。
財務対話では、資源価格の不安定化や地域紛争などの地政学的リスクで、世界経済が不確実性を増しているとの認識で一致した。
日韓両国が、国際社会の成長を下支えするため、金融政策、財政出動、構造改革など、全ての政策手段を取ることを改めて確認したのは妥当である。
両国は、少子高齢化に伴う潜在成長率の低下など、共通の課題を抱えている。生産性を高める規制改革など成長戦略について、建設的な対話を行うべきだ。
通商分野では、日中韓の自由貿易協定(FTA)や、東アジア地域の包括的経済連携(RCEP)に関する交渉の進展に両国が努力することで一致した。
米国では、11月の大統領選を控え、日米など12か国が署名した環太平洋経済連携協定(TPP)の批准が不透明さを増している。
米国の批准の動きを見守るだけでなく、日中韓FTAやRCEPの交渉についても地道に前進させることが欠かせない。
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