埼玉の16歳殺害 悲劇は防げなかったのか

読売新聞 2016年08月30日

埼玉16歳暴行死 救う手立てはなかったのか

痛ましい事件である。救う手立てはなかったのだろうか。

埼玉県東松山市の河川敷で、16歳の井上翼さんの遺体が見つかった。全裸で溺死させられ、発見時には体の半分以上が砂利に埋まっていた。顔には殴打された複数の痕があった。

埼玉県警は、14~17歳の少年5人を殺人容疑で逮捕した。うち2人は地元の不良グループに属する無職少年で、残る3人は中学生だ。5人は、井上さんの体を川につけるといった暴行を加えたことを認めているという。

井上さんは、昨年11月に定時制の県立高校を中退した。定職に就かず、最近は友人宅などに身を寄せていた。5人とは、事件の1週間ほど前から行動をともにしていたとみられる。

供述などによると、少年らは電話やメールなどで井上さんを呼び出した際に、「地元にいない」などとうそをつかれて逆上した。

ささいな動機と、重大な結果との落差に唖然あぜんとする。あまりに短絡的な犯行と言うほかない。

事件の経緯を詳細に解明し、再発防止につなげねばならない。

少年が集団的な暴行に走る同様の事件は過去にも起きている。

昨年2月には、川崎市の河川敷で、中学1年の男子生徒が少年3人から暴行を受けて、殺害された。加害者の1人は、それまでの暴行を友人に告げ口されたと邪推して犯行に及んでいた。

こうした集団暴行について、専門家は「一人一人の犯罪意識が希薄化し、エスカレートしてしまう」と指摘する。取り返しのつかない事態に発展する前に、周囲の介入で芽を摘むことが大切だ。

川崎の事件の教訓が生かされなかったのは残念である。

今回の事件では、携帯電話で指示を受けながら買い物をさせられる井上さんの姿が、現場近くのコンビニ店で目撃されていた。たばこの火を押しつけられたような痕が手にあったとの証言もある。

親をはじめとする周りの大人が、異変を敏感に察知していれば、事件を防げた可能性もある。不良グループに対する警察などの対応は十分だったのか。中学生の3人については、学校の指導の在り方も問われよう。

現行の少年法は、少年の保護と更生に主眼を置く。川崎の事件などを契機に、法務省が見直し作業を進めている。

少年の凶悪犯罪を抑止するには、どのような仕組みが効果的なのか。議論を深めたい。

産経新聞 2016年08月28日

埼玉の16歳殺害 悲劇は防げなかったのか

埼玉県東松山市の河川敷で16歳の少年が遺体で見つかった。

殺人容疑で逮捕されたのは14~17歳の5人の少年たちだった。痛ましい事件を防ぐ方法はなかっただろうか。

被害者の井上翼さんは半身が河川敷の砂利に埋まった状態で発見された。死因は溺死で、体には暴行の痕があった。

逮捕された無職少年(16)は集団で暴行したことを認め、「電話やメールを無視したから殺した」などと供述しているという。警察には、まず事件の全容を解明してもらいたい。

10代の若者らのグループでささいなトラブルなどから凄惨(せいさん)な暴行に発展する事件が繰り返されている。平成25年に広島県呉市で「LINE」での口論が発端となり16歳の少女が元同級生らに殺害された。昨年は川崎市の河川敷で、13歳の中学1年男子が遊び仲間の少年らに惨殺された。集団による少年犯罪は、未熟や無知から歯止めがきかなくなる場合がある。

凶悪な少年事件があるごとに少年法は改正されてきた。おおむね厳罰化の流れにある。

少年であっても重大事件を起こせば重い罪を負うべきであるのは当然であろう。犯罪の抑止にも一定の効果が期待できる。

ただそれだけでは足りない。川崎の事件では、周囲の大人が異変に気づけば防げた可能性があったとの反省がある。

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