地価下落 信頼できる経済運営を

朝日新聞 2010年03月19日

地価下落 新しい成長の足場にも

地価の動きは経済の勢いを映す鏡といえる。デフレで地価が下がるのも当たり前のこと。鏡を見て服装を整えるように、新しい現実を景気回復への足がかりにしたい。

国土交通省がきのう発表した公示地価は、全国で2年連続の下落だった。下げ幅は住宅地が4.2%、商業地は6.1%だった。

調査対象の約2万7千地点のうち上昇地点はわずか7地点。2008年秋のリーマン・ショック後の世界同時不況から抜け出せない日本経済の姿が確認された。

とはいえ、バブル崩壊後の90年代とは様相が異なる。地価の下落が不況に拍車をかける悪循環に陥ってはいない。首都圏や中京圏では、下落傾向が緩やかになってきた。

直近のピーク時からの下落率は、住宅バブルが破裂した米国や英国などに比べ格段に小さい。20年近くに及ぶ長い調整期間を経て、ようやく利用価値に見合う地価水準に落ち着いてきたようにも見える。

アジア向け輸出の回復や財政・金融政策を頼りに不況からの出口をさぐっている日本経済にとって大事な時期だ。地価下落が経済に悪影響を及ぼさないよう、政府は注意深く手を打ってもらいたい。

地価が下がって担保価値が落ちれば、金融が収縮したり投資や雇用が減少したりしかねない。それに対応するきめ細かい金融行政や中小企業対策が必要だ。資産の目減りで消費が冷えないよう、住宅ローン減税などの目配りも欠かせない。

だが、地価下落はチャンスも生む。企業が事業拡大の好機と受けとめ、個人が新たな住宅取得へと動くなら、いずれ景気回復へとつながってゆく。

たとえば首都圏ではここ数年、住宅価格が平均年収の6~7倍の水準にあった。90年代前半、宮沢政権が「大都市圏の住宅を平均年収の5倍程度に」との目標を掲げた。今でも妥当かどうかは別として、この水準に近づけば、買う人がだんだんと増えてくる可能性はあるだろう。

今年に入って首都圏でマンション契約率に回復の兆しが出ているのは、そうした変化を示すようにも見える。

これを機に、福祉施設の建設も期待できる。大都市圏では保育所が大幅に不足している。地価下落で建設費が安くなった以上、不足の解消へ踏み出す決断を関係者に求めたい。

海外からの投資も呼び込みやすくなった。土地は投機の対象にしてはならないが、眠らせておくものでもない。有効に利用すべきものだ。

住む人には暮らしやすく、ビジネスや観光で海外から来る人にも魅力的な日本作りを進める好機である。ここから新しい成長への道筋を考えたい。

毎日新聞 2010年03月19日

地価下落 信頼できる経済運営を

地価の下落が続いている。国土交通省が発表した地価公示によると、全国2万7804の調査地点のうち、昨年1年の間に地価が上昇したのは7地点のみだった。リーマン・ショックを受け経済が急激に収縮した一昨年の23地点をも下回っており、中国など新興国での不動産バブルとは対照的だ。

下落した地点の比率は99・6%にのぼっている。上昇した7地点は、名古屋市で地下鉄の延伸が予定されている地域にある5地点と、静岡県東部で先端医療産業の誘致などを推進している地域の2地点。横ばいが101地点あるものの、特別な要因がない地点以外は、すべて下落と言っていい状態だ。

下落幅も、住宅地、商業地とも、東京、大阪、名古屋の3大都市圏の方が、地方圏を上回っている。特に、3大都市圏の商業地の下落率は7・1%と、他を上回っている。

金融危機の前に計画されたオフィスビルなどが次々に完成したこともあって、供給過剰から空室率が上昇している。地価もそれを反映しているようだ。

過去の地価の変動を累積した指数でみると、1974年を100とした全国の地価は、バブルのピークの91年に住宅地が296、商業地が271にまで上昇した。その後、下落が続き、今年1月時点では住宅地が147、商業地は76となっている。

住宅地に比べ商業地の下落が著しいのは、郊外の大型ショッピングセンターなどに客を奪われ、地方都市を中心にシャッター商店街が続いていることに加え、一時上昇に転じミニバブルとも形容されていた大都市の中心市街地の地価が、金融危機の後、急落していることなどが影響している。

ただ、半年ごとに地価を調査している地点を比べると、3大都市圏の地価は住宅地、商業地とも、下落率は昨年前半に比べ、昨年後半の方が小さくなっている。中古マンションの売買が増えるなど、値ごろ感のある物件の取引が拡大しており、底入れの兆しもあるようだ。

地価は担保価値を通じ企業金融にも影響する。また、地価が上昇すれば資産効果による消費拡大も期待できる。資産価格と一般物価は別という見方があるものの、地価の動向が、デフレ克服に向け、大きなカギとなっているのは間違いない。

不動産市況が安定的に推移するようになるためには、国債や海外に流れている資金が不動産に向かうようになる必要がある。その前提となるのが、経済運営に対する信頼回復だ。政治の迷走状態を早期に収拾し、日本が明るい方向に進んでいることを実感できるようにしてほしい。

読売新聞 2010年03月21日

地価公示 不動産デフレが止まらない

やや明るさが見え始めた日本経済で、不動産市場は土砂降りの状態が続いているようだ。

国土交通省が発表した2010年1月1日時点の公示地価は、全国の住宅地で4・2%、商業地で6・1%、それぞれ09年に比べて下落した。

これで2年連続のマイナスだ。下落率は昨年より今年の方が大きく、地価デフレが加速していることが見て取れよう。

地価は、バブル崩壊の影響が顕在化した1992年以来、15年連続で下落を続け、07年にようやくプラスに転じた。翌08年も上昇し、「長いトンネルをなんとか抜け出した」と不動産業界が喜んだのもつかの間だった。

08年秋の世界的な金融危機の直撃を受けて再び下落に転じ、その後、光明は見えないままだ。

地価が下がると、保有資産の減価を通じて個人消費などに影響を与える。景気下支えのためにも政府は、不動産市場のテコ入れに乗り出す必要があろう。

今回の地価下落の深刻さは、2万7000を超す調査地点のうち、上昇したのが住宅地で6、商業地1の計7地点しかなかったことに表れている。

地域別に見ると、住宅地、商業地とも全都道府県が前年比で下落したが、3大都市圏の方が地方圏より下落率が大きい。

07、08年の地価回復局面で、大都市部の一部で地価が高騰するミニ・バブルが起き、その反動が出たということだろう。

実際、商業地では、東京都港区新橋で26・9%下落した地点が出るなど下落率ワースト10をすべて東京、大阪の繁華街が占めた。

今回の地価下落の原因について、国交省は「需要不足に尽きる」と分析する。

金融危機で金融機関の融資態度が厳しくなり、不動産投資に必要な資金が止まってしまった。さらに、消費不振で百貨店の撤退が加速するなど、繁華街のビルでも借り手が減ってきたためだ。

この状況に打つ手はあるのか。今月8日から、省エネにつながる戸建て住宅やマンション建設の際に与えられる「住宅版エコポイント」の受け付けが始まった。冷え切った住宅投資に一定の刺激効果はありそうだ。

地価下落はマンション業界などにとって、仕入れ価格の低下につながる。メリットを生かし、割安な住宅の提供に努めてほしい。

不動産関係諸税の軽減など、政府による税制面での支援策も欠かせまい。

yutakarlson - 2010/03/19 10:19
公示地価は2年連続下落、大都市圏がマイナス主導―ますますデフレ基調が鮮明に!!

こんにちは。公示地価の下落、特に大都市圏の下落により、ますますデフレ基調が鮮明になってきたと思います。このままだと、失われた10年よりももっと酷いことになりそうです。一番の懸念は、賃金が低くなることよりも、雇用が失われることです。新卒の就職率がさらに下がるでしょう。また、子供手当てなどもらっても、世帯主が失職などということになりかねません。たとえ、そのようなことになっても、日本国自体は何も心配はないでしょうが、特に資産を持たない貧困層が大変なことになり、社会不安を生み出すもとになると思います。私は、政府の現在の第一の使命は、このデフレを克服することであり、その他マニフェストなどどうでも良いことだと思います。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。
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