新型インフル対策 政権移行で遅れは禁物

朝日新聞 2009年09月05日

新型インフル 対策に空白は許されない 

新型の豚インフルエンザの流行が止まらない。新学期が始まったが、初めから学級閉鎖したり、休校したりした学校もある。

健康な人のほとんどは軽症ですむ。だが、持病を持つ高齢者だけでなく、比較的若い人にも重症例が報告されている。決して油断はできない。

厚生労働省によれば、国民の5人に1人が感染し、1日に4万人以上が入院するような大流行のピークが、早ければ今月末にもやってくる。再来週に発足する予定の鳩山政権にとっては、いきなりの試練である。

民主党は、政権移行期の最重要課題としてインフルエンザ対策を挙げた。準備や対策に政権交代に伴う空白があってはならない。関係省庁や自治体は対策にいっそう力を注いでほしい。

今、対策の一つであるワクチンに大きな関心が集まっている。ワクチンは、感染を防ぐ効果は決して高くないが、重症化は防げるとされる。

厚労省が必要と見込む5400万人分に対して、来年3月までに製造できるのは1800万人分だ。先進国の中で製造能力の低さが際だつ。

不足分は輸入品でまかなう方向だ。だが、使い慣れない輸入品の安全性に不安を抱く医師もいる。インフルエンザのワクチンは、ごくまれだが重い副反応が起きることもあるからだ。

厚労省は昨日、対象者のうち、どんな人に優先的に接種するか、案をまとめた。まず医療従事者や妊婦、持病を持つ人、1歳以上の乳幼児、1歳未満の子の親が対象となる。次に、重症化しやすい高齢者や、重症化のおそれは低いが感染が広がりやすい小・中・高生が挙げられた。

国産ワクチンの不足を輸入品でどこまで補うのか。接種の目的が異なる対象グループの、どの範囲まで接種するか、しっかりした根拠に基づく方針を示し、ワクチンの効果や限界とともに、国民に丁寧に説明していく必要がある。

いずれにせよ、ワクチンの接種が始まるのは10月末以降だ。今月末からのピークには間に合わない。それ以外の対策を怠ってはならない。

重症患者の急増に対応できるような医療態勢の整備は優先課題だ。地域での医療機関の役割分担も欠かせない。

早めに飲めばウイルスを減らす効果が期待できるタミフルなどの抗ウイルス薬もある。うつったり人にうつしたりしないよう、一人ひとりの行動もかぎを握る。大流行はおそらく避けられないが、過度に恐れる必要はない。

社会の混乱を招かないよう、新政権は危機管理の態勢をできるだけ早く整えることが必要だ。そのうえで国民が落ち着いて行動できるよう、専門家の助言に基づく正確な情報をタイミングよく伝えてほしい。

毎日新聞 2009年09月03日

新型インフル対策 政権移行で遅れは禁物

新学期を迎え、新型インフルエンザの急増が心配される。子供たちが集団生活を送る学校で感染が広まり、それが家庭を通じて社会に拡大していくと考えられるからだ。

ちょうど政権移行の時期にぶつかったが、それによって対策の遅れが生じることがあってはならない。民主党と現政権の合意を踏まえ、党派を超えて協力しあってほしい。

厚生労働省は国民の2割が罹患(りかん)し、ピーク時には1日に76万2000人が発症、4万6400人が入院するとの流行シナリオを示している。ピークを迎えるのは9月下旬から10月上旬。実際には発症者がこの想定を上回る可能性も十分にある。

各地域の医療機関は、増加する感染者の診療体制や重症者対策を早急に整える必要がある。休日や夜間診療の体制を整えることはもちろん、院内感染を防ぐ対策も重要だ。

重症者が増えればベッドや人工呼吸器の不足も起きてくるだろう。国は自治体に丸投げするのではなく、設備の確保やきめ細かい対策などに責任を果たすべきだ。

ワクチンの優先順位の決定も急がなくてはならない。その際に重要なのは、どういう目的で、どういう人を優先するのかを、公衆衛生学的な根拠に基づいて決め、国民が納得できるように説明することだ。

検討中の輸入ワクチンは国産とは製造方法が異なり、安全性の確認が必要だ。不安があれば輸入後でも使用しない選択肢も残しておくべきだ。輸入ワクチンが国産とどう違うのかについて、情報を国民に示す必要もある。

これまで、ワクチンの確保目標や優先順位、輸入の方針について、舛添要一厚労相が発言を繰り返してきた。しかし、根拠があいまいだったり、発言が変化したこともあった。

新型インフルエンザ対策は、国の危機管理の問題であり、政治的リーダーシップは必要だ。ただし、専門性に基づいて決めるべきことについては政治家が先走るべきではない。

むしろ、医療機関を支援するための予算措置、ワクチンの副作用被害の補償にかかわる法整備などが政治的な課題ではないか。国の決定を国民に納得してもらうのも重要な役目だ。

新型インフルエンザの大流行は避けられなくても、流行のピークをなだらかにすれば医療機関のパンクを防げる。そのためにも、学校・学級閉鎖を確実に進めるべきだ。本人や子供がインフルエンザにかかったら、仕事をためらわずに休める環境作りも大事だ。

これまでの報告では重症化するのは妊婦や持病のある人だけではない。特に持病のない人にも重症者が出ている。油断は禁物だ。

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