日本とアフリカ 「平和な海」でも連携図れ

読売新聞 2016年08月30日

アフリカ会議 良質な支援で中国と差別化を

アフリカの健全な発展は、世界の安定に欠かせない。官民を挙げて支援し、成長力を取り込む互恵関係を築きたい。

日本とアフリカの約50か国の首脳らによる第6回アフリカ開発会議(TICAD)がケニアで開かれた。経済構造改革や感染症対策の強化を柱とするナイロビ宣言を採択した。

安倍首相は基調講演で、3年間で官民総額300億ドル(約3兆円)規模を投資し、約1000万人の技術者らを育成する考えを表明した。「日本と日本企業の力を生かす時が来た」とも訴えた。

豊富な天然資源を有し、人口も急増するアフリカは、世界経済の「最後のフロンティア」と称され、各国が競って投資してきた。

しかし、近年は、資源価格の下落、エボラ出血熱など感染症の拡大、内戦やテロの多発といった課題に直面している。貧困の根絶や社会の安定にはほど遠い。

ナイロビ宣言が、資源輸出だけに頼らない「経済の多角化」を掲げたのは妥当だ。日本の技術力を生かした、質の高いインフラ投資や人材育成を進め、アフリカの自立を促すことが肝要である。

初めてアフリカで開かれたTICADには、多くの日本企業や団体が参加し、具体的な投資案件などを協議した。潜在的な巨大市場への経済界の期待は強い。

22企業・団体が計73事業の覚書に署名した。地熱発電や農業の開発、病院整備、マラリア対策など広範な協力の意義は大きい。

首相は、「日アフリカ官民経済フォーラム」の設立を発表した。日本の閣僚や企業関係者らが3年に1回、アフリカを訪問する枠組みだ。密接に連携し、双方の利益を追求することが重要だ。

中国は昨年12月、3年間で600億ドルを支援すると公表した。金額では日本の2倍だが、中国企業のもうけや資源確保などを優先するため、人材育成や技術移転につながらないとの批判が根強い。

日本は、質を重視したインフラ整備に加え、維持や運用のノウハウを提供し、現地の専門家を育てるきめ細かな支援で、中国との差別化を図ることが大切である。

首相は、太平洋とインド洋を「平和な、ルールの支配する海」とするインド太平洋戦略を打ち出した。ナイロビ宣言にも、海洋秩序の維持、国連安全保障理事会の改革の必要性が盛り込まれた。

いずれも中国を念頭に置いたものだ。中国に独善的な行動の自制を促すためにも、アフリカ諸国と戦略的な関係を構築したい。

産経新聞 2016年08月30日

日本とアフリカ 「平和な海」でも連携図れ

ケニアで開催されたアフリカ開発会議(TICAD)では、「ナイロビ宣言」が採択され、「国際法の原則に基づく海洋秩序維持の重要性を強調する」と明記された。

中国は東シナ海の尖閣諸島(沖縄県)周辺で公船、漁船による領海侵入を繰り返している。南シナ海では岩礁を埋め立てて軍事化を進め、仲裁裁判所の全面敗訴の裁定も意に介さない。

さまざまな国際会議で、中国による力ずくの海洋進出の不当性を訴えて「国際問題化」を図り、各国に警鐘を鳴らすべきだ。

アフリカ諸国との連携を、経済協力に加えて安全保障へと広げる成果を得た意味は大きい。

安倍晋三首相は会議で、「自由で開かれたインド太平洋戦略」とする日本の新たな外交戦略を披露し、アジアとアフリカ大陸をつなぐインド洋と太平洋について、「平和な、ルールの支配する海に」と呼びかけた。

さらに、「力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育て、豊かにする責任を担う」と強調した。

海洋の平和は、アジアとアフリカのつながりを強め、日本がアジアで培った開発支援のノウハウをアフリカにも持ち込み、質の高い援助を実現することにも役立つだろう。

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