台風10号 厳重な備えと早期避難を

朝日新聞 2016年08月30日

相次ぐ台風 経験超える想定が必要

台風10号が日本列島に接近している。上陸すれば1カ月で4個目で過去最多タイとなる。

今回の台風は南の海上からUターンするという、異例の進路をたどった。東北地方の太平洋側に上陸すれば1951年の統計開始以来初となる。東日本大震災で海岸線がダメージを受けた所も多く、警戒が必要だ。

沿岸での高潮や暴風、河川の氾濫(はんらん)には十分に気をつけたい。自治体や交通機関は、必要な情報を迅速に提供してほしい。

廃炉作業が進む福島第一原発への影響も心配だ。2013年には汚染水タンクを囲む堰(せき)から台風などによる雨水があふれ、対応が後手に回った。見回りを強化するなど、東京電力は緊張感をもって臨んでほしい。

9号上陸の際は、東日本の広い範囲で避難勧告が出された。首都圏でも地盤がゆるみ、土砂災害の危険や河川が増水しやすい所がある。勧告が出ていなくても早めの避難を心がけたい。

今年の夏の天気は異例続きだった。大阪では8月の猛暑日が計23日と、1883年の統計開始以来の最多記録となった。台風は1号が7月3日に発生、統計開始の51年以降で2番目に遅かったが、8月に入ってたて続けに7個が発生。北海道には初めて三つも上陸した。

昨年は関東・東北豪雨で鬼怒川(茨城県)が決壊し、8千戸以上が被災。14年には広島の土砂災害で75人が亡くなった。

相次ぐ極端な気象は、地球温暖化との関係も指摘される。海水温の上昇が、より強い集中豪雨や台風をもたらすとの予測もある。経験値では推しはかれない現象が、常に起こり得る時代だと考える必要がある。

防災の観点から気をつけたいのは、自分がなじみのない場所では、災害に巻きこまれるリスクが高いということだ。

台風の「当たり年」だった04年には、10個目に上陸した台風23号の豪雨で、京都府舞鶴市で由良川が氾濫して観光バスが水没、乗客がバスの屋根で一夜を明かしたことがある。一方で、いち早く自宅に避難して無事だった地元住民もかなりいた。

不要な外出を控え、出先では無理をしないことが大切だ。

9月1日は「防災の日」だ。最近は台風の襲来後に巨大地震が発生するといった複合災害を想定した訓練をする自治体もある。孤立集落への対応、電気・ガスなどライフラインの代替手段確保など、準備しておけば起きた時に対応しやすくなる。

一人ひとりが自分の身は自分で守ることを心がけて、被害を最小限に食い止めたい。

産経新聞 2016年08月27日

台風10号 厳重な備えと早期避難を

日本の南海上を迷走していた台風10号は、来週にも本州に上陸する可能性が高い。

気象庁によると、台風10号の勢力は非常に強く、今後も発達していく見通しだ。

東日本を縦走した台風9号などにより、関東、東北、北海道では地盤が緩み、河川の水位が高くなっている地域がある。

大規模な土砂災害や河川氾濫が起きやすい状況にあると考えなければならない。被害を最小限に抑えるためには、大げさに思えるくらいの厳重な備えと、早めの避難を心掛けることが大切である。

今夏の台風は異例ずくめだ。

7号、11号、9号と、3つも北海道に上陸したのは観測史上初めてで、関東への上陸(9号)も平成17年以来11年ぶりである。

東西の高気圧に日本列島が挟まれる気圧配置により、東日本に沿うように台風の通り道ができたためだという。

10号は19日に八丈島の東沖で発生したが、東西の高気圧に進路をふさがれて南西方向に進んだ。この間に、高水温の海域で勢力を増し、折り返すように日本列島に向かうとみられる。

9号上陸の際、東日本の広い地域で避難勧告や避難準備情報が出された。警戒水位を超えた河川も多い。10号が上陸すれば、それ以上の猛威を覚悟する必要があるだろう。

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