北朝鮮の軍事的脅威が一段と増大していることが鮮明になったと言えよう。国際社会は連携して挑発を抑える取り組みを進めねばならない。
北朝鮮が日本海に向けて行った潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験について、国連安全保障理事会は非難声明を出す方向で検討に入った。
安保理が、制裁決議に違反して核実験や弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に、強いメッセージを迅速に送ることが肝要である。
金正恩政権は、米韓が配備を進める最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」に反発する。米韓合同軍事演習期間中のSLBM発射で奇襲能力を示し、日米韓に揺さぶりをかけたつもりなのだろう。
朝鮮中央通信によると、実験を視察した朝鮮労働党の金委員長は「核攻撃能力を完璧に保有する軍事大国入りを証明した」と宣言した。核兵器と運搬手段の開発に注力するよう指示したともいう。
北朝鮮が核弾頭を小型化してSLBMに搭載し、実戦配備することになれば、核攻撃の方法が多様化する。地域の安定を揺るがしかねない重大な懸念材料である。
SLBMは、事前に発射の兆候が捕捉されにくい。たとえ北朝鮮国内の兵力が壊滅しても、潜水艦から報復する役割を担える。
北朝鮮は、昨年春に水中発射実験を行って以降、SLBMの技術を急速に向上させている。
韓国軍によると、今回のミサイルは約500キロ飛行した。射程は2000キロに達する可能性がある。2~3年かかると推定されていた実戦配備がより早まるとの見通しも浮上している。日米韓は抑止力の強化が急務である。
韓国の朴槿恵大統領は、金委員長について、「予測困難だ」と分析し、北朝鮮の「核とミサイルの脅威」が現実になりつつあると、強い警戒感を示した。
朴氏が、金政権のエリート層に「亀裂の兆候」が見られるとして、国内を引き締めるため、さらなる挑発を行う可能性が高いと指摘したのは注目に値する。
在英国の北朝鮮大使館の公使が今月、韓国に亡命するなど、北朝鮮外交官の脱北が相次いでいることに基づく発言だ。
今年4月には、中国の「北朝鮮レストラン」従業員が集団脱走するという異例の事件も起きた。
「金王朝」の独裁体制が国際社会で孤立を深める中、国民の不満がさらに高まっていることを、もはや糊塗できまい。
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