国際平和協力活動に従事する自衛隊部隊が応分の責務を果たすうえで、重要な一歩である。
稲田防衛相が、3月施行の安全保障関連法で可能になった自衛隊の新任務の訓練を開始する方針を発表した。
11月に南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に派遣される陸上自衛隊部隊が9月中旬、「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防衛」の訓練を始める。10月下旬までの訓練結果を踏まえて、新任務を正式付与する予定だ。
駆けつけ警護の解禁は、陸自にとって長年の懸案だった。
これまでは、武装集団などに襲われた民間人や国連職員、他国部隊から救援を要請されても、「法律上できない」と断るしかなかった。民間人を見捨てるのは人道上も問題だ。国際機関や他国との信頼関係を築くこともできない。
安保関連法の成立・施行によって、国際常識から逸脱した、日本政府の過度に抑制的な憲法解釈の歪みを是正した意義は大きい。
駆けつけ警護を要する状況は、頻繁に生じるわけではない一方、いつ起きてもおかしくない。
万一の際、機動的かつ適切に対処する態勢を構築するには、従来以上に現地情勢の情報収集・分析に力を入れつつ、準備と訓練に万全を期す必要がある。
陸自は既に、武器使用の要件や限度などに関する部隊行動基準を見直し、教材の作成や教官の確保などの準備を進めてきた。
今後は、様々なシナリオを想定した実戦的な訓練を実施し、部隊運用や警告射撃の手順などを周知徹底することが欠かせない。
南スーダンでは7月、大統領派と前副大統領派の衝突によって治安が急速に悪化した。国際協力機構(JICA)職員や大使館員らが国外退避する事態に至った。
現在は、小康状態とされるが、油断はできない。新たな任務のリスクを極小化するためにも、訓練を充実させねばならない。
駆けつけ警護が解禁されても、陸自の武器使用権限には制約が残る。何ができ、何ができないかについて、他国部隊と認識を共有しておくことが大切だろう。
安保関連法では、存立危機事態における米軍艦船の防護や、在外邦人の救出も可能になった。防衛省は秋以降、日米合同演習などを通じて、新たな任務の訓練を実施する方向で調整する。
中でも、米艦防護は、日米同盟の強化に向けて象徴的な任務だ。訓練を通じて、自衛隊と米軍の協力関係を着実に深めたい。
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