アフリカ開発会議 「頼もしい日本」売り込め

朝日新聞 2016年08月26日

日本とアフリカ 息長く関与を深めよう

21世紀のアフリカの発展がめざましい。中間層の台頭、旺盛な消費、若く活力に満ちた都市部。しかし、この成長大陸に最近、変調の兆しが見える。

年6%近い数字が続いたサハラ砂漠以南の成長率が昨年、3%台に沈んだ。資源価格の下落が影響した。エボラ出血熱の流行は感染症がなお深刻な脅威であることを思い知らせた。過激派による暴力もやまない。

安倍首相も出席して明日からケニアの首都ナイロビで開かれる第6回アフリカ開発会議(TICAD)では、アフリカを成長への安定軌道にどうやって戻すかが主な議題になる。

資源依存を脱し、いかに産業の多様化を図るか。感染症を食い止める保健システムを根づかせられるか。若者が過激思想に染まらない社会の安定をどう築くか。アフリカ諸国との対話を通じ、日本がなすべき支援について知恵を絞ってほしい。

2050年には人口が約25億人に達する「最後の巨大市場」では、中国や欧米各国がすでに投資競争を繰り広げている。

初のアフリカ開催となる今回の開発会議に合わせて、150社を超す日本企業が現地を訪れる。日本としてもビジネスの足場を築いておきたい、という意欲の表れだろう。アフリカ側にも、政府の援助だけでなく民間投資を、との期待は強い。

ここはアフリカの人々の目線に立って考えたい。これまでの急成長がもたらしたひずみにも留意する必要がある。

食糧の生産性が低く、多くを輸入に頼る。都市と農村、成長の恩恵を受ける中間層と取り残された貧困層の格差も広がる。

野党や市民の政治活動を制限するなど強権的な手法で開発を推し進める国も少なくない。リオ五輪で、出身民族への弾圧に抗議するポーズでゴールしたマラソン選手が注目を集めたエチオピアはその一例だ。

急増する人口に十分な雇用と食料を確保できず、社会の亀裂が深まれば、危機へと逆回転しかねない。

そうならないよう、日本の得意分野を生かせないか。カギになるのは中小企業だ。

特産品を生かした食品加工や雑貨販売、地産地消の外食サービス、環境に優しい燃料の普及――。小回りが利き、地域の力を引き出す種はすでにアフリカにまかれている。巨額資本を投じた大事業でなくとも、小粒でも息の長い関与の積み重ねが発展の基盤を強固にするはずだ。

関心を一時のブームに終わらせてはならない。投資すべき先はアフリカの未来なのだから。

産経新聞 2016年08月26日

アフリカ開発会議 「頼もしい日本」売り込め

日本政府が主導し、アフリカ開発を話し合う「TICAD」の、初の現地開催となる会議がケニアで開かれ、安倍晋三首相やアフリカ諸国の首脳らが集結する。

日本の多くの民間企業も参加する。官民一体で頼もしいパートナーとしての日本を売り込んでもらいたい。

約12億人のアフリカ人口は2050年には倍増すると予想され、豊富な天然資源を背景に成長センターとしての期待は大きい。

地熱発電の開発支援など、日本の高い技術力を武器に進出を拡大し、アフリカの成長力を取り込むことは大きな課題である。

1回目のTICADは1993年、東西冷戦終結で前線としての重要性を失ったアフリカについて、国際社会の関心を呼び戻す契機となるよう開かれた。

「中国アフリカ協力フォーラム」など、中国やインド、韓国なども同種の「会議」を主催している。その多くは2000年以降に設立されたものだ。

日本の当初の支援は貧困対策の性格が色濃かったが、後発組は天然資源確保や自国企業進出の狙いが鮮明だった。

現地開催も中国が先行した。日本としても、6回目となる今回から、5年に1度の開催頻度を3年に1度に高め、巻き返しを図るという。

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