日中韓外相会談 対「北」圧力で協調を追求せよ

朝日新聞 2016年08月25日

日中韓会談 協力の重み自覚して

いまの日中韓の間に漂う雰囲気は、それほど良好とは言えない。それでも、3カ国の外相が集う会談が東京で開かれた。

北東アジアの安定と発展に重要な役割を果たすべき会合であり、昨年に続き定期開催できたことを前向きに受け止めたい。

2国間に対立問題があれば、外交関係は直ちに滞りがちだ。だが、3カ国の枠組みという名目なら出席しやすい。この知恵を生かしたい。首脳会談も年内に必ず実現させるべきだ。

歴史認識の問題が大きく取り上げられた昨年とは様相が変わり、今年は安全保障問題で緊張が高まっている。

その一つは日中間にある東シナ海・南シナ海問題である。

今月、尖閣諸島周辺の領海に侵入する中国の公船が一気に増え、日本政府が抗議をしても続いている。「対話を通じて情勢の悪化を防ぐ」とした一昨年の日中合意に反するものだ。

もう一つは中国と韓国の間にある。韓国と在韓米軍が新たなミサイル防衛システムの配備を決めたことに対し、中国が文化交流行事の停止など、報復ともみられる動きをみせている。

これらの背景には、それぞれの国内で、対外的に譲歩しにくい政治の事情があり、また、アジア太平洋地域での米中間の綱引きの現れという面もある。

日中韓を取り巻く多くの摩擦の要因は今後も外交関係を揺らし続けるだろう。だからこそ、3カ国が首脳や閣僚の会合を定期的に開く意義は大きい。

対立点を残しながらも協調して取り組むべき課題はいくつもある。

最大のテーマは北朝鮮だ。きのう、再び北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルを発射し、日本の防空識別圏内に到達した。

3外相が挑発行動の自制を北朝鮮に求めることで一致したのは当然だ。特に国連安保理常任理事国であり、北朝鮮と密接な関係をもつ中国がその影響力を使うよう強く求めたい。

日中韓の自由貿易協定といった経済協力の枠組みづくりが滞っていることも残念だ。3カ国合わせて世界経済の2割という比重を考えれば、もっと歩み寄りの工夫を追求すべきだろう。

今月、尖閣沖の海域で中国の漁船が沈没し、日本の巡視船が乗組員を救助した。同じ海を囲む隣国間では、手を差し伸べ合う事態が日常的に起こりうる現実を思い起こさせた。

海難救援だけでなく、環境問題や災害対策などを含め、3カ国には切っても切れぬ近隣ならではの関係がある。地道に協力を積み上げていきたい。

読売新聞 2016年08月25日

日中韓外相会談 対「北」圧力で協調を追求せよ

東アジアの平和と繁栄には、日中韓3か国が対話を重ね、協調を追求することが欠かせない。

岸田外相と中国の王毅外相、韓国の尹炳世外相が東京で会談した。北朝鮮の核・ミサイル開発を認めず、自制を求めることで一致した。

北朝鮮は会談当日朝、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)1発を発射した。約500キロ飛行し、日本の防空識別圏内の日本海に落下した。奇襲能力の高いSLBMの技術向上は周辺国の脅威だ。

岸田氏は会談で、北朝鮮を厳しく批判し、日中韓の連携強化を呼び掛けた。尹氏も、「団結した対応」の重要性を指摘した。

岸田氏が王氏に対して、中国が「責任ある国連安全保障理事会常任理事国」の役割をきちんと果たすよう求めたのは当然である。

7月以降、北朝鮮の再三の弾道ミサイル発射に対し、安保理は非難声明を検討したが、中国の反対で見送られ続けている。王氏は、「あらゆる安保理決議に違反する措置に反対する」と明言した以上、言行を一致させるべきだ。

3外相は、日中韓の自由貿易協定(FTA)交渉の加速や、環境・防災協力、青少年交流の促進などを確認した。3か国が協調することで得られる利益は大きい。

年内の首脳会談の日本開催に向けて、各国は努力してほしい。

岸田氏は王氏との個別会談で、多数の中国公船が尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返している問題を提起し、「事態の完全なる沈静化」と再発防止を要求した。

王氏は、「(日本側が)問題をあおり立てている。現在はほぼ平常に戻った」などと強弁した。

中国の行動には、南シナ海問題を巡る仲裁裁判所の判決に従うよう求める日本を牽制けんせいする狙いもあるとされる。だが、力による現状変更の試みは、国際社会の「中国脅威論」に拍車をかけるだけで、むしろ逆効果だろう。

中国は、無益な挑発行為を自粛することが求められる。

岸田氏は尹氏とも会談し、韓国政府が設立した元慰安婦の支援財団に10億円を日本が拠出するとの決定を伝えた。

日本が昨年末の日韓合意を誠実に履行する姿勢を強調したのは妥当である。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」に向けて、韓国側の前向きな対応を引き出すことにつながろう。

ソウルの日本大使館前に設置された少女像の撤去は、関係団体の反発で難航している。韓国内の調整を見守りたい。

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