世界経済の変調が重しとなり、景気の足踏みが続く。企業が「攻めの経営」に転じられるよう、政府は国内外で新たな市場を創り出す取り組みを急がねばなるまい。
内閣府が発表した今年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・048%増だった。2期連続プラス成長とはいえ、ほぼ横ばいの状態だ。
主因は、企業活動の柱の輸出と設備投資が減少したことだ。
輸出は1・5%減で、2期ぶりのマイナスだった。GDPへの寄与度は、内需のプラス0・3%が、外需のマイナス0・3%で相殺された。民間設備投資は2期連続マイナスの0・4%減となった。
円高の進行と、中国など新興国経済の減速が響いた。英国の欧州連合(EU)離脱決定によるヨーロッパ経済の不透明化など、世界経済は今後も逆風が続くとの見方が少なくない。
企業が海外戦略に明るい展望を持てるようにする必要がある。政府は、環太平洋経済連携協定(TPP)の国会承認や、日EU経済連携協定(EPA)の大筋合意を着実に進めねばならない。
日本企業の内部留保は300兆円を超える。日銀のマイナス金利も投資を促す。それでも守勢を崩さない企業心理を好転させるためには、国内市場の成長に対する期待を強めることも不可欠だ。
最も重要なのは、規制改革により新産業の育成を後押しすることである。中でも、あらゆるモノがインターネットでつながるIoTや、車の自動運転技術などに用いる人工知能(AI)の開発・普及は大きな可能性を秘める。
今回、公共投資は2・3%増と急伸した。民間の需要不足を補うため、予算の執行を前倒ししたことによる。秋には事業規模28兆円の大型経済対策も控える。
予算消化ありきの無駄な事業を排除しつつ、公共投資を一過性の景気刺激に終わらせない工夫が大切だ。経済対策に盛り込まれた海外客船向けの港湾整備では、外国語の観光案内などソフト面が伴わなければ効果は上がるまい。
GDPの6割を占める個人消費は0・2%増と堅調だが、景気を牽引するには力不足だ。消費喚起がデフレ脱却のカギを握る。非正規雇用者の待遇改善など、「働き方改革」は待ったなしだ。
年金など社会保障制度の将来不安も取り除かねばならない。政府は、消費増税延期の下で社会保障・税一体改革をどう進めるのか、明確に示すことが求められる。
この記事へのコメントはありません。