GDP横ばい 将来見すえた判断こそ

朝日新聞 2016年08月16日

GDP横ばい 将来見すえた判断こそ

内閣府が発表した4~6月期の実質経済成長率は0・2%(前期比年率換算)で、2四半期続けてプラス成長だった。

4月の熊本地震の影響は、日本経済全体で見れば限られた。英国の欧州連合離脱が決まったのは6月下旬だが、その後の各種指標を見ても世界経済に大きな悪影響は出ていない。新興国経済も小康を保っている。「景気はこのところ弱さも見られるが、緩やかな回復基調が続いている」(7月の月例経済報告)との判断は妥当だろう。

ただ、4~6月の国内総生産(GDP)の内容も見ればせいぜい「横ばい」だ。超低金利を支えに住宅投資が急増し、予算の前倒し執行などで公共事業も増えたが、GDPの6割近くを占める個人消費が0・6%増、1割を超える企業の設備投資は1・5%減と低調だった。

過去最高水準が続いてきた企業収益は、ここ数カ月の円高基調を受けて減益に転じた。とはいえ水準はまだ高く、利益の蓄積もたっぷりある。

それを従業員の給与や賞与に回し、消費を活発化し自社の売り上げ増もにらむ。設備や研究開発への投資に充ててイノベーション(技術革新)を起こし、市場を切り開く。そうした企業の取り組みを政府が政策で後押しする――。これらが引き続き大きな課題となる。

まずは企業の経営姿勢だ。

みずほ総合研究所のリポートによると、金融を除く東証1部上場企業を対象に12年度以降のカネの使い道を調べたところ、自社株買いや配当という株主への還元策が大きく増え、株式取得による合併・買収(M&A)も活発だった。その一方で、人件費・福利厚生費や設備投資費の増加はゆるやかだった。

株主への向き合い方は日本企業の課題の一つだが、本業を長期的に強化していくには従業員や設備・研究開発への投資が欠かせない。利益の使い道と株価の関係を見ると、人件費に重点を置いた企業の株価上昇が最も目立ったという。

政府は秋の臨時国会で経済対策の柱となる補正予算案の成立を急ぐが、公共事業を積み増すだけではGDPの一時的なかさ上げにしかならない。

日本経済に必要なのは、企業の賃上げや投資増が自律的に持続する仕組みだ。例えば法人税改革では、税率引き下げを最優先してきた姿勢を改め、賃上げや投資を促す減税をいま一度じっくり検討してはどうか。

経済活性化の主役となるべき企業も、支える政府も、将来を見すえた判断こそが大切だ。

読売新聞 2016年08月17日

GDP足踏み 企業の積極投資を促したい

世界経済の変調が重しとなり、景気の足踏みが続く。企業が「攻めの経営」に転じられるよう、政府は国内外で新たな市場を創り出す取り組みを急がねばなるまい。

内閣府が発表した今年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・048%増だった。2期連続プラス成長とはいえ、ほぼ横ばいの状態だ。

主因は、企業活動の柱の輸出と設備投資が減少したことだ。

輸出は1・5%減で、2期ぶりのマイナスだった。GDPへの寄与度は、内需のプラス0・3%が、外需のマイナス0・3%で相殺された。民間設備投資は2期連続マイナスの0・4%減となった。

円高の進行と、中国など新興国経済の減速が響いた。英国の欧州連合(EU)離脱決定によるヨーロッパ経済の不透明化など、世界経済は今後も逆風が続くとの見方が少なくない。

企業が海外戦略に明るい展望を持てるようにする必要がある。政府は、環太平洋経済連携協定(TPP)の国会承認や、日EU経済連携協定(EPA)の大筋合意を着実に進めねばならない。

日本企業の内部留保は300兆円を超える。日銀のマイナス金利も投資を促す。それでも守勢を崩さない企業心理を好転させるためには、国内市場の成長に対する期待を強めることも不可欠だ。

最も重要なのは、規制改革により新産業の育成を後押しすることである。中でも、あらゆるモノがインターネットでつながるIoTや、車の自動運転技術などに用いる人工知能(AI)の開発・普及は大きな可能性を秘める。

今回、公共投資は2・3%増と急伸した。民間の需要不足を補うため、予算の執行を前倒ししたことによる。秋には事業規模28兆円の大型経済対策も控える。

予算消化ありきの無駄な事業を排除しつつ、公共投資を一過性の景気刺激に終わらせない工夫が大切だ。経済対策に盛り込まれた海外客船向けの港湾整備では、外国語の観光案内などソフト面が伴わなければ効果は上がるまい。

GDPの6割を占める個人消費は0・2%増と堅調だが、景気を牽引けんいんするには力不足だ。消費喚起がデフレ脱却のカギを握る。非正規雇用者の待遇改善など、「働き方改革」は待ったなしだ。

年金など社会保障制度の将来不安も取り除かねばならない。政府は、消費増税延期の下で社会保障・税一体改革をどう進めるのか、明確に示すことが求められる。

産経新聞 2016年08月17日

GDP横ばい 民間の成長投資で打開を

円高や海外経済の変調により景気がもたついている。4~6月期の実質国内総生産(GDP)がほぼ横ばいの年率0・2%増となり、2%成長の前期と比べて大幅に伸びが縮小したためだ。

かろうじてプラス成長だったのは公共事業や金融緩和など政策による下支えがあったためである。民間需要が主導する持続的な成長とはほど遠いといえよう。

企業や家計の不安心理が拡大していることが気がかりである。これを払拭できなければ、景気の停滞感はさらに長引きかねない。

政府は大型経済対策を講じたが政策頼みには限界がある。肝心なのは、将来を見据えた民間企業の取り組みだ。稼いだ収益を設備投資や賃上げへと確実につなげる前向きな経営が求められる。

4~6月期に顕著だったのは企業部門の弱さだ。設備投資は0・4%減に落ち込み、輸出も1・5%減だった。企業に勢いがないと家計にも影響する。実質雇用者報酬はプラスだが、消費を押し上げるほどの力強さはみられない。

円高や新興国経済の減速に熊本地震も重なった。今後は英国の欧州連合(EU)離脱問題も大きな懸念材料となる。こうした外的要因が企業経営を慎重姿勢に転じさせているのだろう。だが、警戒のあまり守りを固めすぎると、デフレ脱却はますます遠のこう。

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