北朝鮮の軍事的脅威が増大する中、地域の安定を維持するには、日韓関係を着実に改善することが肝要である。韓国の朴槿恵大統領に一層の努力を求めたい。
朴氏は、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」式典で、「歴史を直視する中で、未来志向の関係を新たに作っていくべきだ」と演説し、両国関係発展の重要性を訴えた。
慰安婦問題に一切言及せず、歴史認識で日本側に注文をつけることもなかった。朴氏が、歴史問題を過剰に重視する姿勢を改めたことは、関係改善に寄与しよう。
朴氏は就任以降、光復節の演説などで、日本の政治家の歴史認識を重ねて批判し、慰安婦問題で日本に譲歩を要求してきた。昨年末の慰安婦問題を巡る日韓合意が転換点になったのだろう。
合意に基づき、韓国は元慰安婦支援の財団を設立した。日本は10億円拠出の国内手続きを速やかに進める方針だ。朴政権は、財団が円滑に活動できるように全力を尽くさねばならない。
注目すべきは、朴氏が日韓関係発展の背景として、北朝鮮の核開発などによる北東アジアの安全保障情勢の変動を挙げたことだ。
朴氏は、最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」の在韓米軍への配備について、「政府は国民を守るため、必要なすべての措置をとる」と強調した。
配備に強く反対する中国が韓国に圧力をかける中、揺るがぬ方針を示したことは評価できる。
朴氏は昨年9月、中国の「抗日戦争勝利」記念軍事パレードに出席するなど対中傾斜を鮮明にしていた。中国がTHAAD配備妨害に奔走し、対北朝鮮包囲網を綻ばせるのを見て、中国の独善ぶりを改めて認識したのではないか。
朴氏には、安全保障分野での日米韓の連携強化が求められる。そのためには、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結を推進することが欠かせない。
遺憾なのは、韓国の与野党の国会議員10人が光復節に合わせて、韓国が不法占拠する竹島に上陸したことだ。日本政府の中止要請を無視した行動で、菅官房長官が「到底受け入れられない」と強く抗議したのは当然である。
先月には、野党前代表も竹島に上陸した。来年12月の大統領選に向けた動きが活発化している。党利党略から国民の「反日」意識をいたずらに煽り、日韓関係を損なう行為は慎まねばなるまい。
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