北朝鮮の軍事挑発を抑えるには、国際社会が結束して圧力を強めることが欠かせない。中国は独善的な思惑で包囲網に穴を開けてはなるまい。
北朝鮮が今月初めに「ノドン」とみられる弾道ミサイルを日本海に向けて発射したことに関し、国連安全保障理事会は非難声明を出すことを断念した。
日米が主導した声明案に対し、中国が最新鋭ミサイル防衛システム「最終段階高高度地域防衛(THAAD)」の在韓米軍への配備をけん制する文言挿入を要求したため、協議が不調に終わった。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は、安保理の制裁決議にも違反する。特に今回は、初めて日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下させた。極めて危険な挑発である。
安保理が機能不全に陥ったことは深刻だ。北朝鮮への誤ったメッセージとなれば、更なる挑発を招きかねない。日本にとって厳しい事態だと言えよう。
問題なのは、北朝鮮の挑発抑止より、THAAD配備反対を優先させる中国の姿勢である。米韓が7月に配備を決めてから、安保理は相次ぐ北朝鮮の弾道ミサイル発射に非難声明を出せていない。
中国は配備が自国を含む地域の安全保障上の利益を損なうと主張する。THAADを構成するレーダーで中国軍の動向まで監視されるのを恐れているのだろう。配備にはロシアも反対している。
だが、北朝鮮の体制不安定化につながる制裁に中国が及び腰だったことが、核・ミサイル開発を許してきた主因ではないのか。
THAAD配備は、増大する北朝鮮の脅威への対応が目的だ。地域の緊張を高めるという中国の反発は筋違いにほかならない。
経済面で北朝鮮の生命線を握る中国が最近、制裁を一段と骨抜きにしていることも懸念材料だ。
核実験などを受けた3月の制裁決議後、減少していた中朝の貿易額が6月には増加に転じた。経済交流も加速しているとされる。
中国は、北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させる制裁決議の完全履行が安保理常任理事国の責務であることを忘れてはならない。
習近平政権は、THAAD配備を認めた韓国への対抗措置も打ち出し始めている。当局は韓国人の商用ビザ取得条件を厳格化した。北京で開催予定だった韓流ドラマファンの集会も中止となった。
中国は朴槿恵政権を揺さぶり、日米韓を離間させる狙いだろう。3か国の緊密な連携が地域の安定にとって肝要である。
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