中国に国際ルールを順守させるため、日米両国が東南アジア各国との連携を強化し、戦略的に取り組む必要がある。
岸田外相がフィリピン南部ダバオを訪れ、ドゥテルテ大統領と会談した。南シナ海の領有権問題について、国際法に基づく平和的な紛争解決に向けて、両国が協力することで一致した。
ドゥテルテ氏は、南シナ海での中国の主権主張を否定した仲裁裁判所の判決に関して「強く確認し、尊重したい」と強調した。日本との安全保障協力についても「推進していきたい」と明言した。
ダバオ市長を長年務め、6月末に大統領に就任したばかりのドゥテルテ氏は外交経験が乏しい。
南シナ海問題では、ラモス元大統領を中国との協議の特使に任命したが、経済支援をちらつかせる中国と中途半端な妥協を図るのではないか、との懸念がある。
7月下旬には、ケリー米国務長官がドゥテルテ氏と会談し、南シナ海問題での協調を確認した。日本も米国と連動して、早期に会談の機会を設け、対中政策をすり合わせたことは評価できる。
ドゥテルテ氏には、日米との会談内容を十分に踏まえて、対中外交に取り組むことを求めたい。
中国は最近、東シナ海の尖閣諸島周辺に多数の公船を派遣して、領海侵入などを繰り返してきた。南シナ海では、岩礁を埋め立てて軍事拠点化を進め、力による現状変更を試みている。
フィリピンのヤサイ外相が岸田氏との会談で「日本とフィリピンは同じ経験を分かち合っている」と指摘したのは、その通りだ。
中国の独善的な海洋進出に歯止めをかけるには、日米、フィリピンなど関係国が重層的な協力関係を構築し、様々なルートから中国に仲裁裁判所の判決の尊重を粘り強く促すことが欠かせない。
岸田氏は外相会談で、既に合意した巡視艇10隻の供与の月内開始や、海上自衛隊の練習機の有償貸与に加え、より大型の巡視船の供与を検討する考えを伝えた。
中国が南シナ海で一方的な領土・権益の拡大を図ってきたのは、周辺国の海上保安機関の能力が極めて貧弱なことが一因だ。
フィリピンの警戒・監視能力を向上させるため、日本は支援を強めることが重要である。
日本は、フィリピンへの最大の政府開発援助(ODA)供与国だ。社会資本整備のほか、ドゥテルテ氏の地元・ミンダナオ島の和平にも協力してきた。長年の蓄積をアジア全体の安定に生かしたい。
この記事へのコメントはありません。