きょう11日は、今年から新たな国民の祝日となった「山の日」だ。
日本の山々の豊かさ、恵みと厳しさへの理解を深め、自然との上手な付き合い方を学ぶ日にしたい。
「海の日があるのに、アンバランス」という山岳団体などの意見を受けて、2014年に制定された。改正祝日法は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」と、その意義を強調している。
山頂でご来光を望むツアーや記念フォーラムといったイベントが各地で企画されている。
夏休み中でもあるため、親子で一緒にイベントに参加するなど、山に接する機会にしてほしい。
登山人口は近年、700万~800万人台で推移している。今後は、登山者の裾野のさらなる広がりが期待されよう。
気がかりなのは、遭難事故が多発していることである。
警察庁によると、15年中に起きた山岳遭難は2508件、3043人で、うち死者・行方不明者は335人に上る。いずれも統計史上最多だった。遭難原因は「道に迷った」が全体の4割を占め、滑落、転倒が続く。
体力や経験の不足を自覚せずに難しい山に挑み、事故に遭うケースが少なくない。無理のない登山計画を立てるべきだろう。
長野や山梨など6県は、計546の登山ルートの難易度をランク付けした「山のグレーディング」を公表している。こうしたデータを参考に、自らの体力や技術に見合った山を選びたい。
インターネットを通じて仲間を募り、初対面同士で「にわかパーティー」を組む。そんな新しい登山スタイルも登場している。
だが、手軽さには危険がつきまとう。互いの技量を知らぬまま事故が起きた際、的確に対応できるのか。安全面の吟味が重要だ。
14年9月の御嶽山噴火で、多数の登山客が死傷したことも忘れてはなるまい。万一に備え、十分な装備を整え、避難場所の下調べをしておくことが欠かせない。
氏名や連絡先、行程などを記した登山届を事前に管轄の警察署などに提出しておけば、遭難時の早期救助に役立つ。条例で提出を義務づけた自治体もある。御嶽山噴火の教訓を生かしたい。
山が育む森林資源や地下水、生態系の保護にも目を向けることが大切だ。世界文化遺産の富士山でさえ、ゴミの投棄が問題になっている。マナー啓発や清掃活動など環境保全の取り組みを官民一体で進める必要がある。
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