力による現状変更の狙いが明白であり、看過できない。中国には、強く自制を求めたい。
尖閣諸島周辺で、中国が多数の海警局所属の公船による示威活動を展開し、一方的にエスカレートさせている。
5日以降、日本の領海に10回以上も侵入した。公船は徐々に増加し、8日午前には、過去最多の14隻が接続水域を同時航行した。
尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土であり、日本が一貫して実効支配している。領海侵入は明確な主権の侵害だ。
杉山晋輔外務次官が程永華駐日中国大使に対し、「現場の緊張を著しく高める」などと厳重な抗議を重ねたのは当然である。
中国には、南シナ海での主権の主張を否定した仲裁裁判所の判決受け入れを日本が求めていることへの反発もあろう。だが、中国の論理と言動には正当性がない。
日本政府には、冷静かつ毅然とした対処が求められる。
問題なのは、公船が数百隻もの中国漁船と連携しているとみられることだ。自国の漁船の「護衛」や「監督・指導」の名目で、公船を派遣し、領海侵入や強引な支配拡大などを既成事実化するのは、中国の常套手段である。
中国には、漁民を訓練して組織化した「海上民兵」が存在する。軍の指示で、係争海域で「先兵役」を担うこともあるという。十分に警戒せねばならない。
海上保安庁は今春までに、巡視船12隻が専従で尖閣諸島周辺海域を警備する体制を整えた。今後も、新規巡視船の建造や要員の増強などを進めることが大切だ。
中国が東シナ海の日中中間線付近にあるガス田の海上施設に、レーダーと監視カメラを設置したことも見過ごせない。
周辺の水上捜索が目的で、航空機などの確認能力はないとされるが、軍事拠点化への一歩の可能性がある。いずれ能力が高まれば、自衛隊の活動を監視され、日本の安全保障にも影響しかねない。今後の動きを注視すべきだ。
不測の事態を回避するには、日中両政府が様々なレベルで対話を重ねることが大切だ。自衛隊と中国軍の信頼醸成も欠かせない。
中国は、ガス田の日中共同開発の交渉を拒み、艦船などの偶発的衝突を防ぐ「海上連絡メカニズム」の協議も進んでいない。
7月末のラオスでの日中外相会談では、王毅外相が一連の協議の必要性は認めたという。周辺国との緊張の緩和は、中国自身の利益でもある。実行を求めたい。
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