甲子園女子 「進取」の歴史を思い出せ

朝日新聞 2016年08月07日

甲子園開幕 感動呼ぶ熱戦を期待

第98回全国高校野球選手権大会がきょう開幕する。今年の地方大会の参加校数は3874校。各地の大会を勝ち抜いた49代表が、頂点をめざして熱戦を繰り広げる。

大会の総入場者は昨年まで8年連続で80万人を超えた。高校野球が多くの人の心を引きつけるのは、白球を追う球児のひたむきな姿やチームプレー、番狂わせなど、様々なドラマが胸を打つからだろう。各校は郷土の期待にこたえ、はつらつとしたプレーを見せてほしい。

第1回大会が開かれた1915年から今年で101年を数える。過去には球音が途絶えた歴史もあった。

41~45年には戦争の影響で中断を余儀なくされた。大会の開催そのものが平和な世の証しでもあることを、改めて心に刻みたい。

今年の開会式では、熊本地震で被災した東稜高校(熊本市)の主将が先導役を、始球式では阿蘇中央高校(熊本県阿蘇市)の主将が投手を務める。

思い出すのは東日本大震災が起きた11年、サッカー女子日本代表がW杯で優勝し、被災地に希望を与えたことだ。その姿は復興への励みにもなった。

震度7に2度襲われた熊本県益城町。そこにグラウンドをもつ鎮西(熊本市)の野球部員は休校中の11日間、避難所で支援品の仕分けなどを手伝った。

「野球をしている場合じゃない」とみんなが感じていた。ところが、過去には甲子園出場もしている同校の野球部と知った被災者は、「野球がんばってね」と言ってくれた。

「益城町を甲子園に」を合言葉に臨んだ熊本大会。2回戦でコールド負けしたが、3年の江入圭祐君は「町の人を元気づけたくて全力を尽くした。夢は後輩に託したい」と振り返った。

目標に向かって負けずに前進する姿は、逆境にある人に活力を与える。高校野球のもつそんな力を改めて思う。

今年の初出場校は昨年より2校多い9校。実力校を退けて出場する嘉手納(沖縄)や、創部3年目のクラーク国際(北北海道)、創部69年の八王子(西東京)など、話題は豊富だ。

一方、10年連続と戦後最長記録を更新した聖光学院(福島)や、33年ぶりの市尼崎(兵庫)、選抜優勝の智弁学園(奈良)などの試合も楽しみだ。

甲子園は暑さとの闘いでもある。地方大会では熱中症で選手が倒れた試合もあった。常にベストコンディションで、そしてフェアプレーで、新たなドラマの誕生を期待している。

産経新聞 2016年08月05日

甲子園女子 「進取」の歴史を思い出せ

夏の全国高校野球選手権大会が7日、甲子園球場で開幕する。

大会前の甲子園練習では、大分高の女子マネジャーがユニホーム姿で練習を手伝い、大会本部に制止された。

日本高校野球連盟には「時代錯誤」などの批判の声が寄せられているという。だが高野連には、門戸開放に向けた進取の歴史もある。ヘルメット着用などの安全対策を尽くし、女子の参加へも道を開いてみてはどうか。

出場校に配布された「手引」には試合の練習補助員は「男子部員に限る」とあり、高野連はこれに準じた判断であると説明した。手引に甲子園練習についての明記はなく、理由は「危険防止」のためとされた。

だがこのマネジャーは普段の練習からノッカーにボールを手渡すなどの手伝いを行っていた。危険性を理由とするなら、甲子園練習のみ禁じる説明がつかない。再考の余地があるのではないか。

昭和49年、福井ろう学校軟式野球部は県大会で優勝したが特殊学校のため全国大会に進めず、規約改正で翌年からの参加が認められた。だが当時の牧野直隆・高野連副会長は「来年いいものだったら今年からやろう。今いる子供たちと喜びをともにしよう」と述べ、特例として全国大会に出場した。「安全性への懸念」を理由とする反対を押し切る決断だった。

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