第98回全国高校野球選手権大会がきょう開幕する。今年の地方大会の参加校数は3874校。各地の大会を勝ち抜いた49代表が、頂点をめざして熱戦を繰り広げる。
大会の総入場者は昨年まで8年連続で80万人を超えた。高校野球が多くの人の心を引きつけるのは、白球を追う球児のひたむきな姿やチームプレー、番狂わせなど、様々なドラマが胸を打つからだろう。各校は郷土の期待にこたえ、はつらつとしたプレーを見せてほしい。
第1回大会が開かれた1915年から今年で101年を数える。過去には球音が途絶えた歴史もあった。
41~45年には戦争の影響で中断を余儀なくされた。大会の開催そのものが平和な世の証しでもあることを、改めて心に刻みたい。
今年の開会式では、熊本地震で被災した東稜高校(熊本市)の主将が先導役を、始球式では阿蘇中央高校(熊本県阿蘇市)の主将が投手を務める。
思い出すのは東日本大震災が起きた11年、サッカー女子日本代表がW杯で優勝し、被災地に希望を与えたことだ。その姿は復興への励みにもなった。
震度7に2度襲われた熊本県益城町。そこにグラウンドをもつ鎮西(熊本市)の野球部員は休校中の11日間、避難所で支援品の仕分けなどを手伝った。
「野球をしている場合じゃない」とみんなが感じていた。ところが、過去には甲子園出場もしている同校の野球部と知った被災者は、「野球がんばってね」と言ってくれた。
「益城町を甲子園に」を合言葉に臨んだ熊本大会。2回戦でコールド負けしたが、3年の江入圭祐君は「町の人を元気づけたくて全力を尽くした。夢は後輩に託したい」と振り返った。
目標に向かって負けずに前進する姿は、逆境にある人に活力を与える。高校野球のもつそんな力を改めて思う。
今年の初出場校は昨年より2校多い9校。実力校を退けて出場する嘉手納(沖縄)や、創部3年目のクラーク国際(北北海道)、創部69年の八王子(西東京)など、話題は豊富だ。
一方、10年連続と戦後最長記録を更新した聖光学院(福島)や、33年ぶりの市尼崎(兵庫)、選抜優勝の智弁学園(奈良)などの試合も楽しみだ。
甲子園は暑さとの闘いでもある。地方大会では熱中症で選手が倒れた試合もあった。常にベストコンディションで、そしてフェアプレーで、新たなドラマの誕生を期待している。
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