安倍再改造内閣 経済再生を効果的に加速せよ

朝日新聞 2016年08月04日

内閣改造 「安定政権」で何をする

安倍首相がきのう、第3次再改造内閣と新たな自民党執行部を発足させた。

麻生副総理兼財務相や菅官房長官、岸田外相を留任させ、政権の骨格は維持した。入院中の谷垣前幹事長に代わる幹事長には、二階前総務会長を充てた。二階氏は18年9月までの安倍首相の党総裁任期の延長に前向きな発言をするなど、一貫して首相を支持してきた。

防衛相には歴史認識などが近い稲田前政調会長を起用。自らの支持基盤への配慮もあっただろうが、韓国や中国のメディアが警戒感を示している。

7月の参院選で自民、公明の与党が大勝したのを受けて、世論受けを狙う人事より、政権の安定を重視した守りの布陣と言えるだろう。

首相がいま、問われているのは、参院選の大勝をどう生かすかだ。衆院を解散しなければ、あと2年余、衆参両院選挙のない期間が生まれる。この圧倒的な「数」と「時間」という政治的資産を何に使うのか。

安倍内閣はアベノミクスで得た世論の支持を追い風に、特定秘密保護法や安全保障法制に力を振り向けてきた。

首相は、きのうの記者会見で在任中の憲法改正に改めて意欲を示した。だが、日本政治にとっての最優先課題は他にある。

世界でもまれな少子高齢化にいかに立ち向かい、子や孫の世代に持続可能な社会をどう引き継いでいくか――。多くの国民はそれを望んでいるはずだ。

求められるのは、長期的な視点に立った政治の営みである。社会保障の立て直しにしても、財政再建にしても、国民にビジョンを示し、「痛み」を求め、理解を得る。そんな粘り強さが欠かせない。

エネルギーや働き方の改革を含む成長戦略も、成果を生むまでには相当の時間が要る。

政権はこれまで「デフレからの脱却」の掛け声のもと、金融・財政政策を「ふかす」ことに重きを置いてきた。

かつてないほどの安定政権を得たいま、逆風をも覚悟し、広く、長い視野で真に必要な政策に取り組めるか。

野党、とりわけ第1党の民進党に協力を求めることも必要だろう。4年前、民主党政権が主導し、自公両党と合意した「税と社会保障の一体改革」の枠組みは崩れている。首相の2度にわたる消費増税延期がその原因だが、首相は一体改革をどうしようとしているのか。

厳しい課題から逃げることなく、改革を前に進めなければ、安定政権に意味はない。

読売新聞 2016年08月04日

安倍再改造内閣 経済再生を効果的に加速せよ

◆安定布陣で危機対処を強めたい◆

政策の継続性と安定した政権運営を重視した、手堅い陣容と言える。デフレ脱却をはじめ、様々な重要課題に果敢に取り組み、具体的な成果を上げねばなるまい。

第3次安倍再改造内閣が発足した。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官ら8閣僚が留任し、内閣の骨格は維持された。

自民党三役は重厚な布陣だ。幹事長に二階俊博総務会長、その後任に細田博之幹事長代行、政調会長に茂木敏充選対委員長が就任した。いずれも三役経験者だ。

◆官邸と党は緊密連携を

二階氏は、与野党にパイプを持ち、調整力に優れた実力者で、次期衆院選も見据えた起用である。「黒子役」に徹した谷垣氏に比べて、情報発信にも積極的だ。

安倍政権では3年半余、首相官邸が政策決定を主導してきた。この「政高党低」の構図の変化を危惧する向きもある。首相が意欲を見せる憲法改正について、二階氏は慎重な姿勢を崩さない。

官邸と党執行部が緊密に連携し、認識を共有することが肝要である。

安倍首相は記者会見で、「政策を総動員し、デフレからの脱出速度を最大限まで引き上げる」と強調した。

新内閣が最優先すべきは、無論、日本経済の再生である。

政府は事業規模28・1兆円という大型の経済対策を決定したが、効果が一過性の旧来型公共事業のバラマキは許されない。

今年度第2次補正予算の編成では、民間の投資や消費を喚起する費用対効果を吟味し、事業を選定すべきだ。麻生財務相や石原伸晃経済再生相、世耕弘成経済産業相は、肝に銘じてもらいたい。

留任した加藤勝信1億総活躍相は、長時間労働の是正や同一労働同一賃金などの働き方改革担当を兼務する。改革は成長戦略強化のカギを握る。生産性向上や内需底上げにつなげ、少子高齢化や人口減の影響を克服したい。

◆警戒要する北ミサイル

加藤氏は、塩崎恭久厚生労働相、山本幸三地方創生相らと連携し、知恵を絞ることが大切だ。

最近の内閣は、新たな政策の担当相や特命相が乱立気味である。役割分担が複雑・不明確化し、担当の官僚組織も細分化されて非効率になる弊害が生じている。重要性が高くない担当相は廃止し、きちんと整理してはどうか。

五輪相には、丸川珠代環境相が横滑りした。膨張する東京五輪の費用の抑制が当面の課題だ。

与党推薦候補を破って初当選した小池百合子東京都知事は、五輪関連予算などの妥当性を調査する組織の設置を発表した。丸川氏には、小池氏と大会組織委員会を調整する役割が求められる。

内閣改造の当日、北朝鮮がノドンとみられる弾道ミサイルを発射し、秋田沖の排他的経済水域(EEZ)に落下した。かつてない事態で、日本にとって脅威だ。

北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国の独善的な海洋進出などに対し、自衛隊は、米軍と連携して警戒を強化し、的確に対処する体制を構築せねばなるまい。

自民党の稲田朋美政調会長を防衛相に起用したのは、今回の目玉人事である。ただ、衆院当選4回での再入閣は異例で、防衛相としての力量は未知数だ。

3月施行の安全保障関連法は運用段階に入る。南スーダンで国連平和維持活動(PKO)に従事する自衛隊部隊への「駆けつけ警護」任務の付与も課題だ。

将来のリーダー候補の一人とされる稲田氏の真価が問われる。

外交では、中国、韓国との関係改善が焦点となる。今月下旬の日中韓外相会談をその一歩とし、年内の日中韓首脳会談の日本開催につなげたい。岸田文雄外相の手腕や、在任3年半余に培った中韓両国との人脈が試されよう。

◆挙党態勢をどう図るか

安倍首相は、9月の非公式訪露を経て、年内のプーチン大統領来日の実現を目指す。北方領土問題へのロシア側の態度は固い。交渉を戦略的に進める必要がある。

石破茂・前地方創生相は、「自民党に多様な意見があることは大事」と語り、閣外に去った。

再来年9月の安倍首相の総裁任期切れをにらみ、政権構想作りなどを本格化させるだろう。「ポスト安倍」を巡るライバルの岸田外相とは対照的な道を選択した。

総裁任期の延長論が出始めた安倍首相にとって、波乱要因となる可能性もある。首相は、石破派の山本有二・元金融相を農相に起用し、党内融和に配慮した。今後も適切な党運営を心がけることが求められよう。

産経新聞 2016年08月07日

原発と再改造内閣 電力供給の基盤を整えよ

安倍晋三改造内閣が目指す日本経済の再生にとって、低廉で安定的な電力供給は不可欠だ。そのためには、安全性を確認した原発の早期再稼働が喫緊の課題である。

エネルギー政策を所管する世耕弘成経済産業相には、何よりも優先的に取り組んでほしい。

原子力規制委員会は、稼働開始から40年を経る関西電力美浜原発3号機(福井県)について、60年までの運転延長を事実上認めた。

政府は将来の原発比率を20%以上とする目標を置いており、達成には今後も高経年原発の活用を進めることが肝要だ。

暑さが本格化し、冷房向けの電力需要は急増している。台風などで発電所が故障すれば、大規模停電などの事態にも陥りかねない。原発を含め余裕ある電力供給体制の構築は、国民の暮らしを守ることにつながる。

原発の運転期間は原則40年だが、特別な安全対策を講じて認可が得られれば、最長60年までの運転が可能になる。6月の関電高浜原発1、2号機(福井県)に続き、美浜3号機でも運転延長案がほぼ了承された。原発の活用にとって大きな前進といえる。

政府は原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、2030年度に原発比率20~22%とする電源構成を閣議決定している。安定的な電源確保のため、世耕氏はこの目標を達成する責務がある。

とくに今後は、1980年以降に建設された原発が相次いで稼働から40年を迎える。これらの着実な運転延長に向け、規制委との連携を主導すべきである。

四国電力の伊方原発3号機(愛媛県)が12日に運転を再開予定だが、これを合わせても全国で稼働するのは3基にとどまる。温室効果ガス排出抑制を図るためにも過度な火力依存を脱し、原発や再生可能エネルギーを組み合わせた最適な活用を考えてほしい。

鹿児島県の三反園訓知事は、運転中の九州電力川内原発1、2号機を一時停止し、安全検査を行うよう求めている。知事に停止に関する法的権限はないが、月内にも九電側に申し入れるという。

世耕氏は「まずは知事としっかり話をしたい」と強調した。原発の運転には政府も責任を持つ姿勢を示したうえで、これまでの安全対策を説明し、自治体側の理解を深めてもらいたい。

産経新聞 2016年08月05日

拉致と再改造内閣 最優先で被害者救出迫れ

安倍晋三内閣の再改造で拉致問題担当相は加藤勝信氏が続投し、「1億総活躍」に加え「働き方改革」担当相を新たに兼務することになった。

安倍政権にとって拉致問題の優先順位は低いものだと、誤ったメッセージとならないか。

そう受け取られれば、北朝鮮は動かない。政府は拉致被害者全員の即時帰国を迫る強い姿勢を示すべきである。

拉致問題は膠着(こうちゃく)している。

北朝鮮は今年2月、拉致被害者の再調査を約束した「特別調査委員会」を解体すると一方的に表明した。

核実験と長距離弾道ミサイルの発射に対し、日本が独自制裁を強化したことへの対抗措置という。自らの犯罪行為を交渉材料に、うそや引き延ばしで経済支援を求めるのは常套(じょうとう)手段である。

政府は「対話と圧力」「行動対行動」の対北朝鮮外交の原則を堅持すべきだ。弱腰や安易な妥協をみせれば新たな要求を呼び、全面解決を遠のかせる。

拉致問題は安倍内閣の最重要課題であるはずだ。

とりわけ拉致担当相には、解決への断固たる決意をみせる象徴的な立場として対外発信力が問われる。被害者家族からの信任を得て不安を払拭する責務も重い。

産経新聞 2016年08月04日

再改造内閣 成長へ効果上げる采配を

参院選後の内閣改造で、安倍晋三首相は主要閣僚を留任させる一方、新人8人を登用した。

首相は会見で「未来への責任を果たしていくことが最大の使命だ」と語った。同時に「選挙で約束した政策をスピード感をもって実行する」とも述べた。

新体制の下、デフレからの脱却を急ぎ、民需主導の持続的な成長基盤を構築しなければならない。

首相に求められるのはこの布陣で真に成長を加速できるよう、采配をふるう強い統治力である。

政府内での重複を排し、重要課題に対して最大限の効果を上げられる取り組みに努めてほしい。

加藤勝信1億総活躍担当相は、同一労働同一賃金などを扱う新設の「働き方改革担当相」を兼務することになった。

子育て世代の消費拡大を図る上で、同一労働同一賃金を浸透させ、非正規社員の待遇改善を実現することは重要な課題だ。同じ人物が担うことは妥当だろう。

ただ、労働政策は本来、厚生労働省の所管だ。同じテーマで微妙に方向性が異なる対応となっては、かえって政策を進める妨げになりかねない。

塩崎恭久厚労相と緊密な意思疎通を図っていく必要がある。

石破茂氏に代わり山本幸三氏が務める地方創生担当相の仕事も、総務、国土交通両省との仕切りが難しい分野である。

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