防衛白書 脅威への備えを加速せよ

朝日新聞 2016年08月03日

防衛白書 意図を説明する責任

日本の防衛政策は何をめざし、どこに向かうのか、明確に発信すべきではなかったか。きのうの閣議で報告された16年版の防衛白書は、その意味で大きな課題を残している。

白書は約500ページで昨年より約70ページ増えた。中国による東シナ海や南シナ海での強圧的な海洋進出や、北朝鮮の核・ミサイルの開発など、日本を取り巻く安全保障環境のさまざまな変化を反映させたものだ。

こうした脅威に自衛隊が対応するのは当然だが、脅威の羅列に終始するだけでは、役割を十分果たせたとは言えない。年1回刊行される白書は、日本の防衛政策の方向性を内外に示す重要な機会でもあるからだ。

とりわけ今回は、昨秋の安全保障関連法の成立後、初めての白書である。世界有数の規模をもつ自衛隊への憲法の縛りを緩め、海外での武力行使に道を開いた以上、その意図は何か、これまでよりも丁寧に説明する責務があるはずだ。

日本の防衛政策の柱である専守防衛はどうなったのか。白書は「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使するなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢」という従来の記述を踏襲しただけだ。これでは法制による変化を反映したとは言えない。

たとえ安保法制で認められた集団的自衛権の目的が「日本の防衛」だとしても、発動されるきっかけは、日本以外の同盟国や第三国がかかわる事態だ。少なくとも専守防衛は変質したと言うべきであり、何も変わっていないかのような説明では、かえって疑念を招きかねない。

安保法制については章を新設し、多数の解説コラム欄を設けて説明を試みているが、抜け落ちている点も目立つ。

例えば、中国が海洋進出を続ける南シナ海。自衛隊はすでに他国軍との共同訓練や、一部の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国への装備品の供与など関与を強めているが、これから日本がこの地域でどんな環境づくりをめざすのか、白書から方向性を読み取ることは難しい。

日本政府の考え方を明示することで、中国など関係国による誤解や過剰反応を防ぐ。それで偶発的な軍事衝突のリスクも下げる。そうした相互作用による安保上の利益を考えるべきだ。

もとより自衛隊ができることには限りがある。安保環境が変化しているからこそ、防衛と外交の両輪の取り組みが必要だ。安保法制を強引に成立させた安倍政権は、重い説明責任を負っていることを自覚すべきだ。

読売新聞 2016年08月05日

防衛白書 北朝鮮の挑発に万全の備えを

北朝鮮が、軍事的挑発をエスカレートさせている。不測の事態を回避するためには、万全の備えが欠かせない。

2016年版防衛白書は、北朝鮮の動向について、日本や国際社会への「重大かつ差し迫った脅威」と位置付けた。1月の核実験、2月の長距離弾道ミサイル発射を踏まえ、昨年の「重大な不安定要因」から格上げした。

6月の中距離弾道ミサイル・ムスダンの発射は、推定射程が最大4000キロで、「一定の機能を示した」と分析した。「核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っている可能性」にも言及している。

核実験は4回、弾道ミサイル発射は金正恩体制下で30発以上を数える。その能力や精度は確実に向上していると考えるべきだ。

3日に発射されたノドンとみられる弾道ミサイルの弾頭は、日本の排他的経済水域(EEZ)に初めて落下した。航空機や船舶に被害が出てもおかしくなかった。極めて憂慮すべき事態である。

移動式発射台を使ったため、日本政府は事前に、発射の兆候をつかめなかったとされる。

政府は、北朝鮮のミサイルへの警戒を一段と強めねばなるまい。迎撃ミサイルSM3搭載型イージス艦を8隻体制に増やす計画などを進めることが重要だ。

白書は、中国の海洋での「高圧的とも言える対応」や、力による現状変更の既成事実化の動きに、「強い懸念」を示した。

尖閣諸島周辺では、海軍艦艇が接続水域に進入し、空軍機の南下活動も活発化している。

中国軍が挑発活動に出た際は、自衛隊が迅速かつ的確に警告できる態勢を維持する必要がある。

防衛省は、海上保安庁と連携し、警戒監視活動を強化すべきだ。新型哨戒機P1や哨戒ヘリSH60Kの導入を急がねばならない。

南西諸島の防衛も拡充したい。3月、与那国島に地上レーダーを持つ陸上自衛隊の監視部隊が配置された。さらに、宮古、石垣両島への警備・ミサイル部隊の配置を着実に進めることが大切だ。

3月施行の安全保障関連法について白書は、内容や目的、憲法との関係などを解説している。

集団的自衛権の行使容認に関して、存立危機事態に限定するなど、極めて厳格な要件を設けたと強調した。「わが国の意に反して他国の戦争に巻き込まれることは決してない」とも明記している。

政府には、あらゆる機会を通じて国民の理解を深める努力を続けることが求められよう。

産経新聞 2016年08月03日

防衛白書 脅威への備えを加速せよ

平成28年版防衛白書は、中国と北朝鮮の警戒すべき軍事的動向を詳しく記述し、国を防衛する重要性を訴えた。

安全保障は、現実の脅威を踏まえ態勢を速やかに固めていかなければ達成できない。軍事力による威嚇、勢力拡張をためらわない中朝両国こそ、その対象である。

安倍晋三政権は、安保関連法の制定により日米同盟の抑止力の強化を図った。加えて必要なのは、防衛力整備を加速することだ。

白書がアジア太平洋地域を「大規模な軍事力が集中する特異な地域」だと指摘するのであれは、そこで日本が生き残るのにふさわしい予算と政策が必要である。

「強く懸念」されたのは、中国の急速な軍事活動の拡大だ。南シナ海の人工島の軍事化について、中国軍の「作戦遂行能力が大幅に向上する可能性」があり、「地域の平和と安定に直結する国際社会全体の関心事項」だと強調した。東シナ海で尖閣諸島をねらっている点についても、中国海軍が「行動を一方的にエスカレート」させていると危機感を示した。

北朝鮮については「すでに核兵器の小型化・弾頭化の実現に至っている可能性も考えられる」とし、「国際社会全体の安全に対する重大かつ差し迫った脅威」だと指摘した。

おっぱい - 2016/10/25 09:09
ちんちんなめますか・・
この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2572/